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酸欠。
 ちよこ

君は真っ直ぐです。君のまわり音が溢れ、いのち、目をはなさないでしょう。舞い散る途中の桜。おどるはるさき。君には聞こえるのでしょう。のばされた明るさ。袖落ちる蕾。君のまわりは酸素で溢れ、そろそろ水を、生成するころです。水素は軽やかです。

君には見えるでしょうか?

私が閉じ籠った生暖かい、垣根を越えた、此方側。不変の安らぎ、永遠の退屈。雪は灰色。塵の色。暗闇の割合は、森が決めます。ときどき、見えるのです。あちら側からひかりが漏れて、あなたの立体映像が、投影されます。その他は、すべて焦げたシチュウの味です。

春が魔法をかけたので、あの冬はもう、おもいでのくにです。



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エア
 嘉納紺


青く光の射し込む夢が誘う
君を浚ってしまおうとするから
ひらひら漂う白い腕を僕は

少し溶けて海月みたいだよ
ソーダ水のなかの人魚かもしれない
丸い幕を張った呼吐が昇るのを
二人して見つめてみた

このまま弾けてしまっても
やっぱり離れ離れになんだろうか
このまま波に揺られていても
辿り着けないままなんだろうか

繋がらない体なら捨てて
還らない空から遠離って

君が何処かにいた痕跡だけを
いつも繰り返し思っていたのに
沢山の泡が光ってから気付く

側にいないことが少し
君にも淋しさを教えたかな

柔らかな海に捕まった君が
いつか僕の目の前で青く生まれる
だからただそれまでを二人で

もし君を思い出さなくなってしまえば
躊躇わずにナイフで突いていいんだ

陽射しが幾つもの別れになる
君が生まれるために眠る

確かなことはなにもないから

せめて泡に変わる前
一度だけ抱き締めさせて


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音楽
 ルイーノ
 
 
一同に羽根を休める
おびただしき小鳥の群れ
それは
芽吹きはじめた
木蓮の蕾み

語り合う小声のくすぐり
素朴な色
暖かさよ

心臓の波が響く耳にも
かなしみ
ガラスの洪水は潜やぐ
甘蔦を辿る放心
ゆるやかな停止へと注ぐ
水差しを愛撫している指

木蓮よ

やがて
鏡面の街角を疾駆する
この
見失われたはげしさは何だ

中天では
触れられはしない
蜘蛛の巣が伸びる
濡れた繊維を背景に
放物線の金貨は行く

導かれたのは音階
自転車の薫り
風の間を縫って
白いショールに顔を包んだ
あの
とろける美味を味わいたい

胸が破けたら
どういたします

とどまることなく
道々をなぞる
オレンジの灯り
焦げつくうなぎ
串刺しに走るはこの振動
振り返れ
押し寄せる思いは
そこにあるのか

赤い光が頬を見つめて
コップを包んだ
露に向かい
静止を踊る
かぼそき音楽
外は鋳型に染まる空
掻き毟る色はコバルトだ

とぼとぼと歩く
この足元が
沈黙を跳ねた驚きに
小鳥たちが
飛び立つのなら


そんな

女の細い爪痕に似た
かなしき五線が
赤くにじむや
 
 


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巡る
 ピクルス
 
 
新しい靴を履いた
鏡を見たらアブクを噴いてたから
ひやっこい水を呑んだ
がぶりがぶがぶ
神様だって嘘をつく事、
知ってるよ
靴のオツリを持て余しながら
箱庭の椅子で汽車を待つ
ステイションから離れるときはいつも
甘い砂丘で迷子になる

パジャマのまま
濡れた髪のまま
白い部屋の白い窓の白い屋根の
てっぺんに座って
夜空に手を振る
無くした片方のポックリを
惜しむ気持ちではなく
残った方を
抱き締めるでもなく
乙女のうでの
ひとかきひとかきに
なにかが宿る

羊飼いの女が
鳥を待っている
いたい朿いたくない茨
最初の鳥は夫を連れてった
その次の鳥は息子を連れてった
老犬達は羊を数えるのが上手くなった
褒めてほしい顔ばかり並んでるけど
羊飼いの女は
インディアンみたいな一瞥をくれて
また空に眼をやった

プラットホームでは
懐かしい笑顔が溢れてる
そこいら一面
誰もが誰かを
待ちながら疲れて
迎えながら逢えずに
死地に赴く兵士の妻は
初めての旅行に紅潮した頬は
緊張に時計を縛られた門出は
大きな荷物
ちいさな櫛
ベルが鳴る
発車のベルが鳴り響く
暗い空は
夜明けが近いからだと
いいきかせて
いつまでもいつまでも
手を振る
 
 


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