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ゼロの射程
 狩心


おれは行き止まりでウロウロする犬「わをん」だった
おれは花の上の辺りに三つの点々とした傷がほしかったので
自らそこを爪で傷付けた おらぁ! オラオラオラオラオラァァ!
ジョジョじゃない・・・むしろ、ジョニ・ミッチェルだ 妖精の歌声だ
お花畑で流れ出す俺の血は
オナニー専用のティッシュで何度も吸い込んだ
シャア専用の赤いザクとは違う! ザクとは違うのだよ!グフは!
ミミズのような無知を持っている
なれろー! Not at all
吐く息 索敵 上下左右12ヘックスまでは俺の射程内だ
そこら辺に拡散メガ粒子砲を打ち込んでやる 原爆はまったく酷い話だった
爆撃の後
そこから湧き出てくる言葉たち
それを凝視しようとしても
だだっ広い太平洋に浮遊するクラゲのようなおれ達には荷が重すぎた
燃えカスの亡霊のようにゆらりゆらりしていて どんぶらこ 桃太郎の絵本
焦点が定まらない! 精神コマンド「ひらめき」のせいだ
止め処ないなぁ〜もぅ 仕方ねぇ「必中」でも付けるか
とか言ってる間に
何の文字かも分からぬまま
そいつらは! 立ち消えてしまった!!!
この暑い夏の湿気の中に・・・逃げ足だけは速いんだねぇ・・・おれ達も歴史も

Not at all
ボーボーと燃える
誰かの残像と腰の砕けた日常! もう年ですねぇ 生年月日が西暦だなんてふざけてる!
カツカツと階段を上る! 全ての電車は人身事故で止まったままだ
ピピー!
誰かが死んだらしい サッカーの
タイムアップの音と共に 日本代表は決定力不足で試合に勝てない
それは他人か
それともおれ達自身か そうか
カラスの鳴き声が聞こえて おれの頭上に小石を落とした
めるへん 見たままで 起きたのは昼の12時だった

12ヘックス
そこに戻ろうとした世界が広がっていた
東京特許許可局 少し外れた田舎とも都会とも癒えない場所で
異空間大作戦が ジョン・F・ケネディ暗殺と共に
大きく口を開いていた! 蟹股のルーズソックス ありがとう!
引きこもり ガバガバする音と
流れる汗 流れる肉体 流れる人込みの
三弦ギターが!
おれの米神を刺激した アチョー!中国雑技団 一生懸命スーパーのレジを打つ!日々!
おれの計算は間違っていないが、答えは絶対に出ない 円周率のように
小数点以下を弾き出すだけだ
短歌で運ばれて闇の中に消える少女
漫画喫茶の辺りで途方に暮れて
インターネェェェーーット! チェスト!
という文字が巨大化する 明日の荒野で
明滅するのはボクら
救急車の運転手の手には
凶器と見られるフルーツナイフが握られていた

茹で上がる
蕎麦の水を切る音 ざんざかざんざか
網目の間からするりとすり抜けるということ
おれたちにも出来るだろうか
この蒸し暑い夏のアニメから
地面へと落下する事が
出来るだろうか S
M 睡眠を忘れた者が
目を覚ましたままで眠っている ゼロの射程を

わたしの衣服は剥ぎ取られた羅生門 日本の古典文学の
鳴り止まないベルと
底に屯する浮浪者たちの手によってアスファルト
ベルトで
締め上げられる内臓と
おまえ少し太ったんだなぁ
誰かも知らない奴らにそんなことを言われ ☆ ハッピーなお星さま
星の王子様が薄ら笑いを浮かべてやがるポンキッキ
おれも何だか可笑しくなってね
クククク笑ったよ 靴の紐は解けて
いーとーまきまき ひーてひーてとんとんとん!
シャア専用ゲルググティッシュがなくなって おれたち!
流れ出す血は止まったマクドナルド 高校生の受胎!
固定化された三つの点々とした傷跡を
お花畑で君が優しく舐めてくれる
ペロリペロリ ローリングストーンズ ぐちゃぐちゃ 岩波文庫
お凸とお凸の皺を合わせて しあわせ な〜む〜
ダメだぞ! そんなことしちゃ
と言って崩れ落ちるおれの2Dの体を
豆腐屋のお父さんが受け止めた! 寂れた商店街で
夜の闇と
夏の湿気が!TWO-ドッグ!酒だ!

面倒くせぇーから 小手 突き
財布ごと店員に投げつけてやった! 剣道で
金ならやるよ ケンドー・カシンというプロレスラーも大喜びだ
小さな部屋で うぅぅと蹲りながら、
朝が来るのを待っていた
膝が痙攣し始めて お母さんの名前を連呼する!
煙草を吸わずにはヤってられなかった
近親相姦なんてサ、
バスコ・ダ・ガマ.世界一周!
何の意味もないこの草が
辛うじておれに意味を与えようとしていた
「おれがお前に詩の宣言をする」
「だからお前は死を忘れるな!」

夏の暑い日
ベースボールの真っ只中
止まらない汗の中に
おれは一つの希望を見出していた
ア〜セの雫が
硬いアスファルトに落下するリズム
「わをん」 おれの足音と呼応している
めんどり 子犬も並走してきた 家族一丸になって
熱したおれの体を冷やす フルーツシャーベット劇場 MPEG3!
それと同時に固まった自由を解凍しながら
空に羽ばたいていくア〜セの姿を!

シャア専用ズゴックを朦朧とした目で見つめ
水中に潜むオペラ座の怪人を暗示とっていた
原作は良いが、映画は糞だった
おれは走った
朝の町を
ア〜セを書くためにもっと強く
おれは走った 走り抜けた
アスファルトの地面が
無くなるその場所まで
アイウエオ カキクケコ サシスセ!!!
和音のメロディたちに捧げる!ゼロの射程!!!!




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Asylyvo(アシリゴ)の序文
 橘 鷲聖

此処は凡てのあらゆる場所へと繋がっていながら、切り離されています。それは自らの意思です。また同時に、大洋に突き出た美しい半島であり、旧式タイプライターが打ち損なった「C」と「Y」の距離と歴史、少年が飛び降りた飛沫に映る夏の解体、オフィーリア、誰かが見つめているあなたの心の中、でした。それは不定形で、不安定で、未完であり続けるから、私たちそのものであるでしょう。「愛している」と云ってください。形振り構わずに「悲しい」と微笑んでください。もし誰かが「死にたい」と告白した夕べなら、抱きしめてあげたい、抱きしめて、抱きしめたかったのです、ほんとうは、ほんとうは、此処はあなただから。道々に置いた色とりどりの石は、木漏れ日に弾けて、また私を呼びました。冬の結晶を落として、視えない湖畔を囲むように踊る刺繍たち、百万の星が瞬くあいだに、体を寄せたふたり、私やあなたが此処に辿り着く今日、を教えてあげたい。教えてほしい


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午前
 ルイーノ

水曜は
銀の白凪を透かした

濾過を経た明かりは
目蓋を包んで
埋もれた寝台の
柔らかな浮上へと集まる

はだかの夢見なら
信じることはたやすく
醒めやらぬうち
メレンゲの天井を彷徨う
二重にきこえる寝息は
昨夜
求めあった残像たち
薄い温感を追い掛けてる

枕ごし甘い香り
きみが
石鹸のひとつに変わる
夢を
(夢だよ)
引き起こさせたトリック
訳もなく
幼子のよう怯えたら
許されたまま
乳房の谷
耳をなすり沈んでいる
窓の午前を見上げていた

秒針を阻む心音が
頬で暖かに伝われば
ふたたび
瞳を閉じるよう

きみが
夢の中から笑った

だから今日なら
どこへも行かない


 

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山の上で告げよ
 ピクルス

ふるい手紙を火にくべたんか
けむたい朝に眼をしょぼしょぼさせとんね
一番遅くに寝たもんが
一番早くに目を覚ます
土鳩鳴いとるよ
くるくっく
卑しい国には正しい言葉なんてありゃあせん
えらい人はおえりゃあせん
熊手担いで畦まで歩こや
次はどうなるんかの
これからどうするんかの
あうんの戌に問い掛けて
吃りながらさらうんか
なきそなきそ濁りながら

からからの土手にも花が咲いとるけぇ
おまえ様のふくろうはうまく笑えたんか
またすこし霧かの霞かの
はごろものようじゃ
さむうないか
はらへっとらんか
あったけえと思うきもち
おいしいと眼を瞑るじゃろ
それでええで
それがええの

藪の中には蝮がおりんさる
だれじゃって毒をもって生まれてきとうない
だから隠れんさる
たまに大雨んときゃ
畦にも這い出すけどの
熊手の先で道を示すといい按配じゃろ

うぶめはのちのちにかかさまじゃ
裾を捲って怒ったように耕すんじゃて
やわらかいのを忘れんでくれの
やまのてっぺんは
畦からは見えんで
やまのてっぺんからは
ちいそうなって見えるんじゃ

ほい
夜が明けよる
きらきらしよる



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