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[1] で、しばらくは意気地もなく
By Ryou
01-04 23:20
で、しばらくは意気地もなく泣いていましたが、やがてそこにある下駄を突っかけて、ふらふらと表の方へ出ました。笠の無いのに気がついたもんですから、ふところから白い手拭を出して頬かむりをしました。どこへ行くつもりか、自分にはっきりとは判らなかったかも知れませんが、目に見えない糸に引かれるように、往来の少ない田舎の町を横に切れて、舞台で見る色男のように、魂ぬけてとぼとぼと歩いてゆきました。足は自然にお初の家の方へ向いて行ったのです。
お初の門口には大きな百日紅の木が立っていました。六三郎はやがてその木の下まであるいて来ると、内から丁度にお初が出て来ました。その前後には二人の子分が付いていたので、六三郎はあわてて百日紅のかげに隠れてしまいましたが、虫が知らすとでもいうのでしょうか、門を出てふた足ばかり歩くと、お初はこっちをちょっと振り返りました。銀杏返しの鬢はほつれて、その顔は幽霊のように真っ蒼に見えたので、六三郎は思わずぎょっとしましたが、なにしろ傍には大の男が二人も付いているのですから、うっかりと声をかけることも出来ません。鍼灸 横浜 feel(フィール)横浜本院
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