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大嫌いな雪の日だった。 うるさいチャイムで偏頭痛に悩まされながら、銀介はノートを閉じる。悩み事があるとこめかみが痛くなるのは昔からだ。おかげでちっとも講義についていけない。三流大学なのだから、留年は免れたいのに。 放課後だったので帰ろうとしたところ、会いたくなかった相手に道を塞がれる。 「ちょっといいか」 端正な顔、すらっと伸びた背。淡泊な声だけで緋色とわかるのは重症だ。 人気のない校舎裏へ向かうと、緋色は迷わず切り出してきた。 「どうして俺を避ける」 ひらひら舞う雪を構いもせず、緋色は佇んでいる。 「避けて、ない」 共通の鈍い友人にすらばれている嘘をついてしまったので、当然緋色は眉をしかめた。 「もう一週間だ」 そう、七日前も小雪が降っていた。 遊びに行こうと待ち合わせていた緋色に駆け寄ったら、笑顔で迎えてくれた。やわらかくて慈しみ深い目。あれ以来、頭がおかしくなってしまった。 「気に入らないところがあったのか」 さみしがりやだからだろう、緋色はしつこく尋ねてくる。自分だけ避けられているのが引っ掛かると。偶然講義で隣に座って以来、緋色とは妙に馬が合う。 薄白く染まる景色に、言葉が溶けていけばいいのに。 「銀」 腕を引かれた瞬間、抑えていた言葉がこぼれた。 「狂いそうなんだ」 「銀?」 「緋色が、好きすぎて」 歪な感情だと知っている。同性に焦がれたことなんてない。 どうして緋色を好きになってしまったのだろう。体も心も独占したい。醜い嫉妬で振り回したくなくて距離を置いた。 ただ、嫌われるのが怖かったから。 「緋色が、大好き」 軽蔑されるだろうか。気色悪いと避けられてしまうかもしれない。 勢いで告白した惨めさを味わっていると、緋色の指が離れ、銀介の顔へ伸びた。 叩かれる。とっさに目をつぶると、降ってきたのは頬をなぞる優しい感触だった。 「馬鹿だな。そんなことで」 「え?」 「俺も、同じだ」 雪が降り積もると白黒になる世界が、寂しくて嫌いだった。 痛みも喜びも、分かち合う相手がいれば。 温かくなれると銀介は知った。
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