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[1] あたくし、いいます
By Ryou
10-29 00:50
「あたくし、いいます」と、ニーナは、胸をはっていった。
「この爆破事件の容疑者は、すでにあなたの手に捕らえられているではありませんか。そのうえに、房枝さんをうたがうのはいけません」
ニーナは、妙なことをいいだした。
「なにッ!」
「あたくし、よく知っています。トラ十というあやしい東洋人が、あなたがたの手に捕らえられたはずです」
「えっ、それを知っているのか。どうして」
「そのあやしい東洋人トラ十は、ミマツ曲馬団の爆破が起って間もなく、三丁目の交番を走りぬけるところを、警官にとらえられましたのです」
おどろいた。全くおどろいた。警官たちも、帆村もニーナのことばには、おどろいてしまった。
「ニーナさん。あなたは、なぜそんなことを御存じなんですか。どこから知ったか、こたえてもらいましょう」
「ほほほほ。あたくし、公使館の人から聞きました。日本中のこと、なんでも、すぐわかります」
「えっ、公使館の人? とにかく、向こうへいって、もっとくわしく聞きましょう。さあニーナさんも、向こうへ歩いてください」
「いやです」
ニーナは、首をつよくふった。
「あたくしは、もうかえります」
「いや、かえることはなりません」
「いいえ、あたくし、あなたのような警官に自由をしばられるような、わるいこと、しません。あなた、たいへん無礼です。そんなことをすると、わが公使館は、だまっていません。むずかしい国際問題になります。それでもよろしいですか」
「うむ」
「ほほほ、あたくし、邸にいます。逃げかくれしません。話あれば、公使館を通じて、お話なさい。ほほほほ」
成城 インプラント blog :: 隨意窩 Xuite日誌
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