エターナルゾーン日記板


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[47] By TUINDAYO
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 マーサが壁際の棚を押すと、古びた床板が低い音を立てて横へ滑った。

 その下に現れたのは、地下へと続く石造りの階段だった。

 冷たい空気がふわりと吹き上がってくる。

「!」

 レインは思わず身を乗り出した。

「これは..階段ですか?」

 ルーデルが恐る恐る覗き込む。

「うちの亭主の趣味でね」

 マーサは肩をすくめた。

「妙な実験ばかりしてたんだけど、仕舞いには地下に実験室を作っちゃってさ。外へ続く通路もそこにあるのさ」

「へぇ〜...って!」

 感心しかけたレインが慌てて首を振る。

「驚いてるバヤイじゃない!」

「早く向かいましょう!」

 ルーデルが焦ったように言う。

「シービィとジービィはここに居な。誰か来たら私のことは伏せておいてちょうだいね」

「らじゃっ!」

 ジービィが勢いよく敬礼する。

 シービィも小さく頷いた。

「..ん」

 こうして四人は地下へと降りていった。

◇

 階段を下りるたびに空気が冷たくなる。

 石壁には古い染みが浮かび、どこからか薬品のような匂いが漂っていた。

 足元は薄暗く、ところどころに奇妙な器具や木箱が積み上げられている。

「きゃっ!」

 ルーデルが何かに足を引っ掛けた。

「わわっ!」

 レインが慌てて腕を掴む。

「す、すみません...」

「暗いから気をつけな」

 先頭を歩くマーサが振り返った。

「とは言っても私も入るのは二度目でねぇ。まったく相変わらず悪趣味な場所だよ。どこに何が置いてるかわかりゃしないわ」

 ルーデルは周囲を見回した。

 確かに人が住むような場所ではない。

 どこか狂気じみた研究者の巣穴という印象だった。

「そういえば..亭主って仰ってましたよね。その..姿が見当たりませんが..」

「あの人かい?」

 マーサは少しだけ遠くを見るような顔をした。

「訳あってラプトには居ないわ。それに息子のマーサル、娘のエマラも」

「へっ!?まさる!?」

 レインが思わず声を上げる。

 マーサは目を丸くした。

「なんだい、息子を知っているのかい? マーサルは今どこにいるんだい?」

「あ、あーー..」

 レインの額に冷や汗が浮かぶ。

「実はその..二年前から行方がわかんなくて」

「ハァー、そうかい」

 マーサは深いため息をついた。

「まったくあの子ときたら。何をやってんだか...」

「ご家族なんですね」

 ルーデルが微笑む。

「マーサルさんの話はよく耳にします」

「あの子のことだから問題はないとは思うんだけどね」

 そう言った時だった。

 通路の先に淡い光が見えた。

「!」

 レインが目を輝かせる。

「何か見えてきた!」

「そろそろ着く頃ね」

◇

 一方その頃。

「いやー、それにしても助かったッス!」

 サンは床に腰を下ろしながら大きく息を吐いた。

 リッカは壁にもたれたまま目を閉じている。

「別に」

 短く答える。

「私の為にした事だから」

 視線を眠るエレナへ向けた。

「...しばらくは起きなさそうね」

「心配ッスねぇ...」

 サンは拳を握る。

「ぐぐぐ!キースめぇ〜! 許せないッス!!」

 その時だった。

 コンコン。

 どこかから妙な音が響く。

「ホヨ?」

 サンの耳?がぴくりと動く。

「なにか聞こえたッス」

「?」

 リッカも首を傾げた。

 サンは床へ耳を当てる。

「この地面から...」

 次の瞬間。

 ドゴオッ!!

 床が爆発したように吹き飛んだ。

「ヒャーーー!!」

 サンが空へ吹っ飛ぶ。

 土煙の中からマーサが顔を出した。

「手入れしてなかったからこんなもんかね」

「す、すンごい怪力...」

 レインが呆然と呟く。

「エレナさん!」

 ルーデルが駆け寄る。

 その横でリッカの瞳が細められた。

(白に銀の混ざった髪...

 こいつで間違いないわね)

「モォーっ!急に何するッスか!」

 サンがぷんぷん怒りながら立ち上がる。

「わーバカッ!早く隠れて!」

「イタタタタ!腕も足も耳も目もとれるッス!」

「耳どこだよ!」

 再会早々の大騒ぎだった。

 その様子を見ていたマーサが、ふとサンへ近付く。

「へぇ〜、本当に話すんだねぇ」

 ぺたぺた。

「へっ?」

 レインが目を瞬かせる。

「あひゃっ!」

 サンが変な声を上げた。

「く、くすぐったいッス〜///」

「サンちゃんを見て驚かないなんて..」

 ルーデルも感心したように呟く。

「情報屋なめんじゃないよ」

 マーサは鼻を鳴らした。

「話すゴブリンの事なんてとうに耳に入ってるさ」

 そして通路の先を指差す。

「さあ、ここをまっすぐ行けば本物の市街地さ。そこならキー坊の影響力は弱まる」

「ありがとうございます、マーサさん」

「さて!」

 マーサは踵を返した。

「私は子供たちが心配だし、そろそろ戻るとするよ」

 しかし去り際。

 リッカの前で足を止める。

「...っと、そこのあんた」

 リッカは無言だった。

「もしかして...」

 一瞬だけ空気が張り詰める。

 だが。

「いや、そんな訳はないさね」

 マーサは首を振った。

「それじゃあ皆、気をつけるんだよ」

◇

「エレナ、大丈夫なの?」

「大丈夫よ」

 リッカが答える。

「麻痺と睡眠の薬を入れられただけだから」

「それは大丈夫とは言えないと思いますが...」

 ルーデルが苦笑した。

「オイラたちこの人に助けてもらったッス!」

 サンが胸を張る。

「そうなんだね!」

 レインは笑顔を向けた。

「僕の名前はレイン」

「ルーデルです..その、よろしくお願いします」

 リッカは二人を眺める。

 しばらく沈黙。

「ふぅーん...」

「?」

 レインが首を傾げる。

 リッカはあっさりと言った。

「期待はずれね」

「え?」

「すごく弱そうだわ」

「なっ!」

 図星だった。

 リッカは興味を失ったように背を向ける。

「まあいいわ。ここにいれば見つかるのも問題」

 そして歩き出した。

「さっさと行きましょ」

 レイン達は顔を見合わせる。

 こうして新たな仲間との奇妙な旅が始まった。



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[返信] [編集]2019 03-06 00:36 [pc]

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