五月雨、乱れ
信号は赤
車を降りたくはなかった
外は五月雨
雨は落ちた瞬間
犬と犬と犬と兎になり
犬は跳ねた瞬間
猫と猫と猫と狐になり
兎は跳ねたまま宙で
ゆっくりめくれていく
めくれていくのを車内から
眺めながらわたしは
リバーシブル
と、呟き
猫と猫と猫と狐の
お産を視ないふりする
いちどきりの、いきものに、あいたい
粘っこい膜にくるまれて
地球儀は垂れている
のが、街角のスクリーンを彩って
ｎｅｗ ｗｏｒｌｄ！！
と爆音をたてている
わたしたちはなにひとつ
あたらしくなんて
ないのに、
地球ばかりが
刷新されていくなんて、ね
信号が青になる
運転席の男は
はやく降りろよ、と怒鳴る
そうね、とほほえみ
わたしは車を降りた
猫と猫と猫と狐と
うまれたものたちが
うねうねとアスファルトを
ふさいでいる道に立つ
わたしの肌のうえでも
くりかえされる連鎖にキスして
キシリトールガムを
めくれかけの兎の
心臓に
吐いた
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