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双つ月の浮かぶ藍色の空を飛行していたところ、突如呼び出され、降り立った地上。この俺を相手にしながら、拒否権も何もあったもんじゃない、あまりに強すぎる執行力。 足下で淡く光る魔方陣に溜め息を吐き、こちらを驚いたように見つめる二つの蒼い瞳を見つめ返した。 「お前が呼んだの?」 声を掛けた瞬間、阿呆の如く半開きになっていた唇をハッとさせ、きつく結んでは再び動かし、弧を描かせる。 「彼方の國より出でし使者よ、我は汝を此の地にいざ止どめん。契約の標は今此所に、我に付き従え」 「あらぁ、随分懐かしい契約の詞(ことば)を使うようで」 幾白もの年月、聞かなかった呪縛の言葉を聞き、驚く。何処ぞの使われていない倉庫にでも呼び出されたのか、舞う土埃で汚れた服を軽く叩き、微笑む。 「良いだろう。我は其方に付き従おう。契約の主よ、我に名を。闘うための冠を――……」 淡く輝く蒼い光に、足を踏み入れた者の手の甲に口付ける。 「汝に名を授けよう。汝の名は――……オルフェウス」 その傷一つ無い白い手に牙を立てる。ぷつり、と血が零れ、甲の中心に浮上る痣。 『契約の儀は果たされた』 唇を離し、高らかに唄う。 我が主よ。 我は誇り高きの王族の子 我が血を以て けして破れぬ 堅き盟約を交わそうぞ。 我は主を裏切らぬ。 その御霊の 最期の刻まで。 長身の男は赤い眼を輝かせ、美しい闇に濡れた髪を風に揺らし、微笑んで。 「ま、まさかだけど成功したぁ!!」 「緊張感無いねぇマスター(契約主)。魔界の王子呼び出しちゃったんだから最初くらい顔引き締めてくださいな」 「無理無理ムリムリムリ!! みてよこの足、ガクガクしちゃってファッハァ!!」 「落ち着けって。威厳もクソも無いやマスター……あーもういーや」 とうとう地面にへたりこんだ少年の腕を掴み、立たせる。俺よりデカいのに、なんて頼りない主人だろうか。 「混乱してないで名前くらい教えてよ、マイ・マスター」 愚者の名を授けられた悪魔は、眉を下げて笑った。 続かない…………
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