けもの




お皿のうえに
雲をひときれ置いて

お父さんはふたたび狩りにでかけた
じょうろを右手に計量カップを左手に森へむかった
わたしはついていきたかったけど、それはお前の役割ではないからいけないと諭され、なーんーでー! と癇癪をおこしてもみたけどまるで効きめはなく、お父さんは簡単な顔になり、雲をひときれちぎって、これを食べて待っていなさいと云った
心外だった

お皿のうえの雲をかんさつする
置かれてしばらくは死体のように動かなかったが、太陽が窓からひかりを差しこんでくると、七色にひかり表面を毛羽立たせた
わたしは机に片頬をくっつけてその様子を絵に描く/もくもく具合をうかがいながら本質を描くのはとてもおもしろかった/水星はとても冷たいというすずめ達は、風が鳴ると銀杏の木から放射状に飛んでいった
スケッチブックはすぐに埋まり、あらゆるものを裏っかえしてクレヨンを走らせる
お母さんがいたらきっと、けいべつの目つきでわたしをののしるのだろうけど、さいわいお母さんはぜつめつしたあとだったので、わたしは心置きなく絵を描くことができた

さてわたしは雲を食べなければならず、どうしたものかと首をかしげている
その前に顔を洗い洗濯物を干して掃除機をかけることをわたしはのぞんで、だけどそれを左脳は必死にくいとめようとした
しかたなく窓ぎわのパキラに挨拶だけをして、雲を食べることにする
おはようと声をかけると、パキラはふかぶかとお辞儀をして、もとに戻り、わたしはフォークとナイフを用意する
雲をフォークで押さえ、さしさしとナイフで切りはなしていく
ひとくちサイズが大切だ
一瞬、だれかの悲鳴がきこえた気がしたけど
さして問題ではない
ような気がしたから
さして問題ではなかった

ひりひりと苦く、しょっぱい
あまり美味しくない
と思う

きっと
お父さんも、もう戻ってはこない





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