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帰路
 島野律子


それぞれの枝にある色が道を切り返して振り向く獣の夢をみている門なんてくぐったこともないくせに高い窓から葉の中の水に乗り上げて近づいた月につぶれる屋根の眼の苛々を吹き抜けることができない糸の絡まりの隙間から舐めてみている露のない草むらに落ちていた髪束をむき出しの腕でひろいあげるとびっちりと埋まる川までの時間を自転車で引渡してなだらかに光っているコンクリートの音の下か細い羽が吹きこぼれ影を踏まないように折れた膝から夕立にさわれる


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無題
 クマクマ


保険に入ったのですね。では、行き止まりは危うくないとでも云うのですか。

あなたは、諸島の話を聞きたがる。前ばかり向いているから。条件を覚えていない。
この半分が、電極のあわいで踊っている かたどっている。オムレツを焼いて。カラヲ片ヅケタ。

お一人様ですか。あいにく、余分な席はございません。

黄金の季節売り 慰みもの。ココニオイテイル、母の的 父のめがね。浮かんでも、純粋とはかけ離れている。
大きくならなくても、腫れた肉を切り取ったのだろう。災いもたくわえて、声変わりも果たした。告知板。
干拓を始める際には、観えるものだけではなく、眠っている時間は誰が所有権を持つのかを、立ってつかまえなければならない。
繰り返している。ただ、留まっていられないから、残りを覚えるような。対義をたとえに当てる、独りよがり。

傷ついている人に触れてはいけない。時計の針を正すのに、ライトスタンドから投げつけたりはしないでしょう。

なみだが観える。だから、灰も泣く。がらくたのわたし。
知っているから。ここでも恨むことを、休みたい人。禁猟区。

影たちは、窓の向こうで、犬が噛んだ痕のように取っ組み合っています。きっかけも忘れて、最早、逆恨みにもなりません。



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ビオトープ
 望月ゆき


深くまでつづいている
いつか見失った道の先にある、森で
夏の日
ぼくたちは、生まれた


頭上には空があった
ぼくたちと空の間を通り過ぎてく風があった
ふりそそぐものは、光
光とも見まごう、まぶしい未来
ぼくたちは歩き出した
手をつないで
どこに向かうかなんて決めてなかったけど
それでよかった


立ちどまることを忘れてぼくたちは
屋根までつづくツタをのぼったり
ときどき
追いかけてくる雨雲から逃げて
猛スピードで走った
空はいつも青いわけじゃなく、風は心地よいばかりではないと
いたずらに知らされた


未来からはみだして、
世界から隔離されたところで
生きてるみたいね、って
だれかが言ったけど
みんな聞こえないふりをしていた
もう、夢の中でしか夢を見るのはやめよう
いろんなこと忘れてしまったけど
手をつなぐことだけ、忘れなかった


丸く、ガラス玉のように危ういその上で
きりがないほど笑って
何万回も見た夢のことや
ときどきふいにおそってくる思いを忘れた
忘れたふりをして今を笑った
手をつなぐことだけ、忘れなかった


夏の日
ぼくたちは生まれた
いつか見失ってしまった道の先にある
あの森で
光りかがやく未来とともに


なにひとつ手に入れてないけれど
なにひとつ失ったものはない


つないだままの手のひらの間に
入りこんだままの
あの日ふりそそいだ光のカケラ
ぼくたちはいつか
つないだ手をほどいて気づく
未来はずっと
この手の中で生きていた






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シャイン
 5or6

圧力の浸透
思想がこぽこぽと鳴ってます
うわべを飾る虚栄
コブシを突き上げましょう
ステンドグラス拡散

変な繋がり小さな関係
尖って光って
光って舞う

とても綺麗な蛇足
つい引き寄せられて

浸かれて
吐かれて
疲れて

ねぇ
尖っているのは知っているのでしょう
残るも何も
また後なんですか
言い訳ですよ
不器用を隠して繊細を気取るから

粉になるまで踏んでろ
踏んで炉を灯す
囚われない心
刻む
拡散
足裏に小さな傷跡

こんな気持ちを書くために
こんな気持ちを書くために
こんな気持ちを書くために
こんな気持ちを書くために
こんな気持ちを書くために

私は居るのです

ステンドグラス拡散
変な繋がり小さな関係

尖って光って
光って舞う
とても綺麗な蛇足
つい引き寄せられて

離れて

とても大切なものに気付いて

尖って光って
光って舞う

塵となってもいい
塵となってもいいから

肉体よ輝け

みんな大切な人見つけて愛しあって輝け


シャイン




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涯て
 及川三貴


近くにあった声はない
やがて離れてゆくだろう
測られてしまった熱の
裏側で泣いている

あなたの深海は
絵で書くことしか許されていない
響けと声に出して
膜張る潮に浸されながら
船の上から落とした緑色のたましい

指の軋みが最初の波紋奏でる
声さえ飲み込む追跡の歌
空に放って
降りてくる軌跡を待っている

鳥の歌
鳥の歌
真空を満たす
翼に乗った
鳥の歌

拒むような暗色に浸して
掬い上あげた手からこぼれる
消失点から渡ってくる風を
西側の影の中に溶かした
夜の夢から覚め
初めての言葉で簡単に朽ちた朝 
知りながら手を伸ばす英雄の悲劇 
口元で溶けた言葉 
払って踊り返して笑う

頭上では鳥の歌
軽々と ねえ あなた
幻想を捨てて 渡ってゆく




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慟哭
 嘉納紺
 

おいあれおれたちじゃあ

ないか


三つ四つの子供が手放しで
飛んでいった風船を送る
まあるいあかい息の塊から
ほそくしいろく糸は垂れ
小さな人差し指にある爪と
刹那に永久に繋がってて


なあおい

みろよありゃ

なあ

おい

なあ


言葉遊びでお名前書いて
ままごとしましょ
縄跳びしましょ
積み木をしましょ
遊びましょ

ひらがなパズルでわたしのなまえ
カタカナ鉛筆あなたのナマエ

わたしはママであなたはパパで
ほうらごはんができたわよ

言葉遊びで名前を書いて
誰にならない並べ替えても
ごっこをしましょ
崩しましょ
縄を回して招きましょ

おっじょうさん
おはいんなさい


空には雲がありました
青という青です
統一されない納まらない
青という夢窓です

正しくは無数です

あなたがたは〔〕のなかへ
囁きを意図して封じ
または飾りまたは技法とし

あなた

あなたの名前も分裂する

空には雲がありました
白や灰です
掴めぬ個体に映ります
映ります

わたし

わたしの名前も分散して


風が腕に
色が胸に
宙が瞳に


そして風船は
遠く見えなくなった


なあ

おい

あれは

おれたちじゃ

ないか

おれたちじゃないか

 




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掬われる残響
 ちよこ


貴方が支配する暗闇を想います。麗らかに閉じてゆくその扉を重ねた、暁の原理。その絶望。唱和する度に、ひとつ、ひとつ、原子に近づいてゆく幽夢。分解は進みゆくままに。見てごらん。金の月の投影が、火花散らした唱歌が、核となる様。真月の前身。招かれる痛みに置いてきたその足に再生を。映し身の記憶に肯定を。重力が飽和した宵闇を今こそ。ねえ、隠した片割れに触れたのは誰。


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