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 亀速度の恋愛論
© 衢佑 
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 キーワード:切なめ…?多少焦れったいかも。全く進展ありません。
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数十年間独りで生きていけると思っていた男は、数日間で他人の体温の有り難みを知る。
人に寄り添う事がこんなに心地よいとは。

もともと気の置けない仲間などひとりも居なかった。
仕事柄、人の恨みをちょくちょく買っていたし、人には言えないような事も平気でやるような人間だ。
誰かが寄り添う事など、ありはしないはずなのに。

「優しく笑うようになったわよ、あなた」
「はぁ?」
「あらやだ自覚無し?鈍い男ね」

何を言う、と突っ掛かろうとしたとき、その相手が嬉しそうに立ち上がった。
目標物を失った男は、肩透しを食らって少しよろめいた。

「ほら、あんたのおちびさん。迎えにきたのかしらね」

不貞腐れた男に向かって、女は小さく耳打ちした。
そのままぱたぱたと駆けて行く。
もちろんお目当ては例の小動物。

「あ、梨花さん…っわ!」
「いらっしゃい尚ちゃん。あの馬鹿のお迎えかしら?」
「誰が馬鹿だ、誰が」

女が抱き抱えていたものを、丁重に奪い取る。
驚いた小動物は、落ちないように男にしがみつくしかない。

「ちょっとぉ」
「うっさい」

帰るぞ、と言った男は、小動物を抱き抱えたまま店を出る。
端からみれば、年の離れた兄弟に見えた。

「妬いてんのかしら、あの馬鹿」

女はひとり、呟いた。

****

独占してるだの、束縛してるだの、冷やかしもいいところだ。
言いたければ好きなだけ言えばいい。
言ったところで俺はこいつを離すつもりはない。

「廉海さん!」
「降ろさねぇぞ?」

笑いながらそう言うと、腕のなかの生きものは、困ったように小さく笑った。

「…また変な噂が立ちますよ」
「別に。言いたい奴には言わせとけ」

稚児趣味だの衆道だの言われたところで、否定する気はさらさらない。
否定してしまったら、こいつに対する誠意まで薄れてしまいそうで、恐いのだ。

「見せ付けてやるよ」
「そんな、張り合わなくても」

ふわりと笑った表情は、自分じゃなくても独り占めしたくなるに違いない。
これはそういう吸引力をもった奴だ。

本当の意味で自分のものにできたらどんなにか

「…名前も呼べねぇのにな」
「?」
「いや、何でもねぇよ」



今の自分に許された事は抱きしめる腕の力を強めることだけ







……やっぱりこれって
続き物になっちゃうんですかね…(汗)








2007/05/15
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