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 夏色販売機
© 陸 
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 キーワード:ほのぼの 大学生 夏休み
 あらすじ:俺がなんで夏休みを削ってまでこんな事をしてるのか。それもすべて俺の隣に座ってるこいつのせいなんだ。
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「あぁーあちぃ」


「だな」


「なぁー」


「…何?」


「帰りたい」

「死ね」











【夏色販売機】










こんな糞暑い中、俺たちは作業着で販売機の前に立っている。


「なぁ、俺達何やってるわけ?」

「はぁ?何って、仕事。」


「そんなんわかってんだけどさー、ありえなくね?なんでこんな暑い日にこんなダサい作業着着なきゃいけないわけっ」


かんかんでりの日射し、今日の気温は34℃。

俺たちは田舎道にある人通りの少ない所にある販売機に、飲み物をつめている。


こうした仕事をしはじめてから今日で四日目。




「お前な、文句言える立場じゃないだろ。」

「だってよー、あちぃんだもんよ。」


「…誰のせいだ」

「俺のせいだっ!」

「死ね」

「あはははっ!」



人が一生懸命やってる隣で、地面に座り込んでるこいつ。こいつのせいで俺の有意義な夏休みは削られた。





「あぁー、あちぃ。
脱いじゃえ!」

「ちょ、おまっ」


そう言うと、さとしはツナギの上だけ下に下ろし、腰で結んだ後、中に着ていた半袖を脱ぎ捨てた。


「げっ」

「え、何?。!??うわ、まじかよー、ありえねーっ」


さとしの体にはたくさんの痕。


き、昨日の…



「まじかよー、たっちゃんのスケベ」

「はぁ!?」


「ま、いいけど。あぁー少し涼しくなった。」


パタパタと手で自分を扇いでみせる。


「いや、服着ろよ。」

「いいじゃん別に、見たってたっちゃんがつけたって分かる訳じゃなし。」

「そーゆー問題じゃねー」


「何?ムラムラしちゃう?」



こいつ!



「あぁー、怒るなよー」


「…元はと言えばお前が悪いんだかんな。」

「ごめんてー」


誰のせいでこんな事やってると思ってんだ!


こいつが、こいつが


お、俺の、俺のクーラーをっ



「まさか風車さしただけで壊れるなんて思わないじゃーん」

「アホか!壊れるに決まってんだろ!!それに、クーラーに風車さすやつがどこにいんだよ!」

「えー、だって回るかもじゃーん。」

「息を吹き掛けて回せ!遊び方間違ってんだよ!」

「あはは、確かにーっ」



そう。
俺のクーラーはこいつのとんでもない遊び心によって壊されたのだ。
そのせいで暑くて家に居られないし、クーラー買い換える金なんてないし、さとしは俺と一緒に住んでるし。


だからこーして短期間で金稼ぎをしてる。




「あー…お前のせいで体の熱上がった。」


「うわー、たっちゃん汗びしょびしょ。脱いじゃえよー」


「……」



はー、なんか疲れた…



上着を脱ぎ捨てて、さとしと同じ格好になる。
汗を含んだ服はどっしりと道路に落ちた。


男二人が仕事ほっぽって、道端に上裸でいるなんて…



何やってんだか





「はい」

「うぉ!つめて!」

突然頬っぺたに感じる冷たさに驚く。


「どうだー、冷たいだろー」


にこっと笑って、さとしはコーラを手渡してきた。
ひんやりとした感覚が、俺の頬をしびらせる。


「へへーん。俺からのお詫びの品でございます。」


「…何が詫びだ。販売機から抜き出しただけのくせに。」


「旦那ー、それ言ったらおしまいですわー。」


「………」


さとしの横に座りなおし、ゆっくりと缶をあけた。



「あまっ!」

「当たり前だろ。」




暑い日射しの中、男二人で上裸のままコーラ。






「たっちゃん」

「あぁ?」


「よい夏休みを☆」

「あほ、死ね」





こんな夏休みも


まぁたまにはいいかもしれない。







end











2007/06/21
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