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右手にシェーバーを持ち、無邪気な笑みを浮かべて、佐渡が上からこちらを覗いていた。 「ねえ、イナ今どんな気分?」 恋人の佐渡は二つ年上の大学の同期であり、同じゼミに入った仲だ。 色の薄いマッシュルームカットに、白塗りの人が大きくプリントされたライブTシャツ、そのうち大きなひとつの穴になりそうなくらいぼこぼこ空いたピアスの穴、背中に背負った大きなギター、一目見た瞬間に「あ、コイツと仲良くするのは無理」と悟った。 自称とも他称とも、普通の人間である自分とは、全く違う世界の人間にしか見えなかったし、実際、出会ってすぐは衝突することも多かった。 それがなぜ、今こうして付き合っているのかは自分にもわからない。 佐渡は見た目の通り変人だった。 「その髪型は、どうしてそんなことになってしまったのか、DMCか、ビートルズか」と問えば、「アルベルトに決まってるだろ、004だよ」と答え、 「そんなにピアスの開ける必要があったのか、耳よりもピアスの面積の方が大きく見える」と問えば、「左右のバランスをとってたらいつの間にかこんな量になった」と答える。 ただの宇宙人だった。 こんな004というには髪の色が抜けきっておらず、均等という割にはやけに左耳のピアスが多い恋人は、やはり性癖もおかしかったのだ。 休日に佐渡の家で、ゴロゴロしながら過ごすのはいつものことだったのだが、佐渡が今にも死にそうな顔で頼んできたのはいつもとは大きくかけ離れていた。 「こんなこと頼んだら嫌われるかもしれないけど」 お前にも罪悪感とかあったんだな。 「イナの毛剃りたい」 「どこの?」 咄嗟に返事をしてしまい、自分も相当この宇宙人に毒されてしまったのだと悟った。 きっと毒電波でも出ているのだろう。どこの毛だろうが、そもそも剃らせる気はない。 「首から下全部」 語尾にハートが付いたような甘えた口調で、大魔王のようなことを言い始めた。 顔がそれなりに整っていて、様になっているだけに、余計に腹が立ってくるし、なおかつ恐ろしい。 「嫌です」 クレーマーのように話の通じない人間には丁寧に接するのが必要だと聞いた。 「どうしてもやりたい」 しかし相手は宇宙人だ。どうすることもできない。 「毛を剃ってツルツルしてるのが良いの?」 「剃ってる時に嫌がる顔してるのが良いの」 こんなに邪悪な生き物と戦えるような力は俺にはなかった。 「本当お願い、俺これからちゃんと言うこと聞くよ、だから剃らせて!」 「じゃあ今言うこと聞いてよ」 「嫌です!」 あからさまに言う事を聞く気がない宇宙人に、俺はもう白旗を降るしかなかった。 「もう、剃ってもいいけどうまくやれよ…?」 それから、喜び踊り狂った佐渡に、風呂場に連れて行かれ、剥かれ、潤滑油のようなものを足に塗っているなあと、目の前の惨劇を眺めているとあっという間に足の毛とお別れしていた。 「稲田君表情が乏しすぎるんだけど」 「お前も恋人にいきなり体毛剃らせてって言われたら、こんな顔になるんだよ」 「俺多分もっとノリノリで剃毛プレイできるよ、やりたい?」 「ごめん、遠慮しとく」 ノリ悪いなぁとぶつくさ言いながら、佐渡は俺の背中や脇といった上半身の毛も手にかけた。 すまなかった、俺の体毛たち、仇はきっととれない。 ぼおっと虚空を見つめながら、されるがままにしていると、奴は俺の下腹部にもヌルヌルとジェルを塗りたくり始めた。 「そこもやんの!?」 「首から下全部って言ったじゃん」 「言ってたけど、言ってたけど」 「お前もやっていいって言ったじゃん」 「言ったけど…」 抵抗も虚しく、丁寧に俺の前の毛は剃られていった。 そして、足を持ち上げられ、尻の毛も優しく剃られていく あまりの絶望が顔に浮き出ていたらしく「いいよいいよ、その顔もっと頂戴」と大魔王に気に入られてしまった。 「AVカメラマンかよ」 「じゃあお前は女優だな」 「せめて男優にしてくれ」 何の中身もない会話を続けているうちに、いつの間にか終わっていたらしい。 無残に散っていた俺の毛を佐渡が片付けていた。 俺はこの信じがたい出来事をいまだに受け止められず立ち上がれないままで居た。 そこに佐渡は追い討ちをかけるかのように「どんな気分?」と尋ねてきたのだった。 俺は佐渡とはサディストの当て字に由来しているのではないかと疑わずに入られなかった。 「犯された気分」 小さく、力なく、へたり込んだまま答えた。 すると佐渡は、 「よくできました」 と満面の笑みで返し一人で風呂場を去っていった。
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