エターナルゾーン日記板


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[8] By TUINDAYO
ーーーーー商工会議所ーーーーー

夕暮れの風が広場を吹き抜ける。

誘拐犯の逮捕騒ぎも一段落し、商工会の人々は後処理に追われていた。

マーサルは広場の石段へ腰掛ける。

その隣にはティール。

しかしマーサルは珍しく黙ったままだった。

「なーにしてんのよ」

ティールが肩を小突く。

反応はない。

「聞いてる?」

マーサルはようやく口を開いた。

「肩が重い」

ティールは目を細める。

「マー!」

腰に手を当てる。

「女性に向かって重いとか、あんたほんとデリカシーないわねぇ!」

マーサルは呆れたようにため息をついた。

「お前に言われたかねぇよ」

「なによそれ!」

ティールは頬を膨らませる。

しかしすぐに表情を和らげた。

「それで?」

マーサルを見る。

「どうしたの?」

少しだけ真面目な声だった。

「上の空って感じだったわよ」

マーサルは視線を落とした。

脳裏に浮かぶ。

あの倉庫。

あの肌の色。

あの目。

『この体はオレのモンだ』

無意識に拳を握る。

「ティール」

「ん?」

「あのさ」

マーサルは言いかける。

「レインの――」

ガチャ。

突然扉が開いた。

「マーサルくん」

二人が振り返る。

そこにはジタが立っていた。

マーサルは立ち上がる。

「ジタさん?」

ジタは頷いた。

「ラウスさんから連絡が入った」

マーサルの表情が変わる。

「!」

「君が探していた方が見つかったよ」

「本当ですか!?」

思わず身を乗り出す。

ジタは静かに答えた。

「ああ」

「今どこに?」

「ラウスさんの店だ」

マーサルは安堵の息を吐いた。

「よかった……」

ジタは小さく微笑む。

「早くその子と会わせてあげなくちゃな」

「はい!」

マーサルは急いで駆け出した。

その後ろ姿を見送りながら、ティールは首を傾げる。

「ねえ」

マーサルが振り返る。

「なんだ?」

「さっき言いかけたこと」

ティールはじっと見つめた。

「レインくんがどうかしたの?」

マーサルの表情が一瞬だけ曇る。

だがすぐに笑った。

「いや」

首を振る。

「なんでもない」

そう言って背を向けた。

ティールは納得していない顔だったが、それ以上は追及しなかった。

――――――――――

ラウスの鍛冶屋。

店内には鉄と炭の匂いが漂っている。

ラウスは腕を組みながら男を見ていた。

「まったく」

ため息をつく。

「急に商工会が来たと思ったら、あんたを探してるとはな」

男は申し訳なさそうに頭を下げた。

「す、すまない……」

ラウスは鼻を鳴らす。

「方向音痴も大概にしろ」

「耳が痛いよ……」

「まったくだ」

ラウスは椅子へ腰掛けた。

「しかし最近の商工会は大したもんだな」

男が顔を上げる。

「そうなのかい?」

「ああ」

ラウスは頷く。

「昼間も盗賊団を捕まえたそうだ」

鉄槌のような拳で机を叩く。

「まるでバスカリア警察みてぇだ」

男は感心したように息を吐いた。

その時。

コンコン。

扉が叩かれる。

「入れ」

ラウスが言う。

扉が開いた。

「ラウスさん、お久しぶりです」

聞き慣れた声。

ラウスの顔がほころぶ。

「おう」

「マー坊じゃねぇか」

マーサルは苦笑した。

「その呼び方やめてくださいよ」

「なんだ」

ラウスは笑う。

「寝坊助は直ったのか?」

「うっ……」

マーサルは顔をしかめる。

「昔の話でしょう」

「はっはっは!」

ラウスは豪快に笑った。

その声に反応して。

奥の部屋から小さな足音が聞こえた。

タタタッ――

「レイン!」

男が立ち上がる。

レインも目を輝かせた。

「お父さぁん!」

勢いよく飛び込む。

男はしゃがみ込み、その小さな体を抱き締めた。

「心配したんだぞ」

「ごめんなさい……」

「無事でよかった」

レインは嬉しそうに笑う。

その様子を見ていたラウスが腕を組んだ。

「こりゃ感動の再会ってやつか?」

マーサルは吹き出す。

「半日離れてただけですよ」

「バカ言え」

ラウスは首を振る。

「親子の絆は深いもんだ」

一瞬だけ。

マーサルの表情が曇る。

ラウスは気付いたが何も言わなかった。

代わりに大きく手を叩く。

「さあ!」

店内に響く声。

「立ち話もなんだ!」

ラウスは厨房を指差した。

「夕飯にするぞ!」

レインの顔が輝く。

「やった!」

男も安堵したように笑った。

しかしマーサルは頭を掻く。

「俺はまだやることが……」

ラウスは即座に遮った。

「何言ってやがる」

鋭い視線。

「お前も食っていけ」

「いや、でも――」

「食っていけ」

有無を言わせぬ声だった。

数秒の沈黙。

そして。

マーサルは観念したように肩を落とした。

「……分かりました」

少しだけ笑う。

「お言葉に甘えさせてもらいます」



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[返信] [編集]2019 03-05 23:28 [pc]

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