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「これがハッピーエンドに見えるのか?」 彼の一言に、ぴきりと固まった昼下がり。DVDを取り出そうとしていた俺は、ぎぎぎと盛大な音と共に振り返った。もちろん、心の中の音だ。これがハッピーエンドに見えるのか、だと?確かに決して明るい内容の映画ではなかったけれど、それでも十分ハッピーエンドなんじゃないかと俺は思っている。 「何? お前にはハッピーエンドには思えないわけ?」 「思えねえな」 「はあ? どの辺が?」 「ラスト」 いやまあ、エンドって言うくらいだからラストだろうよ。だけど俺が聞いているのはそういうことじゃないだろう。好きだけど、好きだから、なんだこいつと思ったりするわけで。 「じゃあ、お前の言うハッピーエンドってなんなわけ」 「……やっぱり、帰ってくることじゃねえの?」 「帰ってくること?」 「そう。 それがどんなに困難で無理な事でも、それしかねえじゃん」 いやいやいや、その通りだよ。その通りだけど、その通りなんだけどさ、そんなの綺麗ごとじゃん。 見ていた映画は俗に言うお涙頂戴設定の戦争物恋愛映画だった。特攻隊員の男がその地で出会った人に恋をして、最後その人を守るために飛び立っていく。生きているのか死んでいるのかは描かれていなかったけれど、単純に考えれば多分亡くなっているだろうと想像するのは容易い。だけど、飛び立つ前に思いが通じあい、刹那的な時代で幸せになろうとする姿は究極のラブロマンスだ。この時代にこれ以上のハッピーエンドは無理だろう。 「だったらお前は、残された人がこれからの人生で最愛の人を失った喪失感と哀しみの中で生きていくことが幸せだと思うのか? 残していく側の人間が最愛の人を守れてよかったって死んでいくことが幸せだと思うのか? 確認もできないのに?」 「いやいや、そこまでは映画の話じゃないじゃん」 「だから、美談だって言うんだよ。 こんなに綺麗ごとじゃない思いや葛藤があったわけだろ。 死にたくない、この人の元に帰りたい、この人を幸せにしたい、この人と生きていきたい、って。 こんな時代だから口には出せねえだろうけど、そういうどろどろっとした感情が全然なかったなんてそれは嘘だな」 「……お前の愛って、重たかったんだな」 「悪かったな」 「そういうお前が、俺は好きだけど?」 少しばかり勢いをつけて抱き付けば、揺るぎない鍛えられた体で俺を抱き留めてくれる。 「知ってる」 「じゃあ、キスしよう」 と、うにゅっと口を突き出してみれば、上に乗りかかっていたはずの俺の体はくるりと反転し上から見下ろされる形になった。 「盛んな馬鹿」 下から見た端正な顔に、男前だなあと思っていれば優しい真綿の様なキスが降ってきた。 終
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