紫の色を好んだ祖母の手に渡せなかった果実があって
無花果を食べたいと言う雪の日の病室の祖母 空を見ている
父の手が臓器と点を描いては震えて 癌と正しく書いた
病室のドアを引く 老いた手の影が床に落ちて寂しがってる
千切れるくらいに浮腫んだ両足をしもやけの手がこすって 滲む
だんだんと冷えて頑なになる腕 外は夕焼け/溶けている町
塗りかけの絵の菜の花がやっと咲く つむじ風に揺れている黄色
あったよ と腕に無花果を抱いて駆ける 一周忌まで二月(ふたつき)の朝
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はなのかんむり
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