やさしく眠る/急いで起きる




やあ、モーニング
ぼくは冬にねむるクマ
瞼をとじたときは
おぼえていないんだ
だから
ふたたび起きるなんて
思いもしなかった
おかあさんは
魚をとりに行ったきり
かえってこないよ
もう二年も前の夏のことだったか


さむい、と感じはじめると
焦げ茶の毛は
意志とはかんけいなく
もわもわと膨らみ
肉ははじけるくらい
内からはみ出していく
冬とはなんと
おそろしいものか
みずからの爪の鋭さには
おどろきもしないというのに。
葉っぱをあつめてタワーにする
頬をあてると
じんわりあったまる
わあーん、と泣いたつもりだったのに
こだました声は
獣の遠吠えにしか聞こえなかった


たどたどしく揺らぐひかりの筋
ゆるゆると大木を巻く蔓
夢の中で
どこまでもつづく森を
歩いていた
ひととき、というのは
そういうことだったのだろう
安心して
よだれを垂らしていた


つー、ぽたっ


耳にしずくが落ちてきた
なまぬるい。
やあ モーニング
ぼくは夜だ
やみくもに駆けていた道のない道を
思いだせない
まぼろしのような
でたらめの手品のような
いのちだった






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