聴こえないふり
目をとじたら
よく聴こえる気がする
音ともつかない波
小学生の頃の帰り道を思いだすから
金木犀のかおりは 苦手
となりを歩いていた友達は
いつの間にか消えて
遠くの町で発見されたそうだ
『そうだ』というのは
あたしは未確認だから
よくわからない
ということだ
もういないんだって
ね
よくわからない
きょうは流星群がちかづいてるらしいよ
こいびとから電話がかかる
せいじゃくという海が電話線を流れて
あたしの部屋は凪いでいる
みれるといいね
みないの?
うーん 信号のほうがきれいじゃない
まあそうだよな
電話は切れる
ざりざりと網戸をあけて
砂鉄を敷き詰めたような空をみる
衛星がゆっくりと
山から山へ飛んでいくのがみえた
目の奥には記憶があるけど
あたしは何処にもいなかった
豆電球の灯りさえいらない
暗ければ暗いほど
鮮明に輪郭がみえるのだから
あらかじめ失っていた右耳に響くのは
多分 友達の声だったけど
海鳴りなのだと ずっと
聴こえないふりをした
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はなのかんむり
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