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 自白剤
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 ココは滅多に甘えることがない。
 それがキーラの恋人に対する不満の一つだった。
 寄って来てじゃれあったり喧嘩したりは日常茶飯事なのだが、それは時にはココの望みすら覆い隠す隠れ蓑になっていて、それを意図的に行っているココにキーラは次第に苛立ちを募らせ、今や爆発寸前になっていた。
 自分はココ一人を愛し抜く自信はあるし、金も権力も持っている。いくらでもココのためにしてやれるはずで、してやりたいのにその甲斐性が発揮されることはほとんどない。
 そんな時に妖し気な薬師から受け取った白い粉。
 無理矢理にでも頼らせるまでだ。とキーラは遠慮なくココのグラスに薬を落とす。
 キーラ勧めるものを疑うはずもなく素直に飲んだココは、やがて目をとろんとさせゆっくりとキーラの方を向いた。
 その頬には朱が差しており、ココが酒などでは赤くならないことを知っているキーラは笑みを浮かべるとココの頬をそっと撫でた。
「私はお前の望むことは何でも叶えてやりたい。何でも言ってみろ」
「言いたいけど、オレはお前に迷惑がかかるのが一番嫌なんだ。お前のことが好きだから、重荷になりたくない。それにオレはお前とはつりあわないから不安で‥‥って何でオレべらべらこんなにっ‥‥」
 真っ赤になって涙すら滲ませ俯くココ。
 なるほど、コレは自白剤だったか。
 ココの気持ちを無理矢理抉じ開けて聞きだした罪悪感は拭えないが、キーラはそれ以上に強い充足感を味わっていた。何よりココはめったなことで好きとは言わない。
「お前の気持ちはわかった。だが私はお前にもっと甘えてほしい。望みを言ってくれ」
「‥‥‥‥‥」
 ココは躊躇っていたが、おずおずとキーラの身体に手をまわし抱きしめる。
 そして、そっと耳元で呟いた。
「傍に、いてくれ」
 キーラは目を見開く。
 その言葉は何度も聞いた言葉だった。ふとした時に、抱きしめられるたびに、そっと囁かれ、無意識に沈み込んでいた言葉。
 なるほど、そうだったのか。これはお前の「甘え」だったのだな。
「傍にいるのは構わぬが、それ相応の報酬を頂くぞ」
 びくり、とココの身体が反応する。だが、力を抜いてまたおずおずと抱きしめ返してきた。
「そ、それでも、いい‥‥‥。オレも、お前、が‥‥‥」
 精一杯告げるココに、愛しさは募るばかりで。
 それ以上言わせるのは酷だろうと思い、キーラはココの襟首を掴んで引き寄せ震えるその唇を塞いだ。

 今夜は寝かせてやれそうにない―――







2007/03/20
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