無題



坂をくだっている
街路樹が等間隔に並ぶ通り
赤、赤、青、と続く屋根
るんる、るん
鎖に繋がれたブルドッグから
見事に吠えられ
木枯らしには髪をいくらか流されて
くだっている


電柱の影に子どもがいる
顔だけ出して
(その癖
 麦わら帽子に隠れて
 表情はほとんど見えない)
こちらを見ている
視線を感じながら
前を通り抜ける
ひゅう、と鳴る口笛
不意に振り向くと
スーパーの袋が飛んでいく空
正午を告げるサイレン
ここはどこ


降る、

降ってくる
のは、穴だった
右手の甲に落ちた一粒は
くっきりと
際限のない黒
黒に触れてみる、と
みるみる埋まる指
爪の隙間から
ひんやりとした感触
目には見えない場所で
指は降っていく、誰かの
鎖骨を撫でていく
ような感触



引き抜いたら指は
すっかり影になっていた
何だかかっこいい
日光に透かしてみたら
素晴らしい速度で、消えていった


るーんる、んる
坂がある
坂の真ん中で
くだり続けているわたしは
少女だった


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はなのかんむり






















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