サラダ(祈り)



テーブルに季節の花を
あの子は飾る
透き通る青の花瓶
ひたひたに水を張って
花を挿すと、ちょうどいい
わたしは食事するたびに
少しずつ溢してしまうから
ほとんど、
ふさわしくなかった

 祭り囃子を踊ったよ
 くるぶしが、美しかって
 皆、涙を流して
 けれど声はたてんかった、
 たてるもんじゃ
 ねえ、焼きそばが積み
 重なる四百円、ねえ払って、

少し御手洗いに と
ほほえんで帰ってこない人を
午前零時まで待ち、
大根サラダには
サランラップをかけ
短い書きものを残して
お風呂場で眠る
あわよくば
溺れてしまいたい、
そうしたって綺麗な水はきっと
喜んでくれる

 新しいスカートを
 購ってきました
 ベランダに干しておくから
 好きなだけ
 眺めて
 遠い目をして
 懐かしんでほしい

玄関をあける筋肉は衰えて
靴を磨いて
うす明るい日に
頭を下げてばかりいる
知らぬ間にはめられていた
くすり指の銀色は
くすんでしまい、わたしの
皺の深さによく似合った
おしまいには必ず
拍手をする
履かれない靴を
尊ぶための、どうか
拍手を忘れないで

 へたりと座り込み
 縁側に転がってある
 いくつかの情事の
 熱のないそれの
 輪郭をなぞって、細い息を吐く
 薬缶の鳴り渡る音に
 ふと立ちあがる
 着物は肌を落ちて
 床に、
 落ちた着物の隙間から
 櫛がのぞき
 梳かれた溝から蟻が
 たった今、うまれたように

あの子は畔道のうえ、
オウオウと走っていって
一度だけ、こちらを振り返る
被っていたお面を外し
顔のない顔で
あっかんべえ、を
してみせる



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