APEXアフィリエイトシステム

[投稿順][新着順]
[前n][次n][検][▼]

リレー物語
[1]無名さん
ある日森を歩いていると…
:SH903i
:12/09 02:55

[101]無名さん
「もう少し歩きたいな。せっかくだからお腹空かせて中華街でお昼にしないか?」

保留にしよう。もう少しこの一時を大事にしたい。

千恵は僕の提案ににっこりし、
「うん!そうね。なんだか今日のウラ君は大人っぽいな」

あの頃の僕はあまり自分を主張することが苦手だった。千恵にとっても意外だったのだろう。


繁華街は平日にも関わらずさらに人が多い。芋洗い状態だ。

その中にちらほら学生服の黒い一団が見える。この辺りの高校生とは違いすれた感じがしない。

「かわいいわね。修学旅行かしら?」
千恵も僕の視線の先を見て言った。
「ああ、なるほどね。」

修学旅行の自由行動なのか。確かにこの辺りは観光客が多い。

学生服の3人組がはしゃぎながらこちらに走って来る。


ドン!


中の一人が僕に勢いよくぶつかった。なんとか踏み止どまったが体当たりした本人は前のめりにこけた。

「す、すみません!!」

声変わり前の独特の声でびくつきながら僕に謝る。

だが僕は『あっ』と声をあげそうになった。その顔は…

赤坂だった。

だいぶ印象は違うが間違いない。クリクリとした坊主頭に純朴そうな幼い顔だが面影がある。

「駿!なにしとるん?」

先程の学生服がわらわらと戻って来て口々に僕にすみませんと謝っていく。

「いや、大丈夫だから…」

「そうそう。気にしないで?君こそ転んだけど平気?」

千恵に声をかけられ赤坂は真っ赤になった。
「ぜ、全然平気です!ほんとすみません!」

ペコリと頭を下げ再び友人達と走って行ってしまった。


何故立て続けにペンションに関わりのある人物に遭遇するのだろう?

偶然?

やはり夢だから?
ぼんやりした僕を千恵は不思議そうに見ている。
:V803T
:02/05 15:44

[102]無名さん
もし夢だとしたら、覚めない方がいい…。

あんな被害にあった赤坂も白河もここでは無事に生きてるのだ。

それを思うと、ついため息が出た。

すると、

「さっきは大人っぽいって言ったけど、今日の君はやっぱり変!」

千恵が僕の頭を小突いた。

夢にしては相変わらず……痛い。

「ぼーっとしてるのはいつものことだけど、どうしたの?何か深刻な悩みごとでもあるの?」

千恵はやはり鋭い。

僕は苦笑して、何でもないよと答える。

「買いたい雑誌があるんだ。本屋に行かない?」

僕は千恵の追求をごまかすようにそう提案した。

何気なくポンッと千恵の頭に手を置く。

「……まあ、いいけど」

千恵はちょっと頬を赤くしながら、すねたように承諾してくれる。

本屋に向かう途中、

「バイオ研究所で爆破事故だってよ。危ない研究でもしてたんじゃねーか?」

「ばーか。漫画の読み過ぎだって!」

と、騒がしい会話が耳に飛び込んだ。

バイオ研究所?

何となくその単語に気をひかれ、僕は目線をそちらに向けた。

電気屋の前で高校生が数人、ウィンドウの前に立ち止まっている。

奥の大型テレビが流すニュースに注目しているようだ。

「死傷者20人以上ってけっこう大事故じゃねー?」

「これどこ?ヤバい薬品とか外に流れ出したりしてねーの?」

「だからお前なぁ…」

高校生たちの会話はとても呑気そうだ。

比べて、僕の心臓はバクバクと波打つ。

引き込まれるように足がそのテレビ画面へと向かった。

これがただの偶然だとしたら恐ろしすぎる。

研究者の1人だろう。

白衣を着た人物が報道陣に囲まれ、何か話していた。

その顔は……!
:F704i
:02/06 18:14

[103]無名さん
…渚だった。

テロップには
《研究所所長 青木渚博士》とある。

『合成獣ってご存じかしら?』


ふと、その渚の言葉を思い出した…
あの時は随分博識なものだと思ったものだ。一般的な知識ではまず知り得ないだろう。
彼女がバイオ研究に携わっていたのなら納得がいく。
しかしなんだ!?
この符号は!


…繋がって、いるのか?

これはただの甘い夢じゃない。次第にそう思えてきた。


激しく考えだした僕を千恵は不安そうに、いや不審げに見上げている。
「…ウラ君?」

呼び掛ける声にもその色は滲んでいる。

その時―


「浦城君…か?」
別の方向から僕を呼ぶ聞き覚えのある男の声がした。だが、白河や赤坂のように僕を認識していない声の調子ではない。


もう驚かない。
その声の主は―


:V803T
:02/07 04:38

[104]無名さん
今と変わらない姿のマスターだった。

若くもないし…老けてもいない…

何故マスターだけあの時と変わらないんだ?

千恵や赤坂、白河は若い姿なのに…
:SH903i
:02/07 05:40

[105]無名さん
そして僕は気づいた。

マスターの服の袖に赤い斑点がついている。

それは彰子さんの死体に触れたとき、ついた血痕に違いなかった。

「……浦城くんだよね?後ろにいるのは……千恵ちゃん?」

確信した。マスターだけ。マスターだけが、外見も服装も記憶もペンションにいた彼そのものだ。

「君の肩に触れた……そしたら何故かこんなところに……」

マスターは全く訳の分からないといった様子で、こちらに近づいてくる。

甘い夢から悪夢へ――。いや、奇妙な幻から厳しい現実へ――。瞬く間に引き戻される予感がした。

「……誰?」

千恵は気味悪そうに僕の袖を掴んでくる。

そんな彼女に、僕は自分でも信じられないような言葉を告げた。

「……逃げよう。千恵ちゃん」

「え?」

僕はキョトンとする千恵の手を引き、走り出した。

もう少し……もう少しだけ、千恵との平和な時間を過ごしたい。

自分勝手な欲求だと分かっていたが、そのときの僕が望むのはそれだけだった。
:F704i
:02/07 14:05

[106]無名さん
「痛いよ!ウラ君!?」

千恵の声にも構わず走り続ける。

僕は逃げている…
だが、

一体何から?

目を背けることへの罪悪感。

僕は今自分から逃げてる

気がつくと足がガクガクと震え上手く走れない。


人通りが途絶えた細い路地でようやく、電信柱にもたれるように手をついた。

振り回された千恵は僕の手をふりほどき、肩で息をしている。

お互い呼吸が落ち着いた頃、千恵は僕の前に立つと…不意打ちで僕の頬を張った。


パシンッ!


いい音がした。

「…どういうつもり?」

あきらかに怒りを含んだ低い声。

それほど怒るとは予想外だったが、辺りを見回し僕も青くなった。

「千恵ちゃ…、違う…!!」

そこはラブホテルがズラリと並ぶ有名な通りだった。
「違うなら説明しなさい!ウラ君ほんとに変だよ!…すぐに黙り込むし、あの人は何?それにこんなとこに連れて来るし……変だよ、知らない人になったみたいだ…。」
最後は泣き声が混じる。

どうしよう…
説明するべきなのか。話せば…僕がおかしくなったと思われるだろうか?

揺れる。

陰惨な出来事と平穏なこの時、麻利菜と千恵…

だが…奥さんを奪われたマスター、恋人に取りすがる白河、消えた麻利菜、首輪…バイオ研究…事故…青木渚博士…。

僕は…向き合わなければ。
やっと、腹をくくった。
「ごめん、悪かった。話す。取りあえずここを出よう。」
話して信じて貰えないならばマスターを探そう。辛いがその時点で千恵への想いは断ち切らねば…

千恵を促し元来た道を戻ろうとした。
しかし、何故か千恵は僕の手首を掴んだまま動かない。

「…待って、あたし…」

続く言葉は再び僕を悩ませることになる。
:V803T
:02/08 05:07

[107]無名さん
「いっぱい走って疲れちゃった。……ちょっと、この辺で休憩していかない?」


もう何が起こっても驚かないつもりだった。

だが、さすがにこの発言の前では無理だった。

「や、休むって、こ、この辺で?!」

僕は顔を耳まで熱くしながら、分かりやすく動揺してしまう。

近くにファミレスや喫茶店といった建物は見当たらない。

休める場所といったら、周囲に立ち並ぶホテル群しかなかった。

「だめ……かな?」

千恵は上目使いで見つめてくる。

その様子は本気で誘っているように見えた。

「え、ええと、その……」

こんな展開になるとは思わなかった。

まず、千恵に限ってありえない……。

僕は完全に思考がショートし、言葉を失う。

すると、

ぷっ。

こらえきれなくなったと言わんばかりに千恵は吹き出した。

それでようやく、からかわれていたのだと気づく。

くすくすと笑い続ける千恵に僕は脱力した。

「勘弁してよ、千恵ちゃん。そういう冗談は……」

恨みがましく言うと、キッと睨みつけられた。

「何よ、君こそあたしを散々振り回したじゃない。その仕返し!」

「うっ…」

そう言われると何も文句は言えなくなる。

「でも、なんだかホッとしたな」

千恵は明るく言う。さっきまで泣きそうだったくせにずいぶん立ち直りが早い。

「何に?」

僕は感心して尋ねる。

「さっきの反応。ちゃんとあたしの知ってるウラ君らしかったから……」

そう言って微笑む千恵はとても美しかった。

「………。」

思わず見とれるが、その笑顔はすぐに麻利菜のものと重なる。

そこで分かった。


……違う。

今の僕は目の前の千恵が知っている僕じゃない。

あの頃の僕はただ千恵だけを見ていた。胸が苦しくなるくらい、ずっと千恵のことばかり考えていた。

だけど、今は……。

千恵とのひとときを大切にしたいと思っていながら、その千恵に対してずっと気持ちが上の空だ。

今更ながら気づいた。

僕の中の千恵への思いはとっくに過去のものだと。

長い年月、彼女に対する未練と後悔を引きずってきた。

その思いは根深く、簡単に断ち切れるものではない。

だけど……。

今、僕が本当に愛していて、1番大切な女性は……。


――僕の脳裏に麻利菜と初めて出会った日の記憶が蘇る――。
:F704i
:02/09 03:23

[109]無名さん
麻利菜と出会ったのも春だった。

ふわふわと桜が雪のように散る―そんな季節。


僕は社会人2年目を迎え少し気持ちに余裕も出来た頃、退社後落ち着いた雰囲気のバーで過ごす時間がなによりの贅沢だった。
いや、彼女に会いたいがために通っていたのかもしれない…


麻利菜は女性のバーテンダーだった。


会社の先輩に連れられ初めて訪れた時…その店には3人バーテンダーが居たが紅一点、カウンターの隅でシェイカーを振る鮮やかな手つきに目を奪われた。

幼い顔立ちに大きな瞳、キリッと結い上げた髪は対照的でいつしか彼女を目で追ってしまう。


そんな僕に麻利菜が作ってくれたのは…
チェリーブロッサムだった。


「へぇ…どうしてこれを作ったの?」

桜のピンクというより濃い赤の色合い。口をつけるとブランデーの濃厚な甘さとふわりと柑橘の香りがする。


彼女はにこりと微笑むと失礼しますと言い、そっと僕の髪に触れた。

ドキッとした。


「髪の毛についてましたよ。」

そう言って彼女が見せてくれたのは染井吉野の花びらだった。


:V803T
:02/11 21:41

[110]無名さん
あげ 誰か続き書いて
:W52CA
:03/02 02:16

[112]無名さん
ああ、そういうことか…。

僕は彼女に照れ笑いを返した。

会社へと通う最寄り駅の近くには線路沿いに続く、長く美しい川がある。

河川敷に立ち並ぶ桜は毎年何故か早咲きだが、散るのも遅く、ちょうど今が見頃だった。

会社の帰り道、通りがかった僕は立ち止まり、思わずその美しさに見とれた。

その時についたものだろう。

「ありがとう。とても味わい深くてイケてるよ」

僕が彼女のカクテルを誉めると、彼女は嬉しそうにふわりと笑った。


まるで桜のような……。

僕は同じように彼女に見とれた。


そして、

その日から、名前も知らない彼女への思いが急速に高まっていった。

だが、当然ながら、可憐で美しい女性バーテンダーに惹かれるのは僕だけのことではない。

店には明らかに彼女目的と思われる男性の常連客にあふれていた。

僕は女性の目を引くようなハンサムではないし、気の利いた会話も出来ず、高級なスーツも着ていない。

見るからに普通のサラリーマンで、ごく平凡な僕に彼女が好意を寄せるなんてありえるだろうか?

無駄だと分かっていながら、僕は無謀な挑戦をした。

思いきって彼女をデートに誘ってみたのだ。

いつものカウンターのテーブルに、

『よかったら一緒に行きませんか?』

と、一言書いたカードと共に2枚のチケットを彼女の前にそっと差し出した……。
:F704i
:03/19 02:51

[113]無名さん
彼女はしばらく3枚の紙片を注視し、顔をあげると困ったように微笑んだ。

そして…

「…今日も私にお任せでよろしいですか?」

と聞いた。

「え、あぁ…お願いします。」

返事を聞くつもりだった僕は肩透かしをくらったような気分だった。


見慣れたシェーカーを振るスタイル。その時彼女が作ったものは…夕闇を思わせる綺麗なバイオレットのショートカクテルだった。

…これは……

「どうぞ…ブルームーンです。」


そうか。数種のカクテルにも花言葉のように隠された言葉がある。

ブルームーンはたしか…『できない相談』だった。

つまりは断られたのだ。

2枚のチケットはそっと返され、僕は黙ってそれを飲み干した。


こうして一度目のチャレンジは玉砕した。


それから数日後偶然の出会いで僕と彼女の距離は一気に縮まることになる。
:V803T
:03/20 14:00

[114]無名さん
休日、シェリーを連れてあの河川敷まで少し遠出の散歩に出かけた。

その頃のシェリーはまだ仔犬で、今以上に人懐っこく、やんちゃな甘えん坊だった。

咲き誇る桜並木の下を、人とすれ違う度にヒョコヒョコとじゃれつきに行こうとするシェリーをなだめながら、僕はふと桜を見上げては、小さくため息をつく。

脳裏に駆け巡るのはバーの彼女の笑顔ばかり。

ぼんやりとしてると、シェリーがまた世話しなく綱を引っ張った。

いつも通り引き寄せようとした僕は、目の前の光景に愕然とする。

……これは幻なのだろうか?

シェリーが尻尾を振って駆け寄ろうとする視線の先。

ベンチに女性が1人腰掛けている。

その横顔は僕が思い焦がれるバーテンダーの彼女に違いなかった。


口をあんぐりと開け、思考の止まった僕の手から綱が滑り落ちる。

しまった!

慌てたときにはもう遅く、シェリーは嬉しそうに彼女の足に飛びつき、じゃれついた。

「コラ!シェリー!」

素早くシェリーを抱き上げ、「すいません」と頭を下げる僕を彼女を目を丸くして見上げた。

「あら、確か……」

「あ……ぐ、偶然ですね」

僕は罰が悪そうに頭をかく。

「………。」

「………。」

気まずい沈黙が流れる。

何はともあれ、せっかくの出会いだ。

何かを話したい。だが、何も言葉が出てこない。

そんなとき、

くぅ〜ん。

僕の腕の中、シェリーが情けないような鳴き声を上げる。

すると、彼女がくすりと笑った。

「可愛いワンちゃんですね」

「そ、そうですか?」

僕は内心すごく嬉しい。

「名前は何ていうんですか?」

「シェリーです」

「じゃあ、女の子なんですね」

彼女の指がシェリーの頭を優しく撫でる。

僕達の中に流れる空気が、だんだん和やかになっていくのを肌で感じた。

僕がシェリーにどれだけ感謝したかは言うまでもない。
:F704i
:03/22 16:02

[115]無名さん
あげ
:N906imyu
:04/11 00:45

[116]名無しさん
続きが気になります
:W64S
:04/11 21:24

[117]無名さん
カスタードクリームに、タバスコ加えると

意外な味へと変化

是非やってみて
:W52SH
:04/11 23:45

APEXアフィリエイトシステム

[前n][次n]

返信する
112/1000件
4294view
戻る

APEXアフィリエイトシステム

©みんクチ掲示板




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove