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鉛色の空の下で
濁った川がよどんでた
生まれたとき氷よりも
冷たい視線を浴びた
憎しみすらない無表情な声
むごいほどの同情
支配するものが理解しないなら
ここで終わる約束
地を這うもの 血を継ぐもの
文盲(もんもう)の系図を背負う
・
・
明日も多分ここに立って
あなたのことを待つだろう
言い尽くせぬ思いだけが
静脈の血の色になる
記憶をたどれば 恐ろしい残滓
半固定の深海
進化するものが認可しないなら
逆行する法則
地を這うもの 血を継ぐもの
学名のない悲しみ
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00127
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川のなかを見てごらん
野をゆく川を
透明な水のなかを
泳いでいるよ
覚めたくない夢だよ
つかまえようよ
たぶんみんなこうして
歩いてるよ
・
・
人の汗を見てごらん
貴い汗を
愛する家族のために
働いてるよ
気高すぎる夢だよ
なんにも言わず
疲れている瞳で
笑ってるよ
・
・
流れる血を見てごらん
慈悲深い血を
命の重さを伝え
チューブを走る
かけがえない夢だよ
生きていこうよ
分けられない痛みも
分けたいんだよ
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00126
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少女は
母の持ち物の指輪を
そっとはめてみる
誰もが
そんな悪戯を
通って生きてきたんだね
臆病とか怯懦(きょうだ)とか
どうでもよかった航跡
・
・
扉を開けた 三面鏡
禁忌と慚愧(ざんき) 交差する
残酷よりも甘美な血
集めて輝く宝石
恭順(きょうじゅん)とか彌縫(びほう)とか
どうでもよくなる光量
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00125
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生まれてくるとき
母の声を聞く
洗礼(先例)をうけて
ひとの世に入る
幸あれと
祈りの声
平穏(やすらぎ)は
二度と来ない
・
・
滑らかな肌をもって
生まれれば
不幸せなどは
知らずにいたものを
休めよと
産土(つち)が告げる
「滑石の色をあげる」
欲しいのは
滑石の‖‖‖
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00124
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薫風<くんぷう>は森を抜けて
海に還っていった
おのおのの家の窓に
愛が湯気をたてる
とどけ歌声
この挨拶
ありがとう また
この挨拶
・
・
淋しさに親しむほど
人は優しくなれて
夕暮れに頭<こうべ>垂れて
明日の歌に変える
とどけ歌声
この挨拶
途切れるな まだ
この挨拶
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・
慧眼<けいがん>の人の胸に
瓔珞<ようらく>の音を聞き
清浄の掌<たなごころ>に
寳珠<ほうじゅ>輝くを観る
とどけ歌声
この挨拶
まぎれるな まだ
この挨拶
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00123