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顎なし鱒夫と俺物語
 mei
 

 はじまりは、「鱒夫の憂欝」


 ああ!――磯野家へと続く道! おお!――散らばった靴たちよ! 俺が婿にきた時は綺麗に掃除されていた玄関は今はどうだ? 当時の、波平の笑顔さえ遙か遠くに感じる!
 仕事が終わる。さらば太陽。波平が稲妻をなびかせながら俺の肩に手をやる。「どうだい、一杯」誘いという名の強制、深紅の空が闇に支配され、立ったまま拒否でもしようものなら髪にも負けない稲妻が落ちてくる。(――俺は婿養子。俺は婿養子)「良いですね義父さん(良いわけないだろう!)」永遠から追放され、俺は地獄へと閉じ込められる。良い女はすべて波平に、残るものは波に食われた女たちの群れ。タイコ!――愛しき君よ! 俺は君に似た女を探す。あれは鳥類、あれは魚類、あれはもう……! タイコ、ああ!――タイコ! 愛しき君よ、薔薇を舐めネオンをたどり波平の満足する店を探す。「まだかね、鱒夫君」「すみません義父さん(黙れ! この野郎!)」アスファルトを登り、天国へと続く道だと信じて――って、ああ! 誰もいなくなっていく。いくつもの魔法が俺たちを誘い出す。その手にはのらない。タイコ、タイコ。タイコ!
「鱒夫君、高望みをしてもきりがないので此処にしよう」「そうですね、義父さん(俺は婿養子!)」月を前に、女の草原に眠る。今日もまた魚類。嫁の名はボンバイエ。永遠は南方に行って、死の街道をたどる。波平は汚らしい顔をして黄色い髪した女を口説いている。無駄だ、無駄だ。無駄だろう! 影の宿舎は死の道を離れない。生きる事さえ忘れさせるエラ呼吸、翼は音も無く消えていく。流れ落ちる雫。光る巨大な目から見下ろされる俺は女から離れ電話を取り、あいつに電話をかける。
「会議で遅くなる」と俺が告げるとやつは、「毎日毎日会議お疲れさまですねえ」と呆れ声で電話を切った。ああ、本当に疲れているさ。「鱒夫君! 延長だ!」稲妻が叫ぶ。陽気な声だ。俺は婿養子、嫁の名はボンバイエ、おまえの嫁はクロフネ。地獄から抜け出せず、ああ、おまえは俺の気も知らずに、俺の気も知らずに……


 そして、「鱒夫の消失」


 メリークリスマス!!
 我が家のクリスマスは本格的だ。俺は夕飯前に子供たちには内緒でサンタの格好にされ放り出された。外は寒い、俺は庭にいる。鶏は庭にはいない(噛むな)。子供たちは俺の名も出さずに夕食をすませる。わかっていたさ、静まれ我が魂。俺は庭から永遠を目で追う(深夜までどうしよう)この家では俺は稲妻似の幽霊以下の扱いだ。何がご先祖だ。このままでは俺まで逝ってしまう。風が遠くから吹いてくる。空と俺とに裂け目をつくり、俺は現実に分散する。ああ、俺は婿養子、おや、君も婿養子? あそこにも婿養子。
 しまった、幻覚がみえる。冬は終わりの季節だという、死が空から降りて来る。今日も何処かで犬が死ぬ。何処かから鳴り響く終末の歌。少し眠い。「パパはどうしたですか?」俺が永遠への扉を開こうとしていた時、ようやくタラが俺のことを訊いた。「夜遊びかしらね」サザエ即答。夜遊びか、夜遊び。ふふ。「最低……」ワカメの呟きが聞こえる。今はただ薄い窓が憎い。精霊がまた一歩近づいてくる、祈ろうか、マリア。サザエよ、サザエ、今すぐ飛び出しておまえのその髪をひとつちぎってやりたい。ああ、凍える夜に俺は最低と、最低と罵られ!
 水が流れているのは川です。木がいっぱいなのは森です。蟹は横歩きです。あはは、あはあは。涙がとまらない。泣きながら俺は俺を抱きしめた、眠りはまださめないのか。これは夢だろう、俺はまだ未婚じゃないか。ボンバイエ? フーアーミー? ぼくはだれ?――俺は神を知っている。メリークリスマス!――俺はサンタ。ああ、世界中の子供たちが俺を待っている。夢は俺の手中にあるのだ、愛、それは義務。果てのない地獄への道を歩かねばならぬが宿命。乾いた血で俺はつくられている。サンタ、サンタ、サンタ。俺は騙されてなんかいない。俺はサンタ。イエス、サンタ。静かに流れる闇を見つめて数時間、俺は死神をみた。この眼の視た永遠を誰がまぼろしといえよう。浮かび上がる俺は星の群れを見下ろす、沈み降り行く千の星たち、(駄目よ。あなたはまだ此処に来ては駄目――)かあさん、かあさんなの? でもぼくもう疲れたんだ。もう眠いんだよ。(駄目よ。ほら、御覧なさい。あすこ、最後の光のあすこを)――ああ、かあさん、かあさん! ようやく稲妻の部屋の明かりが消えたよ。さあ、行こう。サブ専用の裏口から声高らかに、俺はサンタ!
「メリークリスマ――」
 ガチャガチャ。
「………………」


『戸締まりはしっかりと』


 俺の頭で、その台詞が繰り返し、繰り返し響いていた。


 ああ、「鱒夫の溜息」


 妻が教会に通いはじめた。
 賛美歌のあと、晴れた空に、「神よ!」と叫ぶ。それを見た俺が笑うとサザエは腕を振り上げ俺の頭を殴った(俺は永遠を探し、果てのない道を歩く)ワカメはお正月お正月と繰り返し、カツオはお年玉お年玉と繰り返す。教会の帰り道に餅を購入するサザエ。イエス、キリスト。鳩は飛び上がり、死は侵される。俺の乾いた血を川に流し、地獄から逃れようとするのは無駄な行為だと知りながらも俺は静かに流れ、風は乱暴に吹きつけてくる。沈んでいく陽、教会からは遠く離れ、年賀状を書かなくちゃとサザエが呟いた。
 落ちてくる死が雪のように見えてきて、知らない家の窓辺からは犬が顔を出している。永遠の読み方も知らないで、沈む陽に導かれた精霊は稲妻を召喚した。ああ、神よ何故ですか、夕陽に照らされる稲妻の頭。真冬の嵐か、それは地獄への炎、約束されていた奇遇。地獄への道はまだ遠い。
 夜が降りてくる、冬の闇は疲れたように俺たちを包む、「義兄さん、また夜遊びかい」栗の野郎が俺の肩をつつく、ワカメは俺の顔を見もしない、稲妻はにこにこと俺の手を握る。「忘年会をしたいと言っていただろう、鱒夫君」生の椅子への離れ星、嫁は黙って子供たちを連れて行く。「あんまりよ、義兄さん」ワカメの声が遠くで聞こえる。忘年会、俺はそんなことを一言も言っていないのだが、吹く冬の風にのり永遠が遠くへと飛んでいくのを俺は視た。おお、静かに歌う、美しきマリア! 磯野家はすでに正月の準備に忙しい。ああ、すべては夢まぼろしの月の光に、俺は凍りついた唇を叩き壊す。「良いですね、義父さん」婿養子。だって俺は婿養子。


 稲妻と俺は小さな店に入り、絶望の果てで俺は永遠を探した。深紅の光は稲妻の頭を照らし、行き来する女たちは優しい笑みを浮かべる。見知らぬ女に抜かれれば良い。沈む陽の死を海に落として、絶え間なく嘆く亡霊たちに守られて。その最後の稲妻を抜けば光が、光が世界を支配するのではないだろうか。静かな店のなか、まだ永遠は見つからない。
 輝きのなかで、稲妻は微笑んでいる。爽やかな風が稲妻を揺らす。(飛んでゆけば良いものを)俺の隣にようやく女が座る。今日は池からの侵略者ときたもんだ。鏡だ、鏡を持って来い。稲妻の光さえ薄れる、霧に包まれた蛙の声。「麗美です」名前負けした女は座ってすぐに煙草に手をやる。客は俺なのに。客は俺なのにだ!
地獄の窓に雪がみえた。月があらわれてはかくれ、外では女たちが歌を歌っている。近づいてきた精霊は白い花をくわえて、消える。永遠よ、その影さえ俺に見せずに、ああ、静かな夜だ。蛙は煙草を吸うのが仕事らしい。稲妻は陽気に歌を歌いはじめた。女たちの拍手、声援。誰が知るか、そんな曲。消えてしまえればいい。雪は永遠へと続いているのだろう。いっそ飛び出そうか、この窓から――


「随分と遅かったわね」
 サザエが感情の無い声で呟く。見上げる空もなく、俺はただ下を見る。静かに流れる風の間に永遠の欠片を探して、探して。「鱒夫君が楽しそうで良かったよ」稲妻が満面の笑みでそう言うと皆が俺を白い目で見る。おお、神よ、私はどうすれば良いのか。泣くことすら出来ずに、ああ、俺は婿養子。逆立ちしても婿養子。「いやあ、義父さんには気をつかって頂いて」心にもないことを言いながら席に座るとワカメが「勉強……」と呟き席を立つ。ああ、窓からは月がよくみえる。雪は何処へ消えたのか、月の光が稲妻を照らし、鳥たちは皆、俺から離れて行くだろう。まだ眠りはさめない。この悲しみの夢の中で、俺は……


※二年半くらい前の詩。
 絵はマサオ氏
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光のない声
 mei
 


(太陽が離れてゆきます。)


(太陽が離れれば離れるほど人々は少女を忘れるのです。)


(少女は夢を視ていました。)


(世界に生きる誰もが記憶をこの街の雪にして降らせたあとでも、まだそこで――)





「少年を失いましたと少女は呟きました。彼はもう見えないところに行ってしまいましたね。名前くらいはせめて誰かに預ければ良かったのに。……」
「……別れは告げません。光を拒絶する水の精たちは理想を語る人間に、一番欲しいものは手に入らないと、いつもの科白をまた繰り返していました。」


 …………


 ――僕は夏に死んだ少年を思い出した。彼が眠る海で誰かが朝に歩きはじめて、僕は約束された時間に目を醒まし、追いかけてからまた眠りについた。
 天使の翼を砂に埋めて、僕は食いつくされた春を思う。ああ、少女が異国の歌を指揮していた。それは夏の日の夢――


 ――吊された少女の目は深い黒、髪は闇のよう。夢は群れた獣に食われて地面の上。……
 海に逃げだした時も僕は地獄で交わされた永遠を忘れた事はなかった。しかし少女は思い出すことが出来ず、ただ遠くに見える煙を頼りに少年を探した。
 一切が七月の夜明けを待っていると知っていながら――





(問うのはもう終わりですか?
 それは何度目?……
 世界はすでに離れました。)


(光が僕を通過して死が廻り始めます。名前もない人形を連れて遠くからやってくる。)


(雪に手を伸ばした沈んでゆく魚。彼は遠くへ離れなければ血も流せません。夢見る孤児と川に入る。泣けるのであれば泣けばいいのに……。夜明けのなかの果てのない地平の彼方に空から落ちてくる、光たちと――)





唇を、凍りつかせないで、


小さな影が通り過ぎ
僕はいま夢を見ている
空の星たちは眠りにつき
少女は僕に生も死もなにもかも一切を忘れさせてくれる
月は静かに風を呼び
地獄への道を凍らせた


それは赦されると云うこと


吹く風が泣いていた
あれは魚の群れの最後尾
夢まぼろしに消える 朝


 ――夜明けに離れていく光が夢の終わりを告げて沈む魚たちを橋のうえから少女が見下ろしています。なにもかもが過ぎた日に消え去った風の泣き声を僕は聞いていました――


赦しは赦されるものに渡し
長い髪の少女のくちびるは
冬の風に散っていく
星たちは何も語らずに
ただ果てはなく
野に雪が降りはじめる
生まれ死んでいく魚は
冬の風に
過ぎた日に流される


(僕が聴きたいのは君の声、)


それは呼応した夜のこと
静かに流れる川のなかで僕は
君を見つけるでしょう


※二年前くらいのを推敲。
 絵はスーパーモゲモリアン氏
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食事
 腰越広茂

明日も知れぬ。
死のいぶきを感じる
果てしなくふりしぼれば
ここに通流している
私の声がする
耳をかたむけるのは幽かな影
生命あるあいだ

避けては通れない
このように、食事をする
あなたもわたくしも闇の中の
ブラックホールも
透けていて孤独な 咀しゃく音のみが
超低空飛行する、帰らないおもひ出を
星星の密やかに瞬く 空におおわれて



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croissant
 ともの


日曜になると時々
どこで覚えたとも知らない古い歌を
洗い物をしながら口ずさむ

1969年3月30日の日曜日パリの朝
フランシーヌっていう女子学生が
抗議の焼身自殺を遂げたことなんて
40年たった今ではもうメルヘンの世界で
だからわたしは「フランシーヌの場合」を
ひどくポップに歌うのだ



上の階に引っ越してきた人の足音は多少乱暴で、にぎやかだ。わたしよりもいつもすこしだけ早く目覚めて行動を始める。家具は金属でできているらしく、歩くたびに揺れて音を立てる。今朝はたくさんやることがあるのか、部屋中を動き回っている。金属音が鳴り響き続けるわたしの部屋。天井をひととびに、振動が伝ってくる。迷惑な伝導。少し苛立ちながら、隣で寝ている彼を気にする。上ではひときわ大きな音が響き、びくりと硬直したが、隣の人は負けじと大きな音を立て、ばさりと寝返りを打った。大丈夫なようだ。
こっそり起き出して髪の毛を梳かす。目覚めを望まない日曜日も、さすがにもう起きていい時間だ。雨戸を開ければ外は快晴。二階のベランダに干された大きなシーツが垂れ下がり、わが家の窓をすこしだけ覆う。困った人だ。いつまでも続く音。天井をじっと見つめていたら、起き出した彼が目をこすりながら、天井にぶらさがる蛍光灯のカバーをおさえてみせてくれた。ああ、鳴り止んだ。金属音はわたしの部屋の備品だったんだ。得意げな彼にありがたく納得しながらも、なんだか侘しげな気分になる。気持ちの置き場を少し失って、けれど外が晴れているから、笑っておけばいい。
ドンクで買った量り売りのミニクロワッサンをお皿に無造作に盛り、カフェオレを入れる。日の当たる日曜日にはクロワッサンが似合う。おいしいパン・ド・ミもバゲットもぶどうパンも素敵だけれど、バターをふんだんに使ったカロリーの高そうなクロワッサンがひときわ似合う休日の正午前。だって今日は3月30日じゃないし、ここはパリじゃないから、フランシーヌは燃えたりしない。わたしたちは戦う必要がなく、不幸じゃなく、たぶん幸せに生きている。

クロワッサンは おばかさんじゃない

いくつかはプレーンなクロワッサンで、いくつかにはチョコが入っている。説明しなかったら彼はプレーンな方ばかりを選ぶように食べた。チョコ好きなのにね。

カフェオレにお砂糖がすこし足りないといわれる
それならチョコをたべておけばいいじゃない


彼の背中からは まだ寝息のにおいがする
横顔からは 音が飛び出している 
さっきの金属音に似た音が わたしの頭の後ろの方で 
止まなくなる
丸まって 脳から飛び出し また戻ってきて ぶたれる
衝撃 衝突音
これは 
なんの
おと?


シルヴィ=バルタンを歌ってみたら渋い顔をされた
クレモンティーヌのほうがよかったかな
どっちだっていい
古いも新しいも
くちばしをとがらせて
スタッカートを重ねれば 
フレンチポップはできあがり
部屋は簡単におうちカフェ


青い正午を握り続けていると 
低音やけどをするようだ
ひたひたと冷たいような痛みが面白いように
わたしは握り続ける
青い正午を
そうしているうちに
また何かが鳴りはじめている
目の上 
耳の奥
これは
なんの
おと?
ねぇ
これは
なんの
おと?

口をつけていないわたしのカフェオレに 
薄い膜が張る

からだに クロワッサンのバターが注入され
彼の血に わたしの血に
日曜のクロワッサンが混じり
層を成した皮膚の剥落が はじまる


わたしたちには戦う必要がない。わたしたちはおばかさんじゃない。だけどわたしたちは、
すこし、さびしいかもしれない。
低音やけどをしている。
燃えつきることのないままに

低温やけどの手でクロワッサンを食べ、カフェオレを飲む
わたしたち

場合






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ラフ
 えあ





赤い葉がちって
水分を含んだ土に抱きとめられる
そのうえ、
瞳にひかりの届かない場所で
回転しながらおどって
(なにも聞こえない)
足音を聞くことがないのは
たくさんを吸収して燃える、粉々にゆこうとしている、葉が、わたしに踏みつけられているから、だった
そして

いのちの発火だよ
もう、いつだってはじまっているよ
色を落としてゆく四季から
体温をうばい
すこしでもあかるい肌色に
スロウ、それからクリアに
髪を解いて
あの川縁をゆく
fryではなくjumpで、わたしは越えて、きみを、きみと、きみの。


心臓で対話しよう
聞くことを、しないで
夢をみている頬を持って
自然なかたちで温度を探って
渡り鳥の飛ばない空は、たぶん、少しあたたかい
だから、すごく遠くても、いいよ、近くたって、いいよ



ね、咲いて眠る花達が
折り目をつけてゆく
朝と夜に区切りをつけて、
ループ、の次もループ
そんなんじゃない、眠るための言い訳を、聞いてあげる
幾度も重ねた、星の爆発する音がちょうど、鼓動に近いって
わたしの鼓動に近いって
それじゃあ、わたしと、その他との違いはなんなの
(また最初から。
A、B、a、b、終わらない
かぞえうたはさかさまになぞられて)


終わりの合図はなんだろう
遅れないように、
だれかの真ん中で眠ろう
はじまりは、きみの言うまま
星の鳴くまま
眠りのさなか、の
壊れものを抱くゆび先で
か弱い宵をぬぐって
傷んだゆびのかけらを
ためらわずに棄てる

なんてきみはやわらかいの


じゅくじゅくと倦んだ
ぬるいたまごを抱いて
合図はまた、わたしの足元を洗いさり
あなたの中を押しだされ
知らない小さな海に流れ落ちても
瞬きで夜をめくり
あなたをつらぬく強いひかりで
その海をおし広げていってほしい




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無題2(メンフィス)
 泉ムジ


おなかに食いこむ螺子が
きるきるきるる、と回転する
貧弱などぶ川が突っきる野っ原で
立体的に人びとが死んでく、の
をあたし見てた
絶滅したように平坦な空
豪雨を呼んでる
雷鳴が閃いて水面を流れ
そこからまたひとり這い上がり
石っころに躓いて雑草にしゃぶりつく
塔になるだろう、ね
その上で白人のロックスターが恋を歌い
あるいは黒人のキリスト者が夢を説いて
死んでく、メンフィス
名前なんて要らないのに、ね
はな先に雨粒
あたしは、野っ原に
直立する塔の礎で枯れた雑草をむしり
どぶ川に頭からめりこんでく
閃く雷鳴に撫でられながら
きるきるきるる、と回転回転回転する
螺子螺子螺子が、せなかを食いやぶり
空を波立てながらメンフィスまで飛んだ、の
をあたし見た気がする
どしゃぶりのなかで





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