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[1] むかしの船頭仲間には
By Ryou
03-06 04:38
「むかしの船頭仲間には一種の習慣がありましてね」と、半七老人はここでわたしに説明してくれた。「身投げのあった場合に、それが女ならば引き上げて助けるが、男ならば助けない。なぜと云うと、女は気の狭いものだから詰まらないことにも命を捨てようとする。死ぬほどのことでもないのに死のうとするのだから助けてやるが、男の方はそうでない。男が死のうと覚悟するからには、死ぬだけの理窟があるに相違ない。どうしても生きていられないような事情があるに相違ない。いっそ見殺しにしてやる方が当人の為だ、と、まあこういうわけで、男の身投げは先ず助けないことになっている。それが自然の習慣になって、ほかの水死人を見つけた時にも、女は引き上げて介抱してやるが、男は大抵突き流してしまうのが多い。男こそいい面の皮だが、どうも仕方がありませんよ」
 ここの船でも船頭が男の水死人を突き流そうとするのを、隠居は制した。
「まあ、引き上げてやれ。なにかの縁でおれの網にはいったのだ」
 こう云われて、千八も争うわけには行かなかった。かれは指図の通りに網を手繰って、ともかくもその男を船のなかへ引き上げると、かれは死んでいるのではなかった。網を出ると、彼はすぐにあぐらをかいた。東大阪市 歯科 クレジットカードでSEO対策を考案
pc
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