しまわれているところ




ゆびさきが
緑色になっていくのだった
まさか
緑色になる日が
訪れるなんて
思いもしなかった

掌まで
色が侵食してきた

君は
飛び起き
あなた、きっと森になるのだわと
喜び
乱舞して
お祝いをしましょうと
とびきりお祝いをしましょうと
親や友人、はとこにまで
電話をかけはじめた
おい
冗談じゃあない
今日は大事なプレゼンがあるんだ
スーツを着ようと
手を伸ばす

掴めない
シャツに緑色が
びとり、と

おい
シャツを着せてくれ

君を呼ぶ
君を呼ぶ

電話番号をものすごい速度で
押し、君
(タウンページで
(手当たり次第に
今日はお祝いをするからどうぞ皆さんでいらしてね、ええあの人が森になるの、ええありがとう、ふふ、そんな、またあ、そちらこそ、いいえこちらこそ、ええ、ええ、じゃああとでね、
(手当たり次第に
 、
 、
 、
 、

   き み は ? …

ベッドの上で
緑色に染まっていく
体を
ざわざわと鳴らして
おい、
おい、と呼ぶ
声帯は
笹の葉
横隔膜は
蓮の葉
きっと、多分
そういう風に出来ているんだ
眼は
泉のようよって
きっと、多分
君は云う
そういう風に出来ている

だから、

わたしから
排出されるものは
すこやかな酸素であるから
なにひとつ
疾しいことなんてない
ないのだよ
誰かに救われたのだって
テレビが、
ああよかったね
ほんとうに
よかった
そうやって
喜ぶことだって
もう許されはしない
だろうから
緑色
わたしは
バッタを食む猫だって
いとおしくてたまらない
んだよ

ようやく
受話器を置いた君が
わたしに
近付く
森に
近付く
ざわざわ、
わたしのさざめきに
眼を細め
ほほえむ
一瞬
八重歯が見え、た
あなたが森になるなんて夢みたいだわ
今日は素晴らしいお祝いをしましょうね
饒舌に
君は
にこやかに、

そして静かに
/君はカーテンをあけて
/わたしはカーテンをあけて、しまわれて
泉のようよ、を
待っている


[編集]
[*前][次#]
返信する

はなのかんむり






















[掲示板ナビ]
☆無料で作成☆
[HP|ブログ|掲示板]
[簡単着せ替えHP]