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[4]ユーロ(PT002)

【私闘の末】


ガッチリ、空飛ぶ何かに捕まった僕は、自然落下ではない感覚で急降下していました。
雲海も抜け、やがて眼下に広がるのは白い山々。
そして肌を刺すようなピリピリとした寒さ……雪です。顔に当たるこの寒さと雪が地味に痛い。
僕を捕らえているその鳥らしきモノは、スピードを少し緩めながら更に降下していきます。

……これなら上手く雪の上に着地出来るでしょうか?
あのまま自然落下で海に落ちてくれるのが一番理想だったんですが、まぁ雪でも大丈夫でしょう……凍ってなければ。

そうと決まれば善は急げ。
幸い両腕共に自由。
愛用のリヴォルヴァー二丁は腰にあって取れませんが、何とか懐にあったサバイバルナイフは取れました。
それを逆手に右手で持ち、出来る限り体を捻ります。

下からではありますが、初めて自分を捕らえた犯人をみました。
灰色の皮膚に、翼はコウモリに似ています。
翼の先に小さな手があり、しっかりした足も二つ。
大きな体躯ですが、全体的に細身。
あの高さを飛んでいたのですから、見た目より丈夫なんでしょう。
これなら多少傷つけても、落下するのは僕だけで済みそうです。

「ごめんよ、っと。」

そう呟くと同時に、ナイフで僕を掴んでいた足に一線。
驚いたソレは、上手い具合に僕を離してくれた。
そして再び訪れる重力落下。
さっきと違うのは、仰向けということ。
小さくなっていくソレと、雪の降る灰色の空を見ながら、僕の空中旅行は終わった。



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110923


2011-9/20 18:34[レス/]

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