ひとのきかん




わたし、重力だったらよかった。
そうしたら君や時計やビルをねじ曲げて、すてきなかたちにしてあげる。
だけどママは悪趣味だって、眉をひそめるかもしれないね。
だからわたし、重力にはならない。

わたし、ポテトチップスだったらよかった。
塩や青のり、たまにチーズなんかを着飾って、パーティーに招待されるの。
だけど誰かの手をべたべたにさせるなんて申し訳ないから、
わたし、ポテトチップスにはならないわ。

わたし、でたらめだったらよかった。
コーヒーを飲みたいのにコーラを飲んだり、にわとりの真似をして朝に眠ったり、でたらめだったら、って。
だけどやっぱりコーヒーを飲みたいときにはコーヒーを飲みたいから、
わたし、でたらめにはならないの。

わたし、終末処理場だったらよかった。
おとずれたみんなをようこそ!って迎えて、
でもみんなの最果てはもっと別の場所だって分かってるから、わたしはすぐに終末という名前を捨てたくなるに決まってるから、
だからわたし、終末処理場にはならないよ。

わたし、びいどろだったらよかった。
かわいいとかきれいとか、ももちろん、素晴らしい音色の体がほしかったから。
ぴったりだって思ったけど、
あんな薄っぺらい体を保たなければならないなんて憂うつ極まりないので、
わたし、びいどろにはなりません。

わたし、ひとのしんぞうだったらよかった。
よっつの部屋はダイニングキッチンと君の部屋と子どもの部屋と、あとは図書室。
君は洋書がだいすきだから、たくさんの洋書を並べて。
子どもは司書ごっこをして、えいえんに遊ぶの。
わたしは君たちをみまもる、機関になる。

そういうのって、いいな。
だけど

多分わたし、うまれることができたら、何でもよかった。





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