初夏をめぐる








水を撒いて
撒かなくても生える草を
ひっこ抜いて
わたしたち「また明日」って、手を振る


降る、
雨の日に
わたしのさいあいのヒトビトは皆、
ましろいベッドを
なにひとつよごさず
すべらかな骨に、なった


「今年も庭に夥しくあじさいが咲きました」
「お盆休みにはきっとそちらに帰ります」


網戸から
こまかく分かれた風が
まだ書きかけの便箋をひらり、
揺らした


手おくれの膵臓にもちゃんと
錠剤をだしてくれる
白衣をまとった医師の
文字は、糸屑みたいにもつれて
滲んでいるからすこし、
雨でも落ちたのかもしれない
オルゴールの音楽
消毒液の匂い
わずかに湿ったわたしもあるから


茄子とお砂糖を購って
夕飯をつくろうとしても
手はまだらに透きとおっていて
包丁を握っては落とし
落としては拾い
刃だけが
ざりざりと錆びていった
あ、と気づいたときには既に
古い血液をこぼして
わたしは決定的に
違ってしまう


玄関のとびらはあけ放したまま
せまい路地をゆくと木造のアパート、
ふと顔を上げると
2階の窓から軒下にてるてるぼうずを
くくる子供
まっすぐゆき過ぎればやがて
ひかりの群がる、青へ


潮だまりには
ヤドカリが動いて、
頭上にはとんびが
おおきく円を描いている
わたしは時折
影をつくり
貝殻に耳を傾けたり、している








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