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[1] 非情の木にも女夫はある
By Ryou
01-07 16:18
頼家 非情の木にも女夫はある。人にも女夫はありそうな……と、つい戯れに申したのう。
かつら お戯れかは存じませぬが、そのお詞が冥加にあまりて、この願かならずかなうようと、百日のあいだ人にも知らさず、窟へ日参いたせしに、女夫の桂のしるしありて、ゆくえも知れぬ川水も、嬉しき逢瀬にながれ合い、今月今宵おん側近う、召し出されたる身の冥加……。
頼家 武運つたなき頼家の身近うまいるがそれほどに嬉しいか。そちも大方は存じておろう。予には比企の判官能員の娘若狭といえる側女ありしが、能員ほろびしその砌に、不憫や若狭も世を去った。今より後はそちが二代の側女、名もそのままに若狭と言え。
かつら あの、わたくしが若狭の局と……。ええ、ありがとうござりまする。
頼家 あたたかき湯の湧くところ、温かき人の情も湧く。恋をうしないし頼家は、ここに新しき恋を得て、心の痛みもようやく癒えた。今はもろもろの煩悩を断って、安らけくこの地に生涯を送りたいものじゃ。さりながら、月には雲の障りあり。その望みもはかなく破れて、予に万一のことあらば、そちの父に打たせたるかのおもてを形見と思え。叔父の蒲殿は罪のうして、この修禅寺の土となられた。わが運命も遅かれ速かれ、おなじ路をたどろうも知れぬぞ。
(月かくれて暗し。籠手、臑当、腹巻したる軍兵二人、上下よりうかがい出でて、芒むらに潜む。虫の声にわかにやむ。)
税理士 神戸 金の切れ目が縁の切れ目
pc
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