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ツガル
 ピクルス
 

去年逝った娘の
ヴァイオリンを抱えて
しょっぱい風は
まだ見たことない津軽へ

狭い波打ち際に
足跡はヒトツもなく
勿忘草添えて
もう津軽は桐の中

整った襟元
林檎色の甘い溜息
その欠片だけが
また津軽から薫る

艶やかな櫛が
円い音色で鳴いて
濡れた髪のまま
津軽と呟いた

ひらひらと散る楽譜が
海を渡る鳥のように
(離れてゆくんじゃない)
「も少しかしら?」
「もうすぐだよ」
はばたいてゆく白鳩
一羽ずつ貴婦人みたいに
消えてゆく黒縁の津軽
赤い靴を雛のよに揃えて
海に流して歌う
黙祷という無力を知りながら
ひっそりと繰り返す約束
「待ってる」
「うん」
わすれないわすれないわすれない
まだ見たことない津軽
 


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ナミダ子と暮らした事
 ルイーノ
 
 
 
堤防の続く町には、ナミダ子の影がいる
すれ違う人々すら、月光の顔色に見える
朝顔の浴衣、とうとう買ってやらなかった

白紙の日記帳覗いた、傷ましきは歯磨き粉
風の冬ゆうぐれ、膝枕にまどろみ焼けていた
果てもない時間だと、思えるようなこと

機嫌の良い日のぼくたちは、出鱈目な歌を歌っていた

思い出せない歌
ばかり

水彩の朝顔
ナミダ子が泣いた
 
 



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