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生物図鑑
 狩心


目次

【 電流の魚 】
【 蜂の巣ピーカー 】
【 細胞の蛇 】
【 卵形UFO 】
【 太陽の網 】
【 シンデレラ・ワイン 】
【 花モグラ 】
【 点々バラバラの地球 】
【 ゴールライン 】
【 血管の白鳥 】

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【 電流の魚 】

パソコンの液晶画面に指を突っ込むと、水のように冷たく柔らかい感触に驚く
僕の指を餌だと勘違いした電流の魚が、モールス信号のように僕の指を突付く
【「(『〔《[{<(∵)>}]》〕』)」】ポヨポヨ〜
指で水を掻き回して渦巻を作る、@@@、メ、メー! ぴぎぃ!
メーメー地獄の渦巻に千切れていく、電源切れの魚たち! じゃなかった、電流、電流で、
みんな町の中心に集まって、ぜんまい仕掛けの寝ぼけロボット、渦巻の中心でしょ_?
スポンッと落ちたor消えた、肉にされたOFF! 会?・・・
んで、遊び人は指を回し続ける、呪文を唱えるように、メ・・・
トロノームの指先に、チクタクチクタク小さな炎がシュポッと点いて、メラ・・・
メェメェルルルぅぅぅーーの渦巻が、大きくなって画面全体に及ぶ! 貝?
殻、集めた私の部屋も、ぐるぐると回る、細波のボクサーよ、ぐるぐる回れ
るーるーるるるr−このまま何処かにタイムトラベルしちゃうかも! アアンッ ☆
タの指先のメラが消えたらヒャド、そこでおしまい、細波のボクサーも穴に落ちた
そこは硬く冷たい床でヒャド、水がない、水がない、サ、サ、
魚たちはピクリとも動かず、横になってる、ボクも横になっているサメ、
メェメェ羊、たちの沈黙の世界が90℃曲がる、連続殺人の音、娼婦の悲劇
ヒャドの床が垂直の壁になる? 落ちる魚たちとボクサー、メ?
細波のボクサーの体に電流が走る、パンチパンチ、アアンッ、
ヒャドの体にメラの鱗が生え始める温度差MAXの泳ぐ魚たちとボクさ!
頭、背中、お尻、ヒレヒレヒレ、生えちゃったボクも、電流の魚
【「(『〔《[{<(∵)>}]》〕』)」】ポヨポヨ〜

【 蜂の巣ピーカー 】

「やっぱり、あなたが異常でした」
その声が聞こえてきたのはスピーカー
無数の黒い穴が開いたスピーカー
蜂の巣のようにブンブンと音を立てる、ブンブン、
でもね・穴からは一匹も蜂が出てこないの・・・穴を突付いてみる・・・
「蜂蜜ウィルスが検出されました!」
プーさんのおかげ!
「あるーひ、もりのなっか、くまさんに、であぁた」
その声が聞こえてきたのは蜂の巣ピーカー
無数の穴から、プーさんがわんさか出てくる、じゃなかった、蜂、
ブン、ブン、ブブ、ブン、ブン、ブ、ブン、
ブブブブ、ブン、ブン、ブン、ブ、ブン、
§§§§§§§§§§§§§§§§§§§ ← 蜂san
【∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵】 ← 蜂の巣ピーカーsan
無数の穴から、発光していく原色カラーが、
ドロリと流れ巣、ドロリと流れ巣、
蜂の巣ピーカー、蜂の巣ピーカー、
ピーカァ、ピーカァ、ピーカァ、ピーカァ、
ジュルジュルジュルジュル、
ピーカァ、ピーカァ、ピーカァ、ピーカァ、チュウ!
ジュルジュルジュルジュル、ジュルジュルジュルジュル、
変態ピ家中、変態ピ家中、
発光していく床と壁 、
抵抗していく体と空気 、
発光していく体と空気 、
抵抗していく床と壁 、

【 細胞の蛇 】

長い間
体に巻き付いていた蛇のような縄状のもの
それが解けて、何処か遠くへ行ってしまった
今でもそれがまだ
巻き付いている感覚に襲われる
体は今を生きているのに
細胞の中に過去を留めているのだ
細胞に住み着いた蛇

【 卵形UFO 】

見るだけで、関わろうとしない
考えるだけで、何かしようとは思わない
あなたは誰にも確認されない
宇宙から舞い降りた欲望を貪る傍観者
子供のままで大人になった
卵形のUFO

【 太陽の網 】

太陽の網が僕を捕まえる
僕を引っ張る、僕を引っ張る、あの太陽の下まで
引っ張られてしまう、焼け死んじゃうよ、日焼け止めクリーム塗らないと・・・
お肌のエチケットは乙女の僕・乳首からは牛乳が出るよ
あの太陽は虚構、それにとろけてしまう自分が
恥ずかしいよ、日焼け止めクリーム塗らないと・・・

【 シンデレラ・ワイン 】

シンデレラ・ワイン
しみったれたワイン
いのべーしょんイノベーション、ますたーべーしょん
時代劇を見過ぎた、シンデレラ・ワイン、カチンと鳴らして
二人で誕生日、お祝いのキス。
シンデレラ・ワイン、シンデレラ・ワイン、
地上の見えない高層ビルで、夜景を見ながら、あなたと二人
時代劇を見過ぎた、ますたーべーしょん
いのべーしょんの中に、しみったれたワイン

【 花モグラ 】

花モグラの鼻の上には一輪の花が咲いていました
花は地上にパッと咲いて、モグラは地下に潜ったままで
お隣さんがその花に
「おはよう、おはよう」声かける
「ふわわわぁ〜〜」って欠伸をします
お隣さんがその花に
「ありがとう」と、声かける
「気にしないで☆」と返事をします
感情咲いた、花の上、モグラは地下で、眠ってる
モグラの鼻水 垂れる時
それは 思考に負けた時
モグラの鼻水 垂れる時
誰も知らない地下の出来事

【 点々バラバラの地球 】

ハモン、ハモン、ハモン、ハミング
わたしのくちびる、かんだよあなた
ハモン、ハモン、ハミング
たくさんの点が、口から零れて、零れて
何も喋れなくなった、心の言葉
口は開けっ放し、ハモン、ハモン、ハミング
誘導尋問されて、点々バラバラの地球、
動物園に、わたしだけの世界
セメントで固められた動物
今の標本を作ってみよう、
ハモン、広がる、
ずっと、続く

【 ゴールライン 】

ゴールラインがわたしを待ってる
遠ざかるゴールライン
ゴールラインが待ってるはずなのに
遠ざかるゴールライン
待って!
いや、待たないで。
もっと、
遠ざかって、

【 血管の白鳥 】

白鳥が血管の中を物凄いスピードで飛んでいく
内側を傷つけながら、羽を閉じた姿勢で
レーダーに見つからないステルス戦闘機みたいに
血管の中を物凄いスピードで飛んでく
カッターナイフだ
生まれたての銀河だ
白鳥座の星が、キラキラと光って
硬い三角形の小さな箱の中に落ちていく
さよなら、さよなら、わたしだけの世界




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つたう かたち
 木立 悟



誰かの何かになれないと知り
片方を閉じ星を見つめた
道のむこうの道を見た
風はひと葉にひとつあり
ひたいの上で水になった
指のはざまで光になった


生まれたばかりの宙宇の
そのままをわたる色
歩きつづける影の柱
人の柱 羽の柱
立ちつくすかたちへ
あつまるたましい


ついばみにくる
すべての生きものが
ついばみにくる
むずがゆく生まれる笑みさえも
小さな口でついばみにくる
長い雨のあと
葉と羽と光と鱗
唱うものの口もと
ふせられたみどり
ついばみにくる
ついばみにくる


風とくちびるの震えのはざまに
挿し入れられる手の指が
指以外のかたちにほどけかけ
咽を鎖骨を流れても
流れても流れてもなお指のまま
胸へ下へ 下へ到く
火照りつづける場所へと到く


蛍光の眼が
閉じたまま闇に描く線
短く足りない 音の飛跡
とどめるものは無く
さざめくものは這い
午後から夜への遅い虹
途切れ途切れにつづく虹


空のなかの水音が
遠くに近くに見えつづけ
雨とは別に在りつづける
焼けるような片方を閉じ
水のなかの邪視 門を伝う色
かたちのむこうのかたちから
降りそそぐ音を見つめている



















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脈動(RE-BIRTH)
 ホロウ







茎を薙ぐ鎌のような速い内臓の呻き
傷みと呼ぶには無自覚に過ぎて
骨に刻まれた記録みたい
袋小路の高いブロック塀を死に物狂いで超えたら
揺るぎないかに見えた路面は底なしの沼だった(人食いのような擬態、そして吸引)
人食いのような擬態、そして吸引―圧迫
心臓を起点に
血液が逆流を起こし始める、ああ、そのときにおいてなお
なおも他人事の阻まれた魂
思い知らずのうちに仰ぎ見た太陽の
なんと、なんと、群青色だったことか!
穢れもまた生命の喜悦である事を知るがため、知るがために
瞬きほどの行にすべてが見えたらと焦がれる
耳をがれた兎の
存在を問うその眼の赤みのようななんという火
天秤ばかりが真一文字に並んだそのときに
骸同然の肢体には仄かに電流が走るのだ
声もなく、ただ、声もなく、ただ
歪み、淀み、穢れ、失い、なお
水晶体の奥の奥は
まだひかりの見つけ方を知っている、細かに絞りを調節しながら
暗がりの中に臭う一点を探している
世はこれすべておぞましき飢餓
着飾ってしまうには遅過ぎるみたい
痛い、暗い、辛い、不意に迷い込むそれらは
その胸中にまだ希望が
朝露のように転がっていればこそ
強い雨よ降れ
呪いのように濡れる事が出来れば
衣服の重みとともに知ることがある、ああ、触れてこそ
触れてこそそれは知と
肌に刻まれるのではないか?
胸倉を激しく掴んで
引きちぎらんばかりに振り回すと
逆流していた血液が反転を始める(なぜだ、それは利口な蛇のようだ)
その胸中に、その胸中にまだ希望が
朝露のように転がっていればこそ!認知せずとも言葉は生まれる
傷みすら感じさせぬ
薄い刃のようなまたとない綴りが欲しい
(それを欲することは過ちの極みであるのだろうか?)
太陽が
群青色から血の色へ
胸を震わせるようなただ紅い血液の色味へ、眼は
眼をそれを深く知る
だからこそ
ひかりは求められるのだ、ひかりは
こころの中で赤い血流となり肉体を振動させる―そのときの音を
そのときの音を詩と呼び捨てるのは
まごうことなき穢れなのか!!
穢れた詩になりたい
穢れた詩になって
本物の喜悦をものどもの眼前に
ものどもの眼前にしかりと晒したいのだ
どれほどのことを文節は排除してきたのか知っているかと
どれほどのことを蓄積が揶揄してきたのか知っているのかと
愛したものは
たしかに愛しくその胸にふれたものなのかと
神は愛を知ることはない
なぜならそれは穢れあってのものだからだ
言葉が神のものだというなら
俺は神を殺すために言葉を紡ぐ百足となろう
地に居てこそ、地に居てこそ…地に居てこその傷みを、地に居てこその思慕を
存在として投げ出すために言葉を紡ごう
悟りなどあるべきではない
ひととしての
ひととしてのこころが肉体を超えることはない
肉体と…肉体とともに超えること、それこそが
あらゆる行の奥にあるもの―そうではないのか!?
強い雨よ降れ、強い雨よ…歪み、淀み、穢れ、失い、なお、
水晶体の奥の奥はまだひかりの見つけ方を知っている
肉体よ、お前とともに行こう
肉体よ、お前とともに歩もう
こころと身体をひとつの名前で呼べるそのときが来たら
俺はすべてをこの闇に晒す事が出来るだろう
肉体よ、肉体よ、肉体よ、肉体よ
指先を深く入れて血液の温度を知れ、それは喜悦だ
大蛇のように暴れるお前の欲望は
飛ばし方次第では優美な絵画となる
指先を深く入れて血液の温度を知れ
穢れと祝福を抱いて…穢れと祝福を抱いてひとは産まれ落ちるのだ
それをなんと呼ぼう
それをなんと呼ぼう!
底なし沼の深いところに
風に揺れるような美しい百合を見つけた
体躯をひねってゆっくりとそれにたどり着き
慈しむように手を伸ばすと
濡れためしべが蜜を放ち、深遠に…
深遠に浸透して
俺は
それからひかりを、まばゆいひかりを…
見て…
それから……………………












脈動が……………………………………………







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空蝉
 ちよこ

あまりにも立ち昇る夜、私たちは私たちを忘れて、ほんとうにたくさんあると思っていたこころごとあの影を燃やした。私たち、たったひとつの声だけを持ち、せめて枯れるまで鳴いていたいと思っていて、ほら、そこらじゅうの木の葉があちこちじゅ、と音をつくればひとつ、最後と身体中軋ませたこと。ただあなたの影だけは丁寧に、足先から淡い灰白をなぞっていて、あくる日もあくる日も燃えていた。乗り出すように世界をみた。あなた、あの耳ばかりをつんざくような色を覚えていて、あなた、ただ知っていた証し。わたし、苦しいくらい押し殺した匂いを覚えていて、それさえ確かな、知っていた証し。いつか、大切なものにであったりして、でもわたし、きっと分からなくて、重さをなくし、触れられる形だけを遺すそのころなら抱き締める、右手から恐る恐る。あの、いたる木々が火花のからからと昇るを映した夜、ひとびとは焦げた匂いを帯び、額に手を添え足を折って、ふたたび土の中で誰かをまちつづける。少しだけ、目の前にちかちかと降り積もる私たちをみる。




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操縦不能
 狩心


僕には ヒューマンストーリーが足りない
僕には ラブコメディが足りない
僕には サスペンスとホラーとアクションに彩られた SFしか残されていない

私はなぜ 氷のように固まる事が出来ないのか
私はなぜ 水のように流れる事が出来ないのか
私はなぜ 水蒸気のように姿を消して・バラバラに拡散する事が出来ないのか

氷(H2O)→ 水(H2O)→ 水蒸気(H2O)
氷(H2O)← 水(H2O)← 水蒸気(H2O)
なぜ、私は化学式で表す事が出来ないのか

血 滴る 生物は 泣く 涙  燃える 炎

血 滴る
血が滴っているので 私は滴る事が出来ない
涙 泣く
涙が泣いているので 私は泣く事が出来ない
炎 燃える
炎が燃えているので 私は燃える事が出来ない

役割は常に私の外側に存在しているので
私だけが置いてきぼりを食う事になる
私はそんな肉体である事に憤りを感じながら
操縦席のレバーに手を掛ける
そのロボットは
右手と左手の長さが違うので 物を運ぶのが困難である 
右足と左足の長さが違うので 体勢を崩すのである
右足と左足が張り付き 一本の足になり 両手を広げながら
案山子のように飛んで見せる スプリングマシーンである
右顔面と左顔面が かなりずれているので
頭の断面からは 脳味噌が溢れ出し
顎の断面からは 唾液が流れ出すのである
そして ありとあらゆる生殖器が 大きな口を開き
それらを噛み砕き 飲み込み 消化し 排泄し 原形も留めない メリーゴーランドである
上半身が常に後ろ向きで 下半身が常に前向きなので
赤ちゃんが誕生する「オギャア」という奇声と共に
へその緒の辺りから亀裂が生じ お母さんの名前を呼び始めるのである
右手が平泳ぎからクロールへ クロールからバタフライへ そしてついには 背泳ぎに進化した時に
左手がストレス性から来る蕁麻疹とアトピー性皮膚炎で 同時に発生する自爆テロである
右足がひとりでスキップをしたがり
左足がみんなでサッカーをしたがるので
他者も不在・自己も不在という、奈落の底へ滑り落ちるのである
右半身と左半身が かなりずれ始めて
一人の人間が二人になろうとするので 死んでしまうのである
上瞼と下瞼が夢の中で恋をしたので 目が安らかに閉じるのである
心は肉体の奴隷ではないのだから
すでにドアが閉じているのに さらにドアを閉じるのである
ドアを閉じている最中に ドアを開くのである
すでに靴を履いているに さらに靴を履くのである
靴を履いている最中に パンツを脱ぎ捨てるのである
パンツの匂いを勢いよく吸い込んで 自らの存在を確認するのである
パンツの匂いを勢いよく吐き出して 少しだけ世界が広がるのである

右手と左足が入れ替わり
左手と右足が入れ替わる

奇形人間は空中で爆発する  
破裂した私からは美しい血しぶき・
                   ・・・
                 ・・・・・・・
              ・・・・・・・・・・・・・・・
                 ・・・・・・・
                   ・・・
                    ・
                    霧のように拡散
                    雫の形状で
                    重力の方向へ
                    したたり
                    したたり かたまる
                    血の雨を浴びる子供たちに懺悔
                    拡散したものたちが
                    世界に浸透する欠片

                    肉体は肉体であるが為に 私には成れない
                    心は心であるが為に 私には成れない
                    肉体は肉体のみで独立し 私から旅立て
                    心は心のみで独立し 私から旅立て
                    残された私は 存在しない存在として 存在する
                    残されたものは 私が私ではないという 私の証
                    ・
                   ・・・
                 ・・・・・・・
              ・・・・・・・・・・・・・・・
                 ・・・・・・・
                   ・・・
                    ・
そしてもし僕に ヒューマンストーリーが残されているとしたら
そしてもし僕に ラブコメディが残されているとしたら それは
サスペンスとホラーとアクションに彩られた SFの中で・・・

(血は流れたか?それはいつ?そしてどれぐらい流れた?何の為に?)
(涙は流れたか?それはいつ?そしてどれぐらい流れた?何の為に?)
(炎は流れるものか?炎が流れないものだとしたら、それはなぜか)
(血は固まったか?それはいつ?そしてどれぐらい固まった?何の為に?)
(涙は固まったか?それはいつ?そしてどれぐらい固まった?何の為に?)
(炎は固まるものか?炎が固まらないものだとしたら、それはなぜか)



炎は エネルギーである
炎そのものは 無色無形
炎の色と形は 何が燃焼するか。によって決定される 炎は

自らを、決定しない




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火災現場からのレポート
 狩心


ニュースでやってた
どうやら、隕石が衝突したらしい
隕石の中からはたぶんエイリアンが出てくるはずだよ
あーあーあー、マイクマイク、テストテスト
壊れた腕時計を見ると、時刻は午前二時(深夜)、しかし!
私の意識は、暗闇が影の中にひっそりと身を潜めた明け方の朝なので、服を全部脱ぐ
風呂場
あーあ、いい湯だな〜、梅酒のんで〜、生ハム&チーズ、けけけ、の最中にシャワーの穴から、誰かの悲鳴が聞こえてきた、
シャワーを受話器のようにして、もしもし、もしもし、大丈夫ですか?、と語りかけてみたが、返答がない、
鏡に映る自分の姿を見て、いや、むしろ、俺が大丈夫か?、と自分を疑った、
丸裸でこんな
303号室
日当たりは抜群なんだけど それはむしろ 吸血鬼にとっては不都合で
左右対称の部屋 美しすぎて 逆に疲れてくるので ここから抜け出す事にする
腕時計が チッチ チッチ 舌打ちして 憂鬱なムード
そんな空間を漂い 時間に囲まれる前に 二足歩行で ここから抜け出そう
壁も天井も床もミシミシ いっている (いや、四足歩行でもいいけど)
私の影の足跡もミシミシ いっている (いや、二人三脚でもいいけど)
それに加えて今日は、プスプス いっている
ドアノブが熱い、皮膚が付着して、片手が焼け爛れて、
じゅーじゅー、じゅーじゅー、ぎゃーぎゃー、ぎゃーぎゃー、
利き腕が機能しなくなってもいいや、ここから抜け出そう!
廊下
切断された利き腕から、血がポタリポタリとリズムよく落下するんですけど、
火事を知らせる緊急警報がピーピーうるさいので、
部屋の前のドアには、住人たちの削ぎ落とされた耳が転がっているので、
ああ、そうですか、そういう事ですかと、全て一人で納得する廊下
そして そこから見える沢山の部屋の中はー
炎の渦ですー 温度は最悪に上昇 地獄ですかここは。
生身の体を持った者たちがキャーキャー言いながら焼失していく中で
機械化された者たちがウィーンウィーン言いながら余裕かまして
テレビを見たり、ゲームをしたり、音楽を聴きながら踊っている、ポテトチップス
袋詰で売られている、情報の世界で首を180度うしろにひん曲げて笑顔
妖怪のように舌を伸ばして、口だけで呼吸、舌が体に絡みつく
体がネジのようにねじれ始めて、建物の骨組みに打ち付けられる
トンカチの音と共に裁判にかけられて、自殺未遂容疑で実刑判決、キリストの張り付け
火はどんどんと燃え広がっていく廊下 そしてそこにある沢山の部屋
丸焼けになった死体がどんどん出現してきて 廊下 はきだめになる
食欲をそそるステーキの匂いが充満し始める 廊下 はきだめになる
ナイフで切られた肉の断面は丁度いい赤さで 一時的な生の躍動かな? 幻覚です
得体の知れない変な汁がじゅるじゅる出てる 老化現象かも しれません
滴る液体を全て吸い尽くす吸血鬼のおっさんは私です 光速で若返ります
302号室
隣の人は生きているのか
インターフォンを鳴らす
返事さえ返ってこない
立ち尽くす私の顔は 顔面漂白剤 立ち尽くす私の顔は 顔面漂白剤 撮影中 生本番!
顔の皮膚がボロボロと剥がれ落ちる ヤバイ ワタシガ エイリアンダト バレテシマウ
身近な人間同士で言葉が通じない 身近な人間同士でエイリアンごっこ 身近な人間同士で極秘スパイ大作戦 身近な人間同士で政治的な侵略
非常階段
上か下か迷うけど
とりあえずのぼれ
それが人だ
助かるか助からないか
そんなのは二の次だ
とりあえずのぼれ
なんていう声が聞こえてきて、半ば強制的に体を動かしました、先生! 竹槍を持ってぼくぁ、宇宙人に立ち向かいます、ぼくぁヒーローなんです、先生、ヒーローは世界と愛する人とどっちを助けるんですか? 愛する人よりも世界の方が大切ですか? せんせい・・・走って逃げた ばかやろう 頼りにならない先生 でも ありがとう!
屋上
満天の星空だ イェーイ ☆ しかし誰もいない、うそーん
みんな逃げるのに精一杯なんだろう
リモコンボタンでポチッと夕焼けに変更 ポチッと雨上がりの快晴で虹が架かる!
ポチッと南国の浜辺 ポチッと火星人襲来 ポチッと地球の危機に変更 そして、
落下してくる隕石たちが、この町に降り注ぎ、建物を破壊し、火の手を揚げ始める
ヘリポート
防火服を着た連中が空から降ってくる
手には銃を持っていて 射殺
顔は一様にガスマスクで 大気汚染
戦争でも始めるつもりだろうか
真上を轟音と共に戦闘機が走り抜けていき
ミサイルを発射して隕石を粉々に粉砕している 干渉の嵐
飛び散った破片が雨となって
町の舗装された道路に突き刺さっていく 感傷の嵐
それを踏み潰していく戦車に乗っているのは赤ちゃん
親を探しに遥か外国まで行くその姿は、熱狂的な支持を受けてアニメ化に至る
エレベーター
私は降りていく
自動で動かないエレベーターを手動で動かせ
屋上から、9、8、7、6、5、エレベーターを止めて誤解で降りろ
誤解の廊下は目が痛くなる位、煙が充満しているので
コミュニケーションはいつも誤解から始まる
506号室
人の声がする
ドアを開けたらバックドラフトで全身火だるま
私は黒い影
悪魔の化身
血も肉もない骸骨戦士
私の姿を見て
小さな子供は悲鳴を上げながら
ベランダから身を投げた
そんなつもりじゃなかった
壁をすり抜けて
505号室
有毒ガスを吸い込んで
体、動かなくなった老人と
手を繋いで
螺旋階段
スキップで駆け下りる
言葉なんていらない
二人は災害の中
共通の体験
老人と合体して
あなたの死に耳を傾ける
104号室 204号室 304号室
ドアのない部屋もあるらしい
私は黒い影
悪魔の化身
壁をすり抜けて
404号室 504号室 604号室
終わらないアパートで
存在しない部屋を求めて

人々は移動する 火災現場からのレポート




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理由
 たもつ
 
 
ポケットが汚れ始めている
待合室は朝から眠たい
何かの整備工の人が
口を動かしている
語りかけるように
沈黙を選ぶ言葉があった
目を閉じようとすると
少しばらばらになる
水が優しい濃度の塩分を含み
つなぎとめている
空の遠いところを
爆撃機が行く
守ることではなく
守られることに慣れてしまった
僕たちは何度も殺しあい
笑いあい、そしてまだ
愛していたのだ
 
 

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