(水を飲んだら肌は夜空さえも映せるの、)
草はらを抜けていく風に
聞いたことのある声が響いた気がして、
振り向いた先の屋根の上には
風見鶏が
カラカラと鳴いて

泳ぎながら眠る魚を
ほほえみあって食べたい
かなしくないうちに
血液にしてしまえるように

軽トラックが砂埃をあげて
舗装されていない道を
走っていった
荷台の幌はかすかに持ちあがり
はたはたとなびく
幌の下に隠された骨の行方は
えいえんを含んだ海でさえ
知ることはないんだろう
砂粒が口の端をかすり舞い上がっていく

路肩に沿ったガードレールの
錆ついた部分をそっと
爪で弾いて
金属の振動を確かめた
腕に残る痣を隠す
袖口の温度に
触れたことはありますか

誘蛾灯から
またひとひら、
翅が燃え尽きる予感がして、
風に密やかに告げる

電信柱のもとに
白い花を手向ける老人
その掌はやさしいばかりでは
なかっただろう
だけれど
些細な仕草も誰かが許していくから
月はふるえてただ、美しいに違いなかった

灰色の鳥が絡み合って、落下する
途端、翻って、

岬には
子供たちが集まって
手をつないで
まぼろしのように建つ灯台を囲んでいる
揺るぎない明かりの先にあるのは
お母さん、
きっとあなたもまだ見たことのない、
あなたです



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柔らかい波が
草はらを分けて
葉をめくりながら、過ぎていく
北極に住む動物の呼吸、
その冷たさで
風見鶏がカラカラと
鳴いている夜

泳ぎながら眠る魚を
ほほえみあって食べたい
かなしくないうちに
血液にしてしまえるように

ヘッドライトに眼が眩み、
軽トラックが
舗装されていない砂利道を
走っていった
荷台の幌は
かすかに持ちあがり
はたはたとなびく
幌の下に隠された骨の行方は
えいえんを含んだ海でさえ
知ることはないんだろう
砂埃が口の端をかすり
舞い上がっていく

ガードレールの錆を
爪で弾いて、そっと
金属の振動を確かめた
腕に残る痣を隠す袖口の温度に
触れたことがありますか

誘蛾灯から
またひとひら、翅が燃え尽きる
予感がして、風に
密やかに告げる

電信柱のもとに
白い花を手向ける老人
その掌はやさしいばかりでは
なかっただろう
だけれど
些細な仕草も
誰かが許していくから、
月という現象は
美しいに違いなかった

灰色の鳥が絡み合って、落下する
途端、翻って、

岬には
子供たちが集まって
手をつないで
まぼろしのように建つ灯台を
囲んでいる
揺るぎない明かりの先にあるのは
お母さん、
きっとあなたも
まだ見たことのない、
あなたです




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夜空を映す水溜まりを
やさしいバネで飛び越えた
草はらを分けていく風に
振り向く、先の
屋根の上には風見鶏が
カラカラと、鳴いて

泳ぎながら眠る魚を
ほほえみあって食べたい
かなしくないうちに
血液にしてしまえるように

軽トラックが砂埃をあげて
舗装されていない道を
走っていった
荷台の幌は
かすかに持ちあがり
はたはたとなびく
幌の下に隠された骨の行方は
えいえんを含んだ海でさえ
知ることはないんだろう
砂粒が口の端をかすり
舞い上がっていく

路肩に沿ったガードレールの
錆ついた部分を
そっと、爪で弾いて
金属の振動を確かめた
腕に残る痣を隠す
袖口の温度に
触れたことはありますか

誘蛾灯から
またひとひら、翅が燃え尽きる
予感がして、風に
密やかに告げる

電信柱のもとに
白い花を手向ける老人
その掌はやさしいばかりでは
なかっただろう
だけれど
些細な仕草も
誰かが許していくから
月はふるえて
ただ、美しいに違いなかった

灰色の鳥が絡み合って、落下する
途端、翻って、

岬には
子供たちが集まって
手をつないで
まぼろしのように建つ灯台を
囲んでいる
揺るぎない明かりの先にあるのは
お母さん、
きっとあなたも
まだ見たことのない、
あなたです


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