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「馨ちゃんっ、なーに見てるのっ?」 「ん、西園寺さん。いつ見てもキレイってか可愛いよね、あの人…」 「…またかいな。西園寺って、あんな細いのにEカップなんだってよ」 「いっ…いいよそんな情報っ!!」 「あっ顔赤〜い。馨ちゃんかーわいいー」 「赤くねぇ!可愛いくねぇ!」 教室でじゃれ合う俺達二人。こんなやり取りは日常茶飯事で。 毎日毎日飽きもせず俺に話し掛けて来る、この厚かましい男はクラスメートの寺内雅樹。 成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群という人造人間のような完璧な男。しかし性格に問題有りだと俺は思う。 でもやっぱり雅樹は男からも女からも人気があるんだけど… 俺はそんな雅樹を長い事好きだ。 その辺の雅樹ファンと一緒になりたくないし、何より今のこの関係を崩したくないから、好きだなんて言わない。 今の『友達』の立場で満足してる。 だって、誰よりも雅樹の近くにいれるから。 「明日から定期考査だ。教材持って帰ってちゃんと勉強しろよー。以上ST終わり。さいならー」 帰りのSTが終わり、全校生徒が帰宅する。定期考査が始まるため部活もなく、一斉下校のような光景。 俺もいつも通り一人で、その流れにのって帰宅。 「ただいまー」 「お帰りー」 玄関から部屋に直行してスウェットに着替え、勉強用具を取り出す真面目な俺。 「…明日は…うげェっ日本史と英語かよぉ………アレ?…アレッ?日本史ねぇじゃん…」 ∇ 「…ったく、家から学校近くてよかったぜぇ。日本史さすがにノータッチって訳にいかねぇからなぁ…」 なんて一人ごちながら、先程通ったばかりの道を戻り、校舎に入り、自分のロッカーの中にあるはずの日本史を探していた。 「…馨ちゃん?」 「あ、雅樹」 廊下にあるロッカーの前にいるスウェット姿の馨を見て、雅樹は驚いた表情で突っ立っていた。 「何してるの?スウェットだし…」 「忘れ物取りに戻って来た。雅樹こそ何してんだよ?」 「生徒会ー。もうすぐ文化祭だからってなぜか俺だけ残された…」 あ、そうそう。雅樹は会長やってんだった。今年は前後期と一年間ぶっ通しで雅樹。行事が近くなると一層忙しくなるらしく、俺も手伝う事が多々ある。 「人手が足りなくなったら言えよ。俺が一人で3人分くらいちょちょいとこなしてやるからっ」 ガッツポーズをしながら雅樹に言う。 まぁ3人分とか口だけだけど…。とにかく雅樹の助けになりたいっていう健気なアレ、乙女心っての?…まぁ男だけどな。 「…ふぇっ…くしっ」 「馨ちゃん!そんな可愛いくしゃみして大丈夫?…スウェット一枚じゃ寒いだろ。風邪ひくよ」 「かっ可愛くね……っ」 と、いつも通り反論しようとしたら、なんか…よくわかんないんだけど…雅樹の腕に包まれてて…俺が。 「まっ…雅…樹?」 動けない。……俺より頭一個程背の高い雅樹が、あの雅樹が、俺を両腕でギュッてしてて…。 夢…か?夢なのか?夢なら覚めないでほしい。 「…馨ちゃん…反則…」 「え、何…が……っ」 俯いていた顔を上げて雅樹を見上げると、今度は唇が重なった。綺麗な形の雅樹の唇が…。 …柔らかい…。 「…抵抗しないの?」 うっとりと雅樹のキスに酔いしれていると、ポツリと雅樹が言った。 その言葉で、俺は現実に引き戻された。 「…っバッカやろっ…おっおっ俺は男だっ…こーゆーのはっ好きな女とやるんだっ!!」 …捨て台詞。 を吐いて、俺は校舎を出て家へと逃げ帰った。 実際目茶苦茶嬉しくて、抵抗するなんて事考えもしなかった。 俺の気持ち、バレたかな…絶対バレただろうな。 雅樹のキス、受け入れたんだぜ?目をつむって…もっと、してほしいと思った…。欲情した…。 「あんた、何してんのそんな所で」 母さんのその一言で、俺の余韻は打ち消された。 「…ッくしっクソーッ」 ∇ キーンコーンカーン… 「はい、明日も引き続き頑張りたまへ。解散〜」 軽い担任の挨拶でSTがすぐさま終了。またしても一斉下校となった。 俺はというと……泣きそうになりながら一人で、下校している人間を窓際で見ている。 なぜ泣きそうかと言うと 昨日は一日中、今日どんな顔をして雅樹に会えばいいか散々悩んだ。 なのに雅樹はというと…間違いなく俺を避けた。今までだったら朝も放課も毎回話し掛けて来たのに、今日は席についたまま。近くの奴と楽しそうに話していた…。 それに何よりショックなのは、今目にしている光景。 雅樹が、西園寺さんと帰ってる…。 確かに今日、何回か仲良さそうに話してた…。 あー…ヤバイヤバイ。涙が零れ落ちそうだ…。 あんな優しい笑顔…俺以外に向けるな…あの逞しい腕で、俺以外の奴を抱きしめるな…あの綺麗な柔らかい唇で、俺以外の奴にキスなんか…しないで……。 嫌だ…。こんなに雅樹が他の人のものになるのが苦しいなんて、思わなかった。嫌だ嫌だ嫌だ…。 …でも、俺は男で…この思いは報われなくて…。 雅樹には西園寺さんが似合ってる。ちゃんと笑って祝福しなきゃいけない…。こんな醜い嫉妬、消えちまえ…ッ!! 雅樹の机に俯せながら、泣いた。情けない…バカみたい…。でも、それほど雅樹が好きなんだって思い知らされて、余計に涙は止まらなかった。 ∇ 「…る…きろ…馨っ!」 「………ま…さっ!?」 「…何…してんの…?」 雅樹だ…雅樹が、目の前にいる。 夕方になっていて、外から差し込んでくる夕日で教室が赤く染まっていた。 「…寝て…た…」 泣いてたら、いつの間にか眠ったらしい。 瞼が重い。絶対腫れてる…。 「俺の席で…?」 「えっ…あっ…あ…」 「…泣いたの?」 「…違う」 「目、腫れてる…」 雅樹の綺麗な指が、俺の頬に添えられて、瞼をなぞる。 「寝不足なんだよっ」 「…嘘」 「嘘じゃねぇ…っ」 「涙の跡、残ってる」 …触るな…触るなよ…。気持ちが、言葉になって口から出そうになる。 そんな優しい目で、俺を見るな…。また、涙が零れそうになる……っ。 「なんで泣いてたの?」 「…泣いてない」 「俺が、馨を避けたから?」 「…っお前、やっぱり…っ」 俯いていた顔を上げて、言葉を呑み込む。…涙が言葉と一緒に出そうだったから。 「悲しかった?」 「…全然」 また顔を下に落とし、涙を堪えて答える。 「俺は辛かったよ」 「…は?」 「たった半日なのに、馨に触れられないのも喋れないのも辛かった」 「…じゃあ、なんでそんな…避けたりなんかっ…」 ダメだ。涙が溢れ出して止まらない。 「ごめんな…自分の事しか考えてなかった。急に避けられたら、誰だって嫌だよな」 「…訳わかんねっ…。俺は…雅樹が西園寺さんと帰ったりしてたのが…っ嫌だった…っ」 「…そんなに西園寺が好き?」 「……お前…バッカじゃねーの…」 ゴシゴシと涙を拭いて雅樹を睨む。 「俺が好きなのはっ…雅樹なのにっ…」 せっかく拭いた涙も、また溢れ出してどうしようもない。 「………え?…馨、顔見せて?お願い」 雅樹は両手で俺の頬を包み、優しく上を向かせた 「…っこんな事…言うつもりなかった…のにっ。雅樹がバカだから…っもう今俺が言った事全部忘れろ…っ」 涙でぐちゃぐちゃになった顔のまま、また雅樹を睨んで言った。 「嫌だよ。絶対忘れない。悪いけど、好きな子の告白とかはいつまでも覚えてるタチだから」 雅樹は優しく微笑んで、馨の涙を拭って言った。 「…は…?」 「…馨もなかなかの鈍感だと思うけどね。まぁそこが可愛いんだけど。…好きだよ、馨」 そう言うと、雅樹のあの綺麗で柔らかい唇が、重なった。 「…ん…はぁ…っ雅…」 重なるだけじゃなくて、深いキス。 「…馨、俺もう我慢できそうにないんだけど」 「ちょっ…ちょっと待て!!えっ…何?結局雅樹は俺の事…どう思って…」 ストップ!と両手を雅樹の顔の前に押し付けながら言う。 「だから好きだってば。もう…鈍感すぎ。俺はずーっと馨ちゃん好き好きオーラ出してアタックしてたんだ。もう大好きすぎて我慢の限界。今までどれだけ我慢してきたと思ってんの?責任とってよ」 そう言って椅子から引きずり下ろされ、床に押し倒された。 「責任とか知らな…っちょ、ここ学校…誰か来るって!」 「来ないよ。先生達も帰ったから俺達だけ。鍵もかけたし…ね、お願い」 この状態で『ね』とか言われても……… 「い…痛くすんなよ…」 雅樹のお願いを俺は断れそうにない。 「気持ち良くしてあげるからね」 目茶苦茶に眩しい笑顔。この笑顔が見れたら、もうなんでもいいか…なんて思うのは末期症状だろうか…。 結局、雅樹は西園寺さんとは何の関係もないらしく、俺は不覚にもハメられたらしかった…… □おわり
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