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 相対性理論。赤血球カーニバル
© トマ 
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 R指定:無し
 キーワード:ヤクザ×少年
 あらすじ:ツンデレヤクザは不器用でした
▼一番下へ飛ぶ


貸しビルの二階、寿ファイナンス。
さほど広くない室内で一人の男が吹き飛んだ。
壁に背中から激突し、その場にうずくまる。
そんな醜態を見つめる4〜5人の男達。全員が法外な高利貸、寿ファイナンスの社員だ。

そして
うずくまる男に容赦ない蹴りを入れる大男が一人。

安部波継(あべなみつぐ)。
寿ファイナンスの社長にして、某指定暴力団の幹部。
浅黒い肌と日本人離れした大柄な体躯に短髪頭。
血も涙もない男。



寿ファイナンスでの血祭りから数週間前。
月明かりの室内で波継は少年を殴り飛ばしていた。
ベッドの上から転げ落ちる様を見ながら、ひどく動揺しているのに気付く。
理由。
解っていた。
だから否定する。
波継にとってそれは、弱さだからだ。
「いてぇ」
転げ落ちた少年のぼやきが耳に入った。
それと同時に、嗅ぎ慣れたニオイ。
生臭い砂鉄のニオイ。
ベッドの横に目を見遣ると、転げ落ちた少年の口元から一筋、血が流れていた。
血のニオイは野性の本能を刺激する。
そんな効果が顕著に現れる体質の波継。
少年に覆いかぶさる。密着する汗ばんだ身体。
放熱されかけていた体温は再び蓄熱され、高ぶらせていく。
「…ん…ぁ」
獣は貧る。骨の髄まで、血の一滴まで。
少年の意思を無視して、でもその意思に波継なりの答えを示し。
愛情を受けた事のない男はひたすらに少年の咥内と、流れ出る血を貧った。


車内に充満する血のニオイ。
心行くまで使えない部下を私刑し、気の済んだ波継は会合に出席するために部下の運転する車に乗っていた。
波継の着ている上等なスーツ、短い黒髪、靴。
それらに付着した憐れな部下の返り血。
そのニオイが運転手の鼻孔を不愉快にくすぐる。
我慢しきれず窓を開けようとした部下。その視界に偶然ある人物が入って来た。
「あ…」
迂闊にも、呟く。
そして運の悪い事に後部座席の男にも気とられてしまった様で。
きっとあのガキを送ってくとか言うんだろうな、と運転手は思う。
そして、もしそうなるなら車内のニオイと社長の返り血をどうにかしてからにしましょう、と助言するかな。
運転手はそんな事を考えながら浅い溜息を吐き出した。









2007/03/24
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