夢のあと




祖父のコスモス畑は
枯れてしまったのだった

秒針を拾う
どこから生まれたのだろう
ひからびた茎の傍らに
埋もれていた
群青の宇宙にかざしたら
ぎゅん と成長をはじめる

ハロウハロウ、梟の鳴く
山に潜ろう
髪の毛は遠い部分から濡れて凍みる感触
裸足で踏む土が波のように
さんざめき
リズムのなかに溺れる
ところどころに
落ちている月の光をたよりに
藻掻きながら
山に潜ろう

焚いた
水に
果実を
浸し
浮かべる
沸騰、
人差し指を
煮詰める
痛み

さえ

薄紫色に
染めて
咲くといい
目にもとまらぬ速度で、

マフラーを巻いて町を歩く
自由自在に伸縮するひとびとを横目に
町を歩く
足を無くしたひとびとも
転がっていく
生きものたちの瞳と
ショーウインドウに映る電飾と
星たち、が
別のものだなんて
知らなかった
空っ風が吹き抜ける通りに
ひとり/零れる

わたしはいっぽんの秒針だった
ということを忘れながら
時々、ふと
思い出しては
外灯の下でうずくまったり
するのかもしれない
するのかもしれない、

眼底の奥で
祖父のコスモス畑は
すっかり枯れてしまったのだった



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