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続々人間政府
 クマクマ



   5


みつばちやはなあぶがたわむれて、
そこに垣根があることも、
花が咲いていることも知る。
果実がなるのを待って、摘んで、
樽の中で、苦い酒にする。
酔って、今日を事実にして、
おかわりが続く。


白と黒を混ぜると、灰色になるから、
店で絵の具を買う。
明るさの下で、
正午にはろばの肉を食べて、
真夜中には寝ている。
夢の歌は、いつも快晴である。


言葉を数えて、距離を測って、
運行を正しく司る。
くがねの灰皿や、くがねのたんつぼや、
くがねの便座に囲まれて、
自然の悪意を踏みつけながら、歩く。
わたしがあなたにもなるように、
あなたがそれ以外の人間にもなるように。




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劣化→再生
 榊 一威
 

、至近距離から打たれたような熱が一瞬で伝わる、のです、

昨日から今日へ不自然な角度で送られてくる劣化コピー、誰かの頭の中をぶちまけられたようなそれは、巧くできているが故に却下されシュレッダー行きの便に乗る、何度も繰り返しコピーされもはや、判読不能の用紙まであるそれは、使い古されたコトバを、時代を忘れ操るヒトたちに似ていた、明日にはもうキミは、劣化コピーになっているとおもうけれど―――、

雨がやまないのです、、、(ぼくは) どこにも、ゆけない、、、

塞がれた、扉はヒドく、
錆び付いていて、腐蝕化している、
(故に、開ける事ができない)
水の滴が、オチテイク音が、
めまぐるしく、続いて、(ぼくは)、今日のコトバに汚染されている、
、(けれど、何故か、イキテイル、、、)

降ってくる、雨が、皆を、さらってゆきます、事務的な処理が終わって、終末になろうとしている街で、硬いコトバが氾濫している、劣化コピーたちは、増殖し、シュレッダーに雨とともに流れて、排水溝へ消えていく、それを興味深く見守っているキミたちは、誰、ですか、純粋培養された原本なんですか、強くなっている雨音に、恐れ/恐怖を感じないんですか、、、、?

、熱を、ください、
扉が、ずべて、吸い込んでいく、から、
(ぼくは)、目をあわせる事も、できない、
爪に錆が、それは、振り払えなくて、
狂いはじめた滴の音、に、すべてを、はりつける、何処まで続くのか、
この街は、(劣化する汚染地帯、、は)

、未来へと世界は続くのに、街の下には、亡骸ばかりが、降り積もっている、

暗いグレーに染まってゆく街を、劣化したキミたちを、その亡骸を、踏みつけるように夜の帳がおりる、一定のリズムで降る雨が、道路をたたく音しか聞こえなくなる、僅かながら何故か、安堵している、そのとき何度も繰り返されてきた、歴史ですから、純粋培養が聞こえない声で言うのを見た、明日にはそれも消え去ってゆくのか、見届けるのが、役目だと云う、

速度(スピード)が速くなる、
時間が軋む音が、聞こえそうで、
(覚醒しかけている動物のように)
もし、次の、電車がきたら、(ぼくは)
乗ってみようかと、おもう、それは、(クラスタ)から、離れる、と云う事、)だから、いく、
、それは(キボウ、と、とっていただいて、構いません、、)

錆び付いた扉が、開かれてゆく、
それは、一筋の光とともに、



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時計の無い街
 及川三貴



これはあなたの息
匂う糊 舌で封した
透ける封筒に夕暮れ
誰もいない堤防沿いの


机の下で凍える紙
打ち捨てられた 仄暗い
空白が罫線を飲み込む
宙を踊る文字は


部屋を横切る記憶たちが
引く車 色褪せた膝掛けに
飛沫を彩って 見えない
窓の外で崩れ落ちる


細い腕の想像を唄う
熱に浮かされた軸
震える唇 力のこもった
溝の跡 描き始める鉛筆の
細く削られた先


透明な手紙
なゆた と記す 有限
指を暖めて硬い角を探る
午後の時報から
零れ落ちる
これはあなたの息
遠い場所 時計の無い
あなたの街



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三月と四月のこと
 ちよこ


よろこびいさんであなたのもとへ
よろこびいさんであなたのもとへ



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君は真っ直ぐです。君のまわり音が溢れ、いのち、目をはなさない。舞い散る途中の桜。おどるはるさき。君には聞こえるのでしょう。のばされた明るさ。袖落ちる蕾。君のまわりは酸素で溢れ、そろそろ水を、生成するころです。水素は軽やかです。

君には見えるでしょうか?


私が閉じ籠った生暖かい、垣根を越えた、此方側。不変の安らぎ、永遠の退屈。雪は灰色。塵の色。暗闇の割合は、森が決めます。ときどき、見えるのです。あちら側からひかりが漏れて、あなたの立体映像が、投影されます。その他は、すべて焦げたシチュゥの味です。

春が魔法をかけたので、あの冬はもう、おもいでのくにです。

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ゆらめいている。私はひとひら、名は知らぬ。貴方の寝息が私を与える。幾千の月。たとえば薔薇の鋭角をなぞるように、消えてゆきたいのです。正午の星。貴方がページをめくる重なりはどうでしょう。散るばかり、音色。鳴るは刻むこと。うたたねの中に取り残されたのはだれ。まるで蛍のしるし。貴方が目覚めるころ。ひとつだけ音を残してゆくこと。何色でもいいけれど、形はいらないわ。針先の和音。和紙のメロディが、一番あなたに似ています。飽和状態の切断。ながれゆく25時間。貴方の羽が孵るころ。



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君が僕を見て、僕が君を見て、震えた繊維のような空気を。そっと、僕だけの。空間の鮮やかさ。3グラム先の君が、3秒を数える私が、小枝の距離で揺らすように一歩、一歩。頬は染まっているでしょうか?

ぽつんと、降ってきた、君の口元から。もう一度確かめて、それから微笑んで、伝ってゆく。君の胸のあたり、少し痛くて、始まりのように真白い、冷気を撫でる、ウェーブの。隔てる霧を、近づくほどに暖かい蜃気楼を、水滴を纏う硝子窓から見つめること。君の軌跡に沿う、仕草を。

描かれた声を、ゆっくりと映し出す瞼を飲み込んで、力を込めた人指し指の先。



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泣き声を、そっと抑えて春になった君よ。

君から産まれ落ちた命の、最後の産声を聴いていますか。失うための声よ。瞬く命。長針の示す永遠を、何時か君に融けてゆく光たちの沈黙を、覚える用意はできましたか。

悲しみの、渾身の力で春になった君よ。

あのこ達の、なきがらが視えますか。止める時間は、かみさまが許さないのでしょう。吸い尽す痛みよ。いいえ。ほら今、抱きしめられたでしょう。

真っ直ぐに前を向き、春になった君よ。幾重にも誕生する君よ。

君の命の息遣い、聴こえる程に、春になった君よ。



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淡く薫る、百億がつまった土のあたりのこと。一面に散らばった時間の、蒼く光る欠片、その濃くにじむ世界で私達は、実ってゆくのです。そう、母と千切れたその瞬間から、私達はうたを知っておりました。

肌は段々と透けてゆくその蕾をさらい、歌は軽々とオクターブを越すその光合成を練り上げます。水を浴びては繰り返し、陽を浴びては繰り返す。夕立に似た回想。

だっていつも私達、精一杯泣ているでしょう?

産まれ落ちた記憶。抱えきれなかった気持ちたちが、見えない空気から溢れだして、振り返る仕草。それは私達の中に還ってゆきます。そうして、見向きもせずに、まだ見ぬ空の、流れつく果てを、想いやるのです。

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ひかりの縞が、ほんとうにこまかいひかりの震えが、大きな腕の脈を透かして泳いできます。虚海の仔らは、一心にからだを揺らし、そのひかりを抱きしめようとするのです。私は、瞑った瞼のあたりからしかそのひかりを感じることが出来ないので、指先で湿ったおとをたてつづけます。

瞬くその毎に樹々はいのちの蔭をより一層濃くして、私のからだばかりが透けてゆきます。波の上をさらうような一歩を差し出す度に、くしゃ、と聞こえてくるのは生命のおとでしょう。私はすこしだけ思い出して、時間の濃い方へと歩いてゆきます。それはそれは、遠い時間です。

たどり着いた沈黙の、かつて父だった大樹の懐です。私はその、おとを吸い込んでゆくとめどない穴にひとつ、私の一部を遺したままで目をさまします。

ひとの涙は、きっとこういう風に見えるのでしょう。見つかるたびに、輝いてゆきます。

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必死にふくらんでる
水晶体のほつれたひかり
すこしこらえて
ふたえまぶたの線路
思い浮かべてぎゅって
膨張した
一定の速度で

ちいさな
ちいさな私の右手のつなぐほう
詰まってる切れ切れの雲でできた脊髄のその
重たくてだらり
指先に胚がたまってる

さみしいを
段々と
分かってく
私の髪
のびるのが遅くて
すくのをやめられなくて

誰でも知ってる歌の中探した
探し続けた


ひとつまばたいたなら
みんなおとなになっているから
きみ
ひとふさ髪をちょうだいな
瞼に縫いつけて
離れないようにするの

何時か、ねえ何時か
私の睫毛
そっくり自転にほどけたら
そのときは、そのときは
一緒に思い出してくれる?







(未詳24編集部注・読者リクエスト多数につき再掲)

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詩レス帳より 2
 ピクルス

 
ルーシーは体温計をくわえて
白い西瓜の歌うたう
古いフランス映画の
くすくす笑い

スロゥでゆこう
有限の家族達
水になってゆく母の流れ
チークを覚えた妹のよそよそしさ
何一つ喋れない背中になった父

公園に行こうよルーシー
新しいミュール連れてって
甘く優しげな眉を描いて
たくさんドロップスを握って

砂場では
少女が独りで遊んでいた
まあ、ひとりぽっちで可哀想に
と呟いた私に
涙が溢れた
その子は
何年か前の確かに私なのだ

爪を噛んで
耳に決意の穴を開けたルーシー
したり顔で天才の地図を広げた
アタマは軽く
紅い口は重い
ツングースのウォッカ片手に
生暖かさに毒づいて
しょっぱい湿原を
滑るように駆けてゆく
カバン語でしか口説けない
若鹿みたいな性欲のルーシー
漏らしてばかりのルーシー
また血が燃える
勿体ぶったりしないルーシーアクセル握ってルーシービンを飲み干してる

 


--------------------------------------------------------------------------------

 
春を待つ人の
平凡な掌を
笑わないでくれ
祈るように結んで
綻びてゆく花の夢に
殉じては浮かぶ

違う名前で呼ばれた夜
薔薇色の妖精達は
ひとりずつ消えていった

初めて海を見た子のように
頬を憧れで染めていたの
もうあまりに遠く
君が誰かの名を口にする度に
夜が長くなった

真っすぐに立ってみたら判る
透けて見える
透けてよ

見える

そしてあなたは
いつか私は
相変わらず
と云いながら
螺旋階段を
少し離れて降りて
駐車場で別れた
何か云いかけて
思い留まって
膝が震えていた事
気付かれなかったらいい
ちゃんと笑えていた

それだけで
生きていた甲斐はある
沈んだら
二度とは浮かべない
漂いながら
ようよう息をする
凍えている者には
春が待ち遠しくて
それでも
冬にしか咲かない花を
我が子のように抱き締める

 


--------------------------------------------------------------------------------

 
待っているのは花びらか
舞っているのは枯れ落葉
風向きに
必ずしも従順でないのなら
棄てる事だって簡単だろうよ荒野
種子を蒔いてゆけ
白鳩のようなショーツを濡らせ
棄てる事
それさえも諦めて

眠っている花を
いとおしく想った事を忘れないで
その寝顔を護りたいと
ひたむきに誓った少年は
けして老いたりしない

カナリアを鳴かせて
それを美しい音色だと
一晩中、褒めた
男の指は速いジャズピアニストになった

棄てるより
拾う事の方が難しい
覚えるよりも
忘れる事の方が容易い

まだ早過ぎる
いつかわかる
いずれわかる
でもそれからでは間に合わない

 


--------------------------------------------------------------------------------

 
古い駅舎では
ディーゼルの音がする
門出というホームでは
去りゆく人が
向かいゆく人が
遠慮なく笑い
俯いて泣いて
しがみつくように惜しみながら
晴れた日を祝おうと
荷物の重さと軽さに
静かに耐えている

発車のベルの後に
沈黙と溜息が残る
未だ漂っている笑顔の残像に
不覚にも手を伸ばそうとしたり
懐かしい声に振り向いて
肩を竦める

列車の窓から
電信柱を数えた
見た事があるような
生まれて初めて見る山の稜線
僅かに緊張の頬杖をついて
昨日を考えた
今日を考えた
明日を想った

時間という怪物の
距離という果てしない尻尾
揺れている景色は
いつしか暮れて
列車の窓の灯りは
連なった流星みたい
夜の闇に抱かれて
裁定者の息から遠く遠く

希望を残らず燃やした者達は
二度と泣くことはない
絶望とねんごろになった奴等は
誰も星の数を数えない
夜の上に星がある
曖昧に
けれど精一杯に笑って
もしも尋ねられたなら
しあわせですから
と答えるのだ
そこから先は
知らなくても
そこから先は
云えなくても

今夜は遅いよ
もう寝なさい
ごらん、
まどの外は春色だよ
おやすみなさい、あなた
おやすみなさい、きみ
おやすみなさい、せかい


 


--------------------------------------------------------------------------------

 
紙を捻ると
無限宇宙
隙間から覗けば
深い夜の花が咲く

紙は白い
白い白い白い曲線
閉じられてゆく水平線から
開いてゆく影は生まれる

負けないでね
と囁く漫画の少女は
何処から来たのだろう
巻貝の螺旋の不思議
絵具を混ぜる時の天才の気分
近代の四辻を曲がる郵便配達の赤い自転車

葉書は白い
封筒は白い
宛名には
優しい字が

添えられた花と
墓碑銘の由来と

来るはずのない手紙を
待っている
そんな暮らしも
悪くない
と、笑った

 


--------------------------------------------------------------------------------

 
ウソツキ少年を
少女は庇った
生に執着などなく
夢の花に水を遣っていた
父は死んだから
母の名は知らないから

どんなことでもした

人を騙した事もあるよ
体の痛みなんて
平気な顔で笑った
お風呂に入りたいから
誰とでも寝た
男たちは
二通りしか居なかったな

すぐに脱がせたがるか
咳払いして説教を始めるか
それからする事は
おんなじだったけど

気持ち悪くて吐いた
医者は変態だった
警備員はニヤニヤした
憎しみばかりが大人になっていった
雨に濡れた猫を蹴った
ベンツに針金で傷を付けた
公園のアベックに爆竹を投げた
小学生をカツアゲした

もぎりの目を盗んで
新しい映画館に忍び込んだ

くだんねーアニメを観た
くだんねー
くだんねー
くだんねー

映画館から出たら
泣きながら
教会に向かった

お祈りはしなくてもいいよ
と云われて
おかあさんみたいな人が
あったかいスープをくれた
一匙、こくんと飲んだら
また泣けてきた

 


--------------------------------------------------------------------------------

 
誰のものにもならない
ピンクグレープフルーツ
距離を測って
引力について考える

誰のものでもない
ロシアンミルクティー
嘘と知りながら
しがみついて舌を出した

誰のものにもなる
モカブラック
重い本を抱えて
口を閉ざした

外に出てごらん
宝石みたいな貝殻から
外に出てごらん
誰の上にも
等しく空があって
等しく雨は降って
暮れてゆく空はやがて
濡れてゆく星はいつか

臆病な言葉は
夜更けの電柱に呑ましちまえ
恥ずかしいのは
自分を守ろうとするからだ
曖昧に笑う狐の面を被るな
真顔で唱歌を歌った頃の気持ちを忘れるな
顔を上げて
お尻を振って歩け

ドレスのような花が咲いた夜
火薬の匂いがして
滴れてゆく花びら
幾匙もの光に
面影を浮かべて
誰でもない誰か
誰でもいい誰か
喚んでいる
喚ばれている

それは夢の話
これは夢の話
 


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