空にオリオンを




電柱は咲かないまま
暮れゆく空を持ち上げている
前提として
曲がるしかない街角に
さしかかると
あなたは オリオンを見つけて
道端のどうぶつの死骸には
目もくれない
飛行機が
陸と陸と陸を結んでゆくのを
あたしは ただ
さびしい、と云った

部屋には
飴玉がいっぱい転がって
いるから当分は死なないのだと
安心する
ハイヒールは階段を
駆け上がるためだけにあり
野菜摘みのあたしには
あんまり不釣り合いだったから
靴箱にしまわれたまま、
おとなしくしている
べたべたする床に寝そべって
扇風機に吹かれて
あたしたちは
(もしくはあなたたちは)
簡単なセックスをして
ひとつだけ飴を舐めた「明日は
晴れるでしょう」と予報するテレビを
眠りにおちる瞬間、消した

麦わら帽子を被って
畑に出かけると
よごれた手拭いを
首にかけたおじさんが
おはよう と
歯を見せて笑って
おはようございます と
あたしも笑ってみせた
雑草が毎日毎日、生えて
少しずつ、抜いてゆく
蜂や蝶や蟻やミミズやらが
記憶を通りすぎ
少しずつ、引っ掻いていった
いやでも傷ついて
だけどいたみはしなかった
少しも

青空、陶器のように
まっさらな空に
果実はジジジジ、と熟れる
汗は輪郭をつたって
あたしの、

ひかりが雲に遮られる
たちまち 雨音、

こぼれる

あなたはあたしを抱くとき
清潔で柔らかい土の匂いを抱いているんだよ、
いとおしいと 云って
(あなたはあたしを一度も、抱かない)

雨が去って
ずぶ濡れのからだを
引きずるようにしながら
帰路につく
昨日の街角とはまったく違う
昨日の街角とまったく同じ
街角でも あたしは
やっぱり曲がるしか、なくて

ひとりの今日に
オリオンは ない
道端のどうぶつの死骸は
まだ、あり
平たく燃やされている
コンクリートの上
暮れない空に
ひりひりと焦がされてゆく


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