エターナルゾーン日記板
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[69]
By TUINDAYO
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家の中は静かだった。
つい先ほどまで泣き声や話し声で満たされていたはずなのに、今は妙な静寂が広がっている。
エマラがもう帰ってこない。
その現実が、この家全体へゆっくりと染み込んでいくようだった。
マーサルは俯いたまま動けずにいた。
握った拳に力が入る。
爪が掌へ食い込む。
それでも痛みは感じなかった。
すると。
「マーサル!」
鋭い声が飛ぶ。
思わず肩が跳ねた。
「か、母ちゃん!ごめっ..!」
反射的に謝罪の言葉が口から出る。
だが。
「...ありがとう」
そっと伸びてきた手が、マーサルの頭に触れた。
「え...」
マーサルは顔を上げる。
マーサは涙を浮かべながら微笑んでいた。
「あんたは充分やったよ」
優しい声だった。
「自分を犠牲にしてまで、本当によく戦った」
その言葉に、胸の奥が強く揺れる。
「母ちゃん..!違うんだ、俺は..!」
否定しようとする。
だが言葉にならない。
すると。
「おかえり!」
ジービィが泣きそうな顔で笑った。
「おかえりなさい」
シービィも小さく言う。
マーサルは二人を見た。
「シービィ、ジービィ..」
マーサはそんな息子を見つめながら静かに言った。
「マーサル、無理しなくてもいいのさ」
その声は母親そのものだった。
「辛いことも悲しいこともあっただろう」
優しく背中を撫でる。
「..全部、吐き出しちゃいな」
「〜〜!!」
堪えていたものが溢れそうになる。
だがマーサルは唇を噛み締めた。
涙だけは見せたくなかった。
けれど。
その温もりがあまりにも懐かしくて。
あまりにも優しくて。
どうしようもなく苦しかった。
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「そうかい...もうエマラは..」
マーサが静かに呟く。
ジービィは両手で口を覆った。
「そんな...」
シービィは俯いたまま何も言わない。
「....」
マーサルは拳を握る。
「俺はたった一人の姉を守れなかった」
喉が焼けるようだった。
「そしてディーティーも..」
マーサはしばらく黙っていた。
やがて。
「エマラは..」
ゆっくり口を開く。
「安らかに逝けたのかい?」
マーサルは目を閉じた。
最後の光景が浮かぶ。
エマラ。
ディーティー。
二人の笑顔。
「..ディーティーに抱かれて、逝った」
静かな答えだった。
マーサは小さく頷く。
「それは嬉しかっただろうね..」
涙を拭う。
「明日にでも、せめてお墓をたててあげよう」
そして。
「シービィ、それにジービィも」
二人へ視線を向ける。
「少しマーサルと二人にしてくれるかい?」
「はーい!」
ジービィが返事をする。
「ん」
シービィも小さく頷いた。
やがて二人は部屋を出ていく。
扉が閉まる。
残ったのは母と息子だけだった。
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「どうしたんだよ、急に」
マーサルが首を傾げる。
マーサは少しだけ笑った。
「まあなに..ちょっと話をね」
「?」
「あんたがエマラを助けるために動いてたのは分かったよ」
マーサは椅子へ腰掛ける。
「私はね、情報屋をしてんだ」
「情報屋?」
意外な言葉だった。
「わたしなりにエマラを助けようと動いていたのさ」
静かな声。
「情報屋をしてればあんたのことも分かると思ってね」
マーサルは苦笑した。
「俺も少しは有名になったんだぜ?」
「そう、そこさ」
マーサの表情が真剣になる。
「?」
「私は色々な人から情報を集めた」
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「もちろんその中にはスナンタウンに強くコネを持っている人もいたさ」
だが。
「でもね」
マーサはマーサルを真っ直ぐ見た。
「あんたとエマラに関する情報は、一つとして得られなかった」
「!」
「あんたが有名になっていたことすらも私は知らなかった」
マーサルの顔から笑みが消える。
「なにか引っかかると思わないかい..?」
沈黙。
そして。
「まさか..情報操作?」
マーサは頷いた。
「恐らくね」
マーサルの脳裏に一人の男が浮かぶ。
「そんなことできるやつ......」
言いながら。
答えは既に出ていた。
「...居るな」
低い声だった。
「誰がそんなことを?」
マーサの問い。
だがマーサルはすぐに答えられない。
「いや..それは」
「マーサル」
マーサの声が遮る。
「話しておくれ」
母親の目だった。
「私はもう守られるだけの存在じゃないんだよ」
静かに言う。
「あんたと同じ気持ちさ」
長い沈黙。
やがて。
「...親父だ」
マーサルは呟いた。
「!」
マーサの目が見開かれる。
「情報操作を行うにはおそらく多額の資金と人脈、一定の地位がいるだろ?」
マーサルは俯いたまま続ける。
「それに個人同士ときた」
拳が震える。
「...あいつならやれる」
「で、でも」
マーサは戸惑う。
「それだけであの人を疑っちゃ..」
「疑う必要なんてない」
マーサルは即答した。
迷いはなかった。
「あいつは俺の親父で」
目を閉じる。
「母さんの夫だ」
そして。
「...確実なんだ」
マーサは何も言えなかった。
「あんた..まだあの人のこと」
言葉は途中で途切れる。
マーサルは立ち上がった。
「そろそろ寝るわ」
振り返らない。
「おやすみ」
「....」
マーサは黙ったまま息子の背中を見送った。
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懐かしい部屋だった。
扉を開けた瞬間。
幼い頃の記憶が蘇る。
「部屋も..綺麗になってる」
ベッドも。
机も。
本棚も。
何も変わっていない。
いや。
変わらないようにしてくれていたのだ。
「ずっと掃除もしてくれてたんだな」
誰もいなかったはずの部屋。
それでも。
帰ってくるかもしれないと思って。
ずっと。
「ふう...」
ベッドへ身体を投げ出す。
柔らかい感触が背中を受け止めた。
天井を見上げる。
暗闇の中。
一人になる。
すると。
心の奥に押し込めていたものが顔を出した。
(俺は一体いままでなにをしていたんだ)
エマラを救えなかった。
ディーティーも失った。
何も守れなかった。
(やるべきこともできずにノコノコと帰ってきた)
胸が痛む。
(..最低だな)
誰もいない部屋で。
マーサルは静かに目を閉じた。
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[返信] [編集]2019 04-04 00:58 [pc]
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