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終わる世界2
 meimei


ひとつのメルヒェンが世界を往復するあいだに
路地裏の女はひらがなで大きく書かれた
しなないという文字を
街の中心地へと押し出そうとしている


(光の海で星と泳ぐ少女の物語も日が暮れる頃には薄れていく
 六月に生まれた少女は冷たいという感情を
 知らないまま大人になるのだろう
 毎日僕は誰かに送る最後の言葉をさがしているのだけれど)


一言目にはしなないと言ってください
路地裏の女は目を伏せて言った
仕組みなんて誰も知らないと続けたあと彼女は祈りを捧げた
まっすぐに切り取られた世界の上では少女の種子が芽を出している


 ひかりがきえる
  ろうそくのひがきえるとみんな
   しんでしまう
    まるでえいがみたいだとおもいながらぼくは
   しにんのやまからあるきだしてかみさまのみきにもたれかかる
  ろめんをはしるでんしゃをささえるしょうじょといっしょに
 ひをけさないようにおわりをみとどけましょう





一人ですか? 此処にいるのは僕一人だけなのですか?
廊下で目を覚ました僕は世界の神さまに訊いたのだけれど
しがもう過ぎ去ってしまっていたことを僕はすでに知っていた
またがもうないことも僕はすでに知っていた





 酷く眠くなってきた
 六錠ほどの睡眠薬を酒で飲んだ僕は良い気分になって
 しさくを中断することに決めた
 まるで子供みたいに少女に抱きしめられて僕は少しだけ眠る


これで終わりだよ
風が白く見えるところ
世界という負の堆積の崩壊が始まる
通りに雨は降りしきり
終わりの終わりのそのまた終わり
そして僕はゼロになる
終わる世界でゼロになる

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落日の骨
 meiたん


「僕は生まれるまえから窓のない部屋に住みたかった。
 落日の骨は終わらない記号のなかに消えてしまった光の海へとかえってしまう。」


君は自分を求めない問いが何番目にあるのかを知っていたのだと思う
双子のいない双子座を光が通り過ぎて
上昇を始めた水位のなかで泳いでいた魚を
君が愛した男が見つめていたのは偽りの記憶であって
夜になるとそれが証明されてしまうから逃げなければならないと君は言っていたけれど
遠くから流れてくる記号の成分は落日の骨にちょうどあてはまり
生きていた人間たちが並んで待っているあいだは
帰れないという答えに向かって
問題を解き始める


何処からが記号で何処までがわたしなのかはわからないと
独り言を言ったあと
君は僕を拒絶した
双子のいない双子座という新しい記号のなかには水がなく
溺れている人間がいない
僕の部屋に窓がない理由を僕は知っているのだけれど
この部屋を出ていっても流れてしまわないで
君にかえってきてほしいというのは僕のわがままだろうか





 君をうしなってから一年が経つのだけれど、僕は君を失ったのか喪ったのかまだわかっていない。当たり前という言葉がどの記号よりも大きくて、僕は何も考えずそれに甘えてしまっていたのだと思う。またがないことをわかっているのだけれど、僕は君との、またという時間を計算することをやめない。


だから教えてほしい
別れという結論に達した落日の骨が放っている光に
違和感がなかった理由を


僕は一人の夜に目を覚ましては後悔している
僕はなんだって窓のない部屋なんてものをつくってしまったのだろう


扉が開かれた時に侵入する光は窓のない部屋にすぐ散らばって
廊下では
上昇する水位に逆らいながら魚が深く深くに沈んでいる

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終わる世界
 meiくん


「つよいかぜのうしろでうまれたちいさなあわがいます。
 あのこはけさそらへとのぼっていくゆめをみたそうです。」


 きえていくあわをとおくにみながらのぼってゆくのです


 生きているあいだにどうかこのせかいを崩して下さい
 少女は名前を喪ったあと人形の背中に凭れながら呟いた
 少女はこれから終わってしまったせかいいちめんに
 あとがきを書かなくてはならない
 僕はきっと星のかずを数えながら自分の名前を忘れてしまうまで
 此処にいるのだろう
 音のないせかいに光がひろがっていく夢を見たのだけど
 すでに存在を失った何ものかの声がきらきら光っていた


(陽のない泉に流れているあおいろの名前をした誰かさん、
 あなたは生きるという行為を何よりも嫌っていますね。
 少女はとても元気ですよ。
 せかいがなくなるまであの子はあとがきを書きますから、
 双子のいなくなった双子座の宮で眠っていてください。
 目を覚ますまでにはきっと明日をむかえていますから。)


 ひかりがない


    いつの間にか雨が忘れていった光が消えていた
    僕が首からぶらさげていたあの子の名前もなくなって
    またひとつせかいの足音がとおくなってしまった


 人形の右足は砂にさらわれて暗いところに消えてしう
 時計台に立ったかぜが三度目のあくびをするのを待って
 時間どおりにはじめる
 約束されたせかいの結末を
 下から上へ
 喉から唇へ
 親から子へ
 あの子の終わりを決める為の合図を僕は待っている


 ちいさなあわは露の降りかかった小さな木々の中から空へと
 のぼってゆく
 僕が少女の横顔をながめると
 少女はせかいの夢をみていた

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世界の中心でアイをさけんだけもの、
 meiろん


(終わる世界、)


(青い鳥が空へと流れた、)


ようすいに集まった子供は暗くなるまえに家に帰る
こころのかたち、人のかたち、
雪を知らないアマリリスを神さまと見間違えたと知らずに何人かは
海のなかに沈んでしまう


嘘と沈黙、
/のなかで
黒い雲から祈りの雨が降って
星の海で漂流するわたしの目をあなたが
食べてしまえば、
鳴らない、電話、
/に、わたしは祈る
あなたを見つけなければ百の名前は意味を喪ってしまうのだけど
わたしはただもらうばかりで
月の光がいまも
みえない、


子供たち、
沈んでしまった子供たちは知っていた、
見間違えた神さまを追いかけていたことを
わたし、
忘れてはならない
アマリリスは沈んでゆく子供に言葉を渡していたことを、
夜の霧で見えなくなった神さまのことを、
あなた、
終わりを願うのをやめてください
最果ての空に雪が降る、
ひかりは
夜にあかいあかいアマリリスを視た
太陽の欠片、
死に至る病、そして、
あなたは
星に生まれた子供を知っていますか
わたし、
空が死んでしまった悲しみから
あたらしい誕生を拒絶して落ちてゆく、
わたしは時計の針を進めたいので
ちくたく/ちくたく、
誰かが遠くで沈んでくのをみていた
それは神さまではなかったらいいねと、
子供たち、
私の願っていたまぼろしの通信をする
さよなら/またね/ばいばい、
いくつもの夜を経てもあたらしい朝は
やってこない、


(動かなくなった子供は海のなかで
 創りだそうとする
 新たな言語を、
 消えてゆく時は上昇する水位に怯えて逃げた大人たちへ、
 Air、
 太陽が見えなくなってから咲いたアマリリスが忘れられない
 あなたは永遠ばかりさがしている、
 静止した闇の中で、
 子供たちは流れるひかりを飲もうとしている自分に気付く
 堆積する負の感情に
 ひかりをうしなったあの星の名前を、
 見知らぬ、天井、
 /を眺めては思う
 みんなみんな忘れてしまったと、
 溺れてしまう子供たちもやがて何も遺さず消えてしまうのだけど
 あなたもいつかは沈んでゆくものだと知ってるわたしは、
 せめて、人間らしく、
 /と願う。)


マグマダイバー、


奇跡の価値は、
夏に降る雪のなかで音もなく育っている
追いかけてきていた時間の終わりに
あなたが眠り続けてた理由を問う
最後のシ者、
生きているわたしたちの言語の終わり
わたしは落ちる
青い鳥と離れ
星の海へと、


(Fly me to the moon
 /おめでとう、)

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アナフラニール
 mei様


頬がストロベリィジャムの女の子が生まれた日にはたしか
僕は君とあたらしい世界について話していた


その日が何曜日かなんてのは僕たちにはどうでも良くて
クリィムを混ぜている水車を見るとその先には
誰がつくったのかお菓子で組み立てられた家がたっていた
僕と君にとって今日と云う日は特別何も変わりのない一日で
ストロベリィジャムの女の子とは何の関係もない
僕たちはただ
現在の世界の不満を口にしながらアイスクリィムショップに行った
そして君がチョコチップのアイスクリィムを買ったあと
僕はチョコミントのアイスクリィムを買って
その店にいた少女が僕たちの横を抜けて店の外に出ると
星の子供は永い夢を視ようと目を閉じた


前の世界からあたらしい世界に移った際に上昇を始めた水位は
今もなお上昇を続けるばかりで
いつかは此処も水のなかと呟いたのはどちらだったのか
僕は覚えていない
僕と君はこれと言って嬉しい記憶もなく
楽しい記憶もないアイスクリィムショップで少しのあいだ
お互いの記憶を重ね合っていた
夏のあいだに終わってしまった世界で君が
淡いピンク色した蝶々のまぼろしを視たことがあったのなら
ようすいに沈んでいった女よりも少しだけ多いチョコレイトが君へ
話しかけてくるだろう


ばいばいと言ってはいけなかったんだよと言ってから君は
その言葉自体つくられるべきではなかったのにと続けた
川を静かに流れているのはブルー
僕たちはそれ以降何も言わずに上昇を続ける青を眺めていた


閉鎖されたアンタレスの観測所が遠くにぼんやり見えていて
空では季節はずれの蠍が心臓をさがしているのだけれど
覚えているだろうか
君が初めてアンタレスの観測所から空を見上げたあの日のことを
あの時に泣きながら言った君の言葉は謝罪の言葉だったのだと
あたらしい世界になってから気付いた


ソーダによって洗浄された世界に生まれた
ストロベリィジャムの頬をした女の子
降ってくる祝福の言葉を受け入れる彼女のジャムは蠍の心臓より
あかい色をしている

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アレジオンコースト
 meiちゃん


クリームで前が見えないけれど
世界には青が降っている
炭酸を抜かないで
誰かの声を聴いた僕は夢中になって世界を振った





勢いよく噴出した青を二人の子供が飲んでいた
子供たちは夢中になって飲んでいた
さよならブルー
北十字から南十字まで転がっていったブルー
静かに眠る子供たちに青が近づいていくから
子供が神さまになって
世界はもう少しだけ優しくなれるようにした
星の場処なんて誰も知りやしない
青よりも青い場処に立って僕は目を閉じた
この町の青は透明に近い青だと思った
アンタレスを観測する場処は既に閉鎖されてしまっていて
どれがアンタレスかわからなくなっても
この青い町から見えるのは綺麗な赤だった
もうすぐ秋になるのだろう
冬になれば青にかわって白がくる
青い空から青い雨が降るので
僕は目を閉じた
僕から抜けていったのは炭酸ではなくて
愛している
と云う言葉だったのかもしれない





あの日の帰り道に友人がクリームに溺れて死んだ
そう聞いたのは数週間が経った日のことだった
天国から降ってきているかのようなどしゃぶりの青のなかで
僕は二人の子供がかわらずにそこにいたのをただ眺めていた
その次の夜もまた次の夜も
ソーダはたえることなく降り続けて
二人の子供はずっと
クリームに溺れながらソーダを飲んでいた





隣町の女が妊娠したらしいと誰かが言った
あたらしい
あたらしい何かが宿ったのだから世界も
僕も何か変わるのだろう
いつからか僕もクリームにまみれていた





炭酸が目にしみると子供が言い出したのは今年に入ってからだ
炭酸が目にしみることを知ったのはいつからか
僕はいつの間にかそういうものだと覚えていた
炭酸は目にしみる
生まれてくる子供の目にもいつか炭酸が目にしみる日がくる
僕はそう思った
生まれてくる子が男か女かなんてのは些細な
本当に些細な問題で
どうにもならないと言うのなら目を閉じれば良いだけだ
そして夢を見よう
あたらしい
あたらしい夢を見よう
そして全部忘れてしまわないか





子供たちが去っていったのは僕の生まれた日
新しい世界の誕生もまたその日の朝だった
クリームが少しばかり多めに降っていたから目は赤くなっていた
青い世界で赤い瞳が遠くの遠くの空の向こうを見ていると
無数の星屑が落ちていく
ガラスの水車が時々まわって微かにクリームを混ぜている
自分にはそのクリームで前が見えないから
世界には青が降っているかどうか教えてくれと女は言った
炭酸を抜かないで
誰かの声を聴いた僕は静かに青を川に流した





世界には青が降っている
クリームで前が見えない

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