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燃える春と青が燃える
 ヤツヒガタ

青。まばゆい青。それは向日葵の青。

桃源郷の失火に乗じて中二階から
中二階から踊り場を抜けて
踊場を抜けて何もする事なくなった僕は
する事なくなった僕はそして空を歩く仕事についた
自由になりたくて自由過ぎて帰りたくなって
カナリア泣いて森が燃えているから
心の片隅にまだあった優しさを写真にした
写真にした向日葵の青

あまりにも寒い春の日にお気に入りのワンピースだけを選んで暖炉にくべた僕は
森をピンクに燃やしていたんだ
燃やしていたんだカナリア泣いて
カナリア泣いて桃源郷は燃えて僕は空を歩いて自由になりたくて春になって
気取り屋のいれたエスプレッソとある街の情景
とある街の情景と美しく燃える森をただ見てた僕は不実だったか!


僕は不実だったかをカナリア泣いて写真を撮りながら考える青は

考える青はまばゆい青。向日葵の青。

そして僕はなんかムカつくからピアノを弾きまくってる

狂い咲くミニスカートと感情のない本棚に
世界の終わりの終わりはこんなにも不実だったかを

そして僕はなんかムカつくからピアノを弾きまくってる





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夜と羽
 木立 悟




誕生がある
触れずとも知るかたちがある
ざわめきの道のかたわら
夜を照らす骨に集う


晴れの下の輪
飛びたとうとする硝子には
溝を泳ぐ矢印がある
従わぬ背のまたたきがある


窓の鍵にだけ映る鳥から
うたがひとつそよいでいる
熱は冷めてゆく
路地には 小さな波がひしめく


蜘蛛の巣を揺らし
道は息をつく
曇を指さし 壁をすぎる
雨を連れ 足跡に降りる鳥


石のむこうの石の響き
既にそこにたたずむもの
訪れともつかず訪れる
知っていたはずの影のかたち


何も見えないまぶしい夢から
くりかえしくりかえしくりかえし覚め
ゆうるりとふちどりをたしかめながら
息の羽を歩んでゆく














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夏の夜
 丘 光平



生まれたとき
夏はひとりで
なにも身につけてはいなかった

夏はたずねた
ぼくは海からきたのか それとも
海へむかうのかと

こたえなかった星が
ひとりで死んだとき
なにも身につけてはいなかった―

 そして明るく焼かれて
夜をひろう夏もまた
夜をあつめて出来ていた



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シキルカラタン
 鈴木

うれしそうな雨が
細胞からよみがえってきた
いくばくの進化もなく
残月を探して伏す

 目的地までは砂丘が続くばかり
 それでも幾らかは
 希少な光景を紹介することができます

コカ・コーラの缶から
少し残っていた中身が指へ蕩けこぼれて
今日もまた処女を失うあなたに
せせらぎでありたかった騙りを見つける

 燃え上がる子牛のしたたりを得んと
 大量のサボテンが踊っております
 このカーニヴァル、シキルカラタンといい
 最も美しく舞った者だけが
 火の滝を浴びる栄誉を授かるのです

心臓のリズムにズレが生じ動じ同心円状に血管を伝い
網膜の張り裂ける心地が
魔女の講義へ耳を傾ける間に麻痺し
「分裂しつつあるアメーバの気持ち」

 関節を無視した植物独特の動きは
 天空の社交界をも魅惑するといわれ
 幾億のヴェールに包まれたとも知れぬ公爵夫人さえ
 尻たぶをあらわに輝かす有様で
 まさに名に恥じぬ祝祭でありましょう

削り取った私の胎盤を異邦に放り
投げ返された母親達の織り成す庭園の中
瑪瑙みたいな炎が炙る彼女
の適職はバケモノで
まさに名に恥じぬ祝祭でありましょう

 まさに名に恥じぬ祝祭でありましょう


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くしけずる むすめ
 腰越広茂




空虚な光のみちる
いまだしれぬ希望か

未完成な光
この静脈を流れるかなしみ
限りなく脈をうつ光源

おもいでの空は ほのか)
ほの暗くくしけずる黒髪の
源流へさかのぼりつづける
ただいっぴきのさかながいる
そのうろこは消えない虹で
無限光年をゆく岩船である
それがわたしをおこしにくる

遠くで閃く浮雲とつらなりつながっている
一本一本の魂をすいていくすいていく
いまもなお伸びつづける情念は
どこまでもきららきらめき
しっとりはんなりりんとして
かなしみの重力にひかれ
そよぎ轟く大河
白き星もいつか
こんな風にして(いたのかしら

永い道のりの河原では
大小のすべやかな石たちがあおぐろくひびきおり
淡すぎる雲の純銀(しろがねのまるい
月影をしゃんわり とゆらりゆらりする一輪
 あつく重ねられた年輪は
 いくとせも風光る春をむかえる冬をこえて
 幽玄な大地に不動として自在に深く根を張り
 幽遠な心血の虚空を真っすぐに満ち干の茂り高く
つらぬいている 種族

おさないおもかげが
かぞえうたを手折りながら
絶することがない
(ふちのない波紋の澄みわたる
静けさで熱く息を燃やしている

 みち連れの枯れぬ彩雲(光のいまに
 鏡をみつめるひとみの
 咲き乱れる華となろう
ちいさく「 ァ 」 とくびすじ白く、ふせる目の

すべてのひかりに宿る
いまだしれぬ希望の
闇にうかびあがる いのりの点!





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ぼくは歩いていた
 丘 光平


ぼくは歩いていた
ぼくが歩いてきた道で
ひからびた夏の抜け殻が
空を仰いでいた

輝きにまぎれて
届いている冬がある
ぼくが届かない真冬がある
仰いでいた空で

あの真昼の星は
夜に繋がれている
ぼくに繋がれている

 汗をぬぐった手のひらで
ひからびたぼくの抜け殻が
ぼくに手を合わせていた




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青を折る
 村田麻衣子
街の境界で
2才児が、
空を裂いていた。人々のさまざまな傘が壊れだし
小さなハミング
ひびきにとらわれる、成長痛
からだの隅々で、こんなに軋むとは
思わなかったね
次から次へと間違いを正していく内側の黒さ
ビニル


膿、凛として美しい他人の癖を見つめる
傘が歩道橋の下で
くるくると回る赤は赤を塗り、ビニルは無機質を
澱ませ
さりげない舌打ちの
空っぽの口腔の
ささくれ
だれかが見ていると電線の2本目が痛んでいて
胸でとぎれない裂傷、しめつける回送の
けっして骨は骨を砕かない、つなぎとめ
青を遮る、見えなくなる人々の
2才児の目の位置を、点々とつたってくる
溢れたら 
青をつたって降りてくる。澱みを知らない一滴にすり変わる事には足りない一瞬、
漏れだして
見ちがえた空を誰かの後頭部から、眺める
ねんまくの層が、余りきった広場の端のわたしの指の方でとぎれて
成層圏が、砕けた
前から後ろへ順序よくあふれる空席のベンチの膿
手のひらを眺めていると
関節の隅々まで 裂け目だった



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ひとつ いのり
 木立 悟







幾度も夜に月を着なおし
言葉を交わす別れも無く
樹と曇と星の重なり
灯火ではない明かりへ歩む


海辺の突堤に
子が腰かけ何かをつぶやく
聞き取れないまま
子の姿はかがやいてゆく


氷の稜線
暗がりの鉱
明るさをふちどる明るさの
かすかなふるえ かすかなこがね


こぼれぬように
光が光をおさえている
見あげる手のひらの群れのひとつに
光はこぼれおちてゆく


夜の鍵盤
伝う飛沫
河口の唱
かすかな かすかな鈍


ねむり つめたさ
かわき とまどい
音のまぶた めざめ
音のまぶた まよい


木は無く 木の影だけが
石の壁からあふれ出ている
生きたいと願うものたちが
夜の夜を呑みつづけている


ひとつの風が丘の上から
数百年後の風を見ている
傷に浮かんでは消える唱
光をこぼす手のひらを見ている














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