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のび太の家を出ると、2人は並んで歩き始めた。
久しぶりに見る出来杉の顔は、やはり美しかった。
しずかの心は何日かぶりに平穏を取り戻していた。
しずか「もうどこにも行っちゃ嫌よ。出来杉さん」
出来杉「あぁ、僕はずっとしずかちゃんと一緒にいるよ」
しずか「出来杉さんが無事に戻って来て本当に安心したわ。早速だけど、わたし出来杉さんに相談したいことがあるの」
出来杉「何だい?」
しずか「わたしなりに出来杉さんの行方を捜して、大変だったのよ。あの日、のび太さんと裏山へ行く出来杉さんの姿をわたし見ていたの。何かあったんじゃないかと思って心配したわ」
出来杉「しずかちゃん、君はどこまで知っているんだい?まさかさっき部屋の外で立ち聞きしていたんじゃないだろうね」
しずか「ごめんなさい。本当は全部話を聞いていたの」
しずかは照れたような笑顔を浮かべた。
しずか「裏山での出来事も本当は全部見ていたの。だからわたしはあの3人に反省してもらい、事件を告白してもらおうと考えたわ。だけど3人はあくまでも隠し通すつもりだった。わたしは最初に剛さんを問い詰め、スネ夫さんには脅迫状を送り、罪の意識を持たせようとしたんだけど、全然駄目ね」
出来杉「じゃあ2人は…」
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しずか「殺したわ。仕方なかったのよ。わたしは今まで出来杉さんはあの3人に殺されたと思ってたんだから。まさか生きていたなんて…」
出来杉「ごめんよ、しずかちゃん…」
しずか「せめて出来杉さんがわたしの前にもう少し早く出てきてくれてさえいれば、わたしだってあんな馬鹿な真似しなかったわ」
出来杉「それだけ僕のことを考えてくれていたんだね。ありがとうしずかちゃん」
しずか「2人の死体は裏山に隠したけど、これ以上行方不明のままだとさすがに周りが怪しむわ。ドラちゃんが2人の行方を探すかもしれないし。ねぇどうしたらいいかしら、出来杉さん」
出来杉「それなら簡単だよ。ここにドラえもんくんが予備としてくれたコピーロボットが2体ある。これに2人のふりをし続けてもらおう」
しずか「でも2人はすでに死んでるのよ。コピーできっこないわ」
出来杉「平気さ。ドラえもんくんにうまく言って、タイムマシンを使わせてもらうんだよ。過去の世界なら2人はまだ生きているから、コピーロボットのスイッチを押させることができる」
しずか「素敵!さすが出来杉さんは頭がいいわね。のび太さんとは大違い」
出来杉「おいおい、いくらなんでものび太くんなんかと比べるなんてひどいじゃないか」
しずか「ふふっ…ごめんなさい」
しずかは出来杉の提案に安心し、ようやく事件が解決したことを実感した。
そう、すべて終わったのだ。
明日からはまた出来杉との楽しい日々が始まる。
しずか「ところでこんな恐ろしい隠蔽工作をすぐに考えつくなんて、出来杉さんも意外と人が悪いのね」
出来杉「しずかちゃんのためだから。必死に考えたのさ」
しずか「1つ聞くけど、あなた本当に出来杉さんなのよね?あなたが本体よね?」
しずかの問いに、出来杉は意味ありげに笑ってみせた。
その笑顔はぞっとするほど、美しいものだった。
しずかの目には、いつだって出来杉は神様が時間をかけて丁寧に作り出した美術品のように映る。
その美しさはそう、まるで人形のよう――。
思わず頬を赤らめたしずかを、出来杉は今度いたずらっぽい笑顔で見つめた。
しずかにはわかっていた。
例え今、目の前にいる出来杉が本体であってもそうでなくても、そんなことは取るに足らないことなのだった。
-END-
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