夜を噛む



鎮火したあとの原っぱには
わたしの家がありました
一匹の、犬がいました
お気に入りの香水の壜と
母からもらった鳩時計と
それからたくさんの
キャラメルがありました

白い煙が浮かんで
星座がかすんで
でも踏んでいる焦げた土は
あたたかいです とても
風にのって
足元に落ちた銀杏の葉を
掴もうとする
指に切り傷を見つけました
こうして
知らないあいだに
傷んでいくのだろうね、
林檎みたいな
清潔な果実ではないけれど

無造作に散らばった
真っ黒の木屑を一つ、
犬歯で噛みました
咳きこみ
唇からぽろぽろと零れたのは
夜の欠片だったのでしょう





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はなのかんむり






















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