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Friend, Lover, Sister, Mother,Wife………Me.
 ホロウ


穢れた心を剥き出しにして夜歩く禍々しさだ、叫びも、威嚇も、挑発ももうそこには無く、ただただ穢れを剥き出しにして夜歩く禍々しさだ、月光は毒針のように山の向こうを突き刺している、頭上の雲は憂鬱のような限りなく黒に近い灰色のかたまりだ
飢えとか、悲嘆とか、絶望とか、願望とか、憤りとか…そんなものは全部ひっくるめて希望になるのさ、それがあるってことはきっと無いよりずっと観念的に浄化作用だ
穢れた心を剥き出しにして夜を歩く俺はそこそこの筋肉を持っているがまるで老人のように歩く事しか出来ない、疲れすぎている―ひどい疲れだ!油性のマジックインキをたらふく詰めた風船をぶつけられたみたいな気分さ―それはどこか滑稽な様相だが、笑えるからって何かが帳消しになるような優しさは無い
そんなものがぎゅう詰めになった風船は風船といえども軽いジャブのダメージぐらいはこちらに残すだろうし―当たり所が悪ければ失神するぐらいのことはするかもしれない、失神したら失禁するかもしれないし、失禁したら焦心してしまうだろう、そんな気分がどういう類のものなのかについて考えてみた事があるか?それはおぞましいからこそ滑稽に感じてしまうんだよ、あーはー、あのとき船に乗って行っちまったやつらはいったいどんな景色を見たのかね、そんなの別に俺が気にする事でも無いけど―だって俺は途中で下りてしまったんだから
情けないときに人は笑っちまうものだぜ、穢れた心を剥き出しにして夜を歩いている俺は、要するにいつでも、「一緒に乗れない自分」とやらを見つけてしまうのさ、束の間かもしれない、束の間かもしれない、束の間かもしれないよ、約束したって保証なんかしないよ、嘘にしたくないから語っておくよ…滑稽なときには人は笑ってしまうものだぜ
それにしてもどうしてこんなに俺の心は穢れてしまったんだろう?こめかみに銃口をあてて歩いてみたくなる、拳銃なんか決して手に入るはずが無いと判っているからこそこんな言い回しを使う―ほのめかすやつは絶対に的の中心を射抜く事は無い…だけどさ、俺が試みていたのはいつだってそういうことだった、今日の午後、仕事場の窓から俺は見たんだ、4月にしては寒すぎる風に桜の花びらが舞い上がって―それはまるで炎のようだった、火の粉を巻き上げながら燃え盛る炎のようだった、窓の外、それを見ていた退屈な連中がきれいね、と口々に言いながらそれを見上げていた、綺麗なもんか、綺麗なもんかよ、あれは炎だ、あれは炎なんだ、生命が燃え上がるときの、生命が燃え尽きるときのたったひとつの炎なんだ、ああ、俺の心はどうしてこんなにも穢れてしまっている…俺の心には共通言語が無い、だけどその事を悪いとは思わない、俺を穢れさせているものはきっとそういう物事の認識事項が、眼を凝らさねば見る事の出来ない内奥のディスプレイに云々と表示されるせいさ―穢れた心を剥き出しにしながら夜歩く小柄だが筋肉質の老人のようなよどんだ瞳のこの俺は、今夜ひょんなことで新しい見世物になる決意をした、すなわち
どこかしら俺だって希望をひけらかしたがってるってわけさ、けれど
それにはコツがいるぜ、それにはちょっとした感覚が必要なんだ、判るだろ―時によっては何回だって死んでみせなくっちゃあいけないぜ―儚いなんて!儚いなんて笑わせんなよ、あれは毎年咲いては散っているんだぜ…穢れた心、穢れた心、穢れた心は
裏を突っついては真実のような顔をするのが好き、だけど
加工しないまま喋ってるやつらよりはずっと穢れてない、かもしれない(ほらね昨日と今とでもう違う)桜を見たんだ、風に舞い上がって…まるで燃え盛る炎のようだった、なにが言いたいか判るか、俺が何を言いたがってるか判るかい?桜だって嘘をついてやがるのさ、あいつはとんでもないポエジーだ、雲は途切れたりしなかった、太陽よりも眩さを語ることの出来る月光は今宵俺を照らすようなドラマチックなバックグラウンドを奏でたりはしなかった―ただただ限りなく黒に近い灰色のままそこにいて―そして俺は穢れた心を剥き出しのまま歩いていて、希望について散々遠い距離を語ったその舌の先でまた新しい見世物になる決心をした―


もちろんこれは比喩に過ぎない
俺はいくつも嘘をついている
だけど炎のように舞い上がる桜を仕事場の窓から見たときに―誘われたことを思い出したのさ、それはちょっとしたバックグラウンドだったのかもね




約束なんて
しないよ


画像
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かさをさしたねこ
 藤井柚子
 

ぽろぽろ雨がふってきたね
わたし にんしんしたみたい あなたの 「コ」 ね あなた 濡れてるわ おなか触る? にんしんしてるの あなたの子 
あなたの あなたの あなた
ふふ みて ほら あそこ ひとり縄跳びしてるあの子(ねこ) きっと友達がいないんだよ 濡れながら縄跳びしてる
さびしいね/さびしいよ
ね うれし ? うれしいよね あなたに似てきっと人気者になれると思うの ね ね
濡れてるよ ほら こっちにおいでよ あなたも16歳だから結婚はできないけど働いてくれるよね わたしは家事をがんばるわ 勿論育児もよ がんばるわ がんばる
(ききました?妊娠ですって
(まだ16なのにねえ
(将来のこと考えてるのかしら
しょーらい しょーらい しょーらい 黒い花が咲きました(あなたのこころに!) 握り締めると ぐちゃり と 潰れるわ 潰す? わたしたちのあかちゃんも つぶす?つぶすの? ねえ つぶすの? つぶしちゃうの?」

黒い猫をみましたか
あれは不吉です
どう不吉なのでしょう
とにかく不吉なのです
では殺しましょうか
認められないあかちゃんみたく
ぐしゃっと
不吉なのはきらいですから
育てられないあかちゃんとか?
育てられないあかちゃん
認められないあかちゃん
あかちゃんあかちゃん
泣き声がきこえませんか
にゃあんにゃあにゃあ
ああんあんあんああん
ほら 子供のなきこえが
ねえねえ ねえ

「ねえってば 何時まで濡れてるの?ばっかみたいだよ 縄跳びしてる子も(くろい くろ くろ)もう帰ったし(最初からいたのかどうか ねこ)今日何の日か知ってる?教えてあげるね
エイプリルフール
ウソ ゼンブ ウソ
つまんないの
つまんない/つまんないね
じゃあ ばいばい
あなたにはエイプリルフールですむけどこれ読んだ人には柚子はウソツキになっちゃうかもしれないね ね ね 困ったなァ♪
柚子ちゃんッ(笑)




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花占い
 腰越広茂

遠い
いつになく
ほそく笑む
青ざめている唇に
小指で すっと紅をさす
星は 、
籠の小鳥と目が合った
さみしい というわけではないけれど
痛むのはなぜ
こんなにも嬉しい朝なのに震えているのはなぜ
小鳥が、小鳥である理由
それを認めずにはいられない
ひとりぼっち
言ってしまえば
わたしは、いつまでもわたし
群生する朝に
星は 、
供えられた花で占いをしながら
朝日にそよぐ
熱く 熱く
花弁を うすくかむ
めぐりあった(自身)
鏡に映っている血のにじみ
いつになく遠い味がする
星が 、「来る」




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鉄塔
 モビカ

わたしたちは倒れないように
枯れた秋草を紡いだ糸で
ほっそりと互いを繋いだけれど
それぞれの震えは
降りつもるしんとした風がさらっていき
もの言わぬ夜ばかり露を結んでは
足先を濡らす

街灯のしたには途方に暮れた幽霊が
ひとりずつ立ち尽くし
輪郭を思い出そうとしてはこぼしつづけていた
浮かび上がる思考は
穿たれた瞳孔からかぼそい唐草をとりとめもなく広げて
薄ら暗い階段の物語は辿りつく気配を消した

だれかの吹く切れ切れの口笛に目を閉じる
まるまった小鳥の形をしたさびしさ
その死骸を食べて影を膨らしたわたしたちは
星へと伸びていく夢を見ながらしずかに痩せていく
乾いたあなたの灰色の頬は
いずれ灰色の四肢とともに走り去るだろう
心臓ばかりをしくしくと
赤く発光させる尖った獣となって

わたしは手渡したい一滴を忘れてしまいたかった
だれもいない
黒く燃える森へと糸は続き
夜はあてもなく燻されている
点々と横たわる鳥達は濡れた目にわたしを映しても
やさしく口を噤んだままだった




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週末はやりきれなくて
 熊谷里美
 
(1)
油っこい金曜日の夜を
一気に流し込む
それは版画の中の雨で
強く強くまっすぐに
地面に打ちつける
定規の雨
ロシアの彼女がその線に
そっと触れれば
打ち解けた彫刻刀は
優しくわたしを削っていく
そうして美しい胃の形へ
気持ちは収まっていくのだった

(2)
欠点だらけの砂糖を
あまりに作りすぎてしまったから
金曜日、珈琲の川に流しに行ったよ
本当はひとつぶひとつぶに
細かく長い名前が付いていたんだけれど
もう昔のことすぎちゃって
覚えていないの
そう言ったら
ロシアの彼女は
じゃあ珈琲を飲むときに
またそれは思い出せるのね
と、小さく笑うのだった

(3)
安いパンプスで
駅の階段を毎日歩くから
いつしか金曜日には
ヒールの高さがだいぶすり減っていた
すべりやすくなっていた心と
ひっきりなしにやってくる雨が
わたしをトイレへと駆り立てた
白い泡がぶくぶくと浮かんだから
少しは糖分を吐き出せたみたい
良かった
また過ちを犯すところでした

(4)
三匹のらくだは北へ向かっていた
確実に迫り来る金曜日から
逃れるために
しかし時々聴こえる
油っこいボンゴレの話し声が
彼らの瞳を悲しくさせた
その手に持っているアルバムの名前は
シュガーフィルムズ
雨の日の思い出ばかりを集めた
輝いたはずの日々
いつしからくだは一匹一匹と消え
街の明かりへと姿を変えた
土曜日まであと2時間
というところまで来ていた

(5)
わたしは珈琲が飲めない
だから過去のことは
思い出せなくて済んだ
何度金曜日が訪れても
今日のことは忘れてしまえるのだろう
らくだに乗っていた記憶も
駅の掃除係に砂ごと払われてしまった
かばんの中を見てみれば
喫茶店でもらった砂糖だけ
砂の代わりにと
店主が気遣いで入れてくれたものだった
アルバムには
母国に帰ったはずの彼女
きっとカメラは壊れている
本当のことなど
何一つ写ってはいなかったから


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歌を
 フユナ
 

大海に
身を投じた
あなたを思って
歌を


潮の匂い
微かに
ここは池
大海という名前の
そう思って
歌を


手が届きそうな
細い腕が
ぎこちなく這っていく
うなぞこ
むかしのしたいと
むかしのざいほう
交互に
それに出会いながら
あなたはいく


時に
歌を


ざわめき
光も見え
闇も見える
瞳は
だからきれいだ


みかづきの
爪の中
泥があり
あたしはそれを
ほろいたい


大海に
深すぎる大海に
身を投じたあなたを思って
歌を


ここは池
大海という名前の池
はてはある
どんな深みにも と


がけのうえ
大海に身を投じる
あたしを思って
歌を


光も見え
闇も見える
この瞳は
だからきれいだ

 


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日曜日
 吉田群青
 
空が降参の旗みたいな色をして
少し冷たくわらっている
午後

わたしは体を脱ぎ捨てて
悄然とハンガーにぶらさがっている
風に吹かれて柔軟剤が
かすかに香って消えてゆく

君は雨だれのような音を立てて
古い哲学書をめくっては
時折思い出したかのように
ページをちぎっては口に運び
がりがりと咀嚼している

そうしてわたしたちは
だんだん別のものになってゆくようだ

こわいね
と一言つぶやくと
君はすっかり別人みたいな顔をして
立ち上がりわたしを抱きしめた
そうして
まだ乾いていないね
と言うと
部屋の隅に脱ぎ捨ててあったわたしの体を
きちきちと畳んで小脇に抱え
どこか遠くへ行ってしまった


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掠り傷
 岸
 
泣いて欲しい、良いから気づき次第
能動的ではなく言ったもの勝ちという価値
大切に育てた失敗作をつむじから爪先まで見て何を思いますか
我慢して笑顔で居られるなら空だって青いでしょうよ
円滑が好きなのだものね
まるまる肥え太った君らはもう解体されないし
貼っておけば治るなんて現代的先進的なものでもない
推し量られる様なことは言うものじゃないよ
浅はかなそれはそれで確かに見いだせる
だから泣いて欲しい、良いから見える範囲で

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飛行船
 ミゼット

青緑に光る草を縫って
みつけたわ
古い手紙

スィルからホレィシオへ

飛行船が海を飲み込む!

光の梯子の射すところ
あれは鯨の骨
かき消されて燃える森
針の在り処
カーテンが鳥になる

箱の中に
隠された影

ホレィシオ、謎だらけ

スィル、見つからない

積み上げたら崩して
飴玉の塔
空には届かない
大きな鳥が通るから
頭を庇って蹲る

金曜日には
決まって誰かがいない

古い手紙
祈りの過程
空白
空白
灰になる


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 ミゼット

言えない様なことがあって
ちいさな石を一つ、盗んだ

寂しいことがあって
一つ、花を盗んだ

石は引き出しの中

花は枕元

罰が当たればいい、
罰が当たればいいと髪を洗う

私はどこもかしこも汚いのだから
たくさん水で流さなきゃいけない

電話の音に竦む

電気をつけて
夜中だけどたくさん騒いで
誰か
罰が当たればいいと思う

ゆるされて
しまったら
今度こそ
ひとりになったのがわかるから
盗む



せめて
覚えていられるように
明け方まで
手紙を書いた


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