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逃げ場などない
 狩心


壁を張れ
塔を建てろ
外部を監視する見張り台だ
我々は地上を鉄壁の守りとする
しかし あらぬことか
敵は大空から 海岸線沿いから 地中奥深くから 迫ってくるではないか
叫んでも援軍は来ない
むしろ 叫んだ途端に その叫びの中から 新しい敵が押し寄せてくる
逃げ場などない
建てるだけしか知らぬ我ら 農耕民族のもとへ 破壊が押し寄せてくる
我らは聖職者をもってして 敵の軍隊に信仰を促す

ポーカーのような駆け引き
オセロのように変わる者はごく僅かにして
チェスのように使い捨てにされ
将棋のように再利用される事はない
パチンコのように流れ落ちてくる軍隊を傍観し
麻雀のように美の中に横たわりながらアガリ牌を待つ

テレビゲームの中に自由と不平等を見出しました
テレビゲームの中に自己主張と表現の場を見出しました
テレビゲームの中に生きる希望を見出しました
テレビゲームの中に可愛い恋人を見出しました
テレビゲームに何千時間もの労力を費やしても
一向に変わらない現実に虚しさを感じました

小説 映画 漫画
たくさんの大きな感動を享受して
たくさんの物語の終わりを目撃しました
しかし僕の人生には 大きな感動も 物語の終わりも いまだ訪れていません

この生々しい肉体はなんでしょうか
君の温かいその手は一体なんでしょうか
閉じられた世界を嘲笑う声は一体なんなのでしょうか

荒れ果てた広野
砂漠地帯 密林のジャングル 雪原 火山 旅を続ける
右手には剣を
左手からは魔法を放ち
目の前に立ちはだかる怪物たちを蹴散らし
手に入れた沈黙
私が着るはずもない センスのいい衣装で体を包み込み 変身する精神

友達が走ってくる
「ゲームしようぜ」それは人生の間違いか
「私とダンスしましょう」それは正しい選択か
そもそも ありとあらゆる所から 敵が湧き出してくるというのに
我々に選択の余地などあるのか

芸術に触れて 人間的に成長しました 虚しい
歴史上の人物から思想を教わりました 虚しい
楽しそうにゲームをしている子供達を眺める
私たちは無宗教です




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完璧なうんこ
 狩心


あまりに完璧なうんこは美しい
尖がった頂点や方向性も全く無く、水に落ちて飛び跳ねる気配も無い
その場にどっしりと構えた勇姿
女性の曲線美を彷彿とさせる丸みに、ほかほかの肉まんのような湯気
外見は不細工だが、気持ちは暖かい

色は茶色である、大抵、落ち葉の中に隠れている
落ち葉を除けると、いや〜ん見つかっちゃったぁ〜んというように
少し恥ずかしそうな素振りを見せるシャイな奴だ
多少、ぶりっ子ではある・・・

完璧なうんこは、時として姿を変える
ある時は人が定住する家となり、
ある時はあー!踏んじゃった!という、地雷となり、
ある時は畑の肥料となり、
ある時は人々の罪を全て背負い、いいんだ!僕が悪者になればッ
ある時は戦争の火種となり、
ある時は人々に病を届け、
消化されたものがうんこになるばかりではなく、
うんこもまた消化されることがよくある
これは自然の生態系のサイクルを完全に真似ているイカした野郎だ
よく、イカくせぇと言うが、この場合は、クソくせぇと言う、

今ではすっかり下水の設備が整ってしまった為
完璧なうんこであろうが、完璧でないうんこであろうが、
綺麗さっぱり、何所か遠い川や海へ、もしくは宇宙のブラックホールへと
流れていってしまうようになった
まったく残念である

獣はよく、自分の縄張りを主張する為にうんこをする
ちなみに、脱糞の時「うん」と力むから、うんこと言うようになったらしい
固いものはうんこ、柔らかいものをうんちという、
脱糞行為はとってもプライベートなことである。
滋賀県長浜市にある金糞岳という山では、全てのうんこが金になるという。
スカトロジーは哲学で言うところのトートロジーである。
精神的に悩んでいるAさんは毎朝、トイレという閉鎖空間でうんこをする際に、
必ず呟く言葉があるという、わたしはわたし。
そうすると大抵、水っぽい下痢になるという。

完璧なうんこをする際の方法論の一例は下記の通りである

1.便意を催した際に、すぐにトイレに駆け込むのではなく、一定時間我慢する。その間、
  モジモジしてはならない。決して周囲の人に「あの人もしかして・・・」と悟られて
  はいけない。「え?どうしたの?別になんでもないけど」というように平然と装う事。
2.我慢する時間の目安は、ストップウォッチを使う。人差指でタイム1.00で止めら
  れるまで我慢するのが丁度いいだろう。したがって、かなりの個人差がある。
3.我慢する事によって、柔らかいうんちが固いうんこになる可能性が格段にアップする。
  しかし、もっと良いのは、無理に我慢したせいで便意が無くなり、そのまま便秘に突
  入する事である。便秘になればしめたもの。数日後に大量のうんこが待ち受けている
  ことでしょう。その日までワクワクしながら、ストレスに耐えてください。
4.さて、いよいよ本番ですが、普通うんこは三本ぐらいに分けて、途切れ途切れにする
  ことが多いでしょう。それはつまり、始め、中、終わり、のような物語になりますが、
  ここでは一本でお願いします。物語にしてたまるか!私は今を生きてるんだ!という
  気持ちが大事です。そこであなたの意志の強さが試されます。
5.無事、うんこを水中に投下する事ができましたら、一度便座から立ち上がって、水中
  のうんこをじっと見つめてください。なぜかそこで、いとおしい気持ちになるはずで
  す。うんこは数秒前まであなたの一部でした。それが今ではあなたから旅立ったわけ
  です。そこでしっかりと感謝の意を込めてこう呟きましょう、ありがとう、さよなら。




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あたしのはなし 2
 黒木


遠くに離れた耳につぃて流れてった水ゎ鏡のような湖に弾かれた ぁたしゎ深くで捕まぇた魚に道ぉ教ぇてもらった 陽ゎ今日も太陽ぉ射つから 地面にゎ知らなぃ鳥の死体が落ちてくる 君ぉ失った日に見つけた鳥ぉ育てたのゎぁたしでしょ 望遠鏡に閉じ込めた星が地面に向かって歩ぃてく 隣の家の子なら湖に沈んだ星の色ぉ言ってみて 眠る気がなぃなら理由ぉつけるのはやめたほうがぃぃょ 蜘蛛の巣だらけの学校ぇと続く道 校舎でゎ糸が指輪ぉ連れて逃げてる オルガンにゎチョコレイトが塗りたくられて 星のなぃ夜ぇと飛んでぃくバスゎもう出発したみたぃ ぁたしなんてとっくに忘れられてる



隣の家の子たちの秘密基地にめりこんだ目のないボール 男の子の垢はとっくにきえてしまったけど かわりに鳥の影が残ってる あたしは願われない雨でしょ 蒸発する記憶に降って 鳥たちの橋 にならないと 削られた時間と時間が重なりあう ねえねえ あたしのむこうでおとなになったきみたちがあいしあってる チョコレイトのアルミが霧のほうへ転がっていったからあたしは 霧のなかへと追いかけないといけないの 不潔なんかじゃ ないょ でも君たちが大人になると秘密基地は解体されちゃうんだから 学校は蜘蛛の国になっちゃぅ それは困るょ 困るょ ね



(・・・学校へと走っていった水が君を眠らせてバスに連れていったせいであたしは霧のなかで迷うハメになったι・・・)



 聞こえますか あたしは風の強い日に髪を束にして地面に星を叩きつける 月の下で溢れた毬 のようなもの 季節がなければ 星を捕まえることもできず 震える心臓をそっと開いてみれば 鏡の湖はより 凍る 深いところに隠れていた魚は細い線を描き あたしを過ぎていった
鳥が落ちたあとあたしもバスに乗ろうと決めていたのだけれどあたしはとうとうバスに乗れないまま大人になろうとしている 鳥が飛び続けるなんて信じられない話なのだけれど あの鳥は落ちない あたしは黒くなった手を見るたびに君とその友達を思い出す 捕まえた魚を埋めてもまだ
部品が足りなくて


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快楽と黒
 漆

僕は夜を使い過ぎた。井戸の乱用だ。
どうにも葬式が気になる、気になっている。
足だ、幾万もの肌色をした生足。
靴下を履いているものもある。

船は壁を伝い這い登っていく。
ぼきぼきと音を立てて。
僕は腕が伸びるのを待つ。
ふと閃きに似た形でそれは人波に消えてゆく。
タイムカプセルに被さった砂にも似ている。
やがて乗客どころか舵をとる者すら不在だと知る。
荒い旅だ。
見たことがある。運動会の、大玉転がしだ。
ささくれによって脱線し、何れ死ぬだろう。
物言わぬ人工にやがて、口を奪われるだろう。

高音は耳につく。彼女の声は高すぎる。
つまり解散だった。

やがて顔面だけとなる。
あいつは時折、僕の鞄の中にも現れた。
人と擦れ違う時はキーホルダーの振りをして、あたかも自然にそこにいた。

(何もかもを口から食べようとしている)

「重力に従って、穴の空いたポケットからどんどん落としてゆくのだもの」

(口にはどうして毛が無いんだ)

「どんどん落ちるから、また井戸に落ちるのよ」

僕は夜を使い過ぎているのに。
岬に会いたくなって車を飛ばすと、どこまでも葬列が続くのだ。





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ワジムイの長坂
 橘 鷲聖


猿の神の祭事さえ、三年に一度、行われるが、ただひとり、忘れ神の、祭事だけは行われない
またこの土地の人々が決して、忘れ神の名を口にしないために、他所から来るものはその存在すら、あまり知ることはない
まさに忘れられた神だ
しかし実はその神の祭事は行われないわけではない、この土地のある限られた人々のあいだで、他所者の目にわからぬ形で、行われているという

旧封水区(伝染病や飢饉が起きたとき、まっさきに水の供給が断たれた区)は、いまの貧民街となって、治安の悪さや不衛生などの理由から、他所者が足を踏み入れないことで有名だ
この土地に長年住んでいるものでも、相当な事由がなければ、向かわない場所らしい
忘れ神の社はこの区界の中心を貫く、ワジムイの長坂の何処かにあると伝えられている

この急坂の石段や畳は、旧世に石で建造されたもので、ほとんどが苔色か染みた黒色で、その坂の頂上から下方の町並みに向けて、一直線ではなく紆余曲折する、その理由も多説あり定かではないが、使われている石も景観も坂が折れるたびに変わり、ときには複雑な分岐と見分けがつかないほど交じり合っていたり、大木の根に塞がれたり、急に道幅が無くなって、肩を 斜にしなければ通れない場所や、大の大人なら、頭を下げ、腰まで屈まなければ、くぐり抜けられないような低い洞になっている場所もある

坂道もやがて中腹にくると、繁華街の界隈と交わる、清貧も乞食も、見分けのつかない身なりで、石段の両端に踏み場がないほど、座臥している(坂のより上部に居る者が様々な意味で位が高いとも謂れているが)その光景はついに坂の終わりまで続く、何百人いや、何千人いるだろうか、しかし彼等は飢えはしない、繁華街の人々だけならず、この区までわざわざ、彼等のために食べ物や薬草や毛布を無償で与えに足を運ぶものが大勢いるという、彼等こそが、忘れ神の体現者にして、信奉の対象となるからであろう

祭事の詳しい期日や方法は、知られないが、深夜、月の無い晩だという、彼等の姿が一斉に消える日がある、その晩に、信奉者がこの坂の至るところに茣蓙を敷き、香炉を焚き、全裸で祈る姿があるというが、それもおそらく風聞にすぎない

また、彼等の遺骸が、法的な手続きを受けなくてもよいことになっていることから、他所者のなかには、祭事の晩に、彼等が死んだ同胞の亡きがらを食べているやら、繁華街の調理場で人肉を調理しているとかいった、良からぬ噂を真に受けているものも少なくはないが、彼等が人肉を食わなければならないほど、飢えたことはないし、なにより彼等の大多数は、僧の位の清貧で、身分の分からない乞食でも、忘れ神の体現者として扱われ、その程度の研識はあるはずである、よって明らかな虚偽であるだろう、本説では、彼等は死んだ同胞の亡きがらを、信奉者たちに引き渡し、引き渡された信奉者は、その遺体を、忘れ神の写し身として、特別な方法で葬るとされるが詳しいことは定かではない

しかし、忘れ神は忘れられているからこそ尊いのであり、これ以上、覚えられることを危惧し、ここで忘れ神についての記述を忘れようと思う

そして鷲の神の祭事についてであるが





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銀杏 (イチョウ)
 藤丘
 
黄金と褐色に交わり
色づく季節に
純朴な蒼い樹が両腕をひろげ
瞳を合わせた沈黙の肩を抱く

掌を差し出した上に
遠慮深げに乗った
一滴の秋に
稔りの朝を祈りながら
誕生を祝う口づけを交わす

恒星が巡る日は
辿った日々の眼差しを
ひと束に包み
結び目にゆるりと留められた想起は
羽をもつ意識の声に導かれ回帰していく

白いノートに置かれた
はじまりを紡ぎだす指に、
力強い関節に、
廉直な指針に、
名を呼ばれながら
寄り添い
明るい頬をなぞりゆく
曲線の
一葉、また一葉の、
連なりを数えて

敷き詰められていく
季節の隙間に
愛おしさを見出しては
いつの日にか
空へ還す糧とする

待ち人に
微笑みが届けられる
そのような一日に
叡知と無窮の優しさが
ひとつ見開かれていくのをみた

足元から伸びゆく
扇状の途に
朝陽は惜しみなく降り
踊り戯れながら
溢れんばかりの
銀杏が燃えている



2007/10/1
 


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無題
 ちよこ
 
「チェリィ」

小さな、寝惚けた部屋の小さな窓から、眺め続けた24時間目。
夏を捕えた柵の先、私のお庭のさくらんぼ。ミルクの匂いに誘われて、濃い色の手首にゅっと伸ばした。西からの強い誘い。春の転寝は瞬きをして、それでも手を伸ばす、太陽の方角。

私の祈りはこの硝子窓を通り越せるのかしら。嗚呼きっと、この硝子は午後の憂いで出来ていて、3時の杞憂が混入していますから、名前をつけるのは絶望的なのでしょう。

それでも。
私の庭のさくらんぼ。さあ、こっちよ。なくす前に実をつけて、小鳥の気まぐれ、青い実の声


「霞む全体像」

蕾の薄紅。マーブルの雫。破片ずつ混ざるなら、手を、手を下さい。

今この瞬間、世界ではなくなった世界。いつまでもそこは大地です。そう幼子の頭で想いつめる私には勇気がないのです。

不釣り合い、椿色。若草は今。もしも私も呼ぶのなら、唇を、唇を下さい。私は世界が消えるよりもしなやかに、あなたは右手のひとふりよりなめらかに、空海の境界で出逢うでしょう。


昔むかし、どこまでも世界はひとつでした。




あたたかくこらえた呼吸。行ってしまった魚の夢が浮かんでわたしは、まどいしれ。縁取るものもないまま耳の痛いような懐かしさが、からだをおもたくしてゆくのを待ってた。

緑の髪筋からしずくは淀みなく丁寧に脈を打つ。こぼれさす。泣かないで。わたしの土はいつも淡くて、心細い。

上手にはできないからそのままで、おだやかに髪はのびつづけます。茎と根は小指を形づくります。花芽、だけは、途方に暮れたように瞼、忘れてください。

ただ互いに、たどりつけるよう、たどりつけるよう。

融けないわたしは同じうた止まない。星の落ちる弧はあとかたもない。息を殺していて、身じろぎもせずにいて、花咲くを待つ人にはなれないのはわたし。

草の匂いにあおい肺はいっぱいになって、だけど、これっきりになら、泣いてしまう。
 
 











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雪道の四景
 田崎智基


*


小さい橋が覆われている雪に
街灯を胞子として映して
この道も失くなる向こうで交差する道路では
人の気配を感じない
自動車の車体が
音もない距離から
私の映像をなぞっている


*


川のような道から
中空を掻き毟る粉の雪が
いくつも青の糸を咲かせて
上げていく視線に粘る暗闇が
回折をグラデーションさせ
あの車庫の上部は消えている


*


通りに光は円を描いて
震えて影は場所を移動する
電飾は冷え
無いはずの音を
やはり無音として響かせる
電飾は冷える


*


トンネルのように照らされたこの通りより
脇へ入る小道の方が
漏れる光は清冽で
(どの道も渡り切れないだろうから)
踏み込む雪を
鳴らす音を
いくつも憶えておく



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