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 青眼
© 江画珀流 
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 キーワード:高校・部活
 あらすじ:憧れの人
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正直、スポーツや武道に興味は全くなかった。
だけど、カッコイイと思ったんだ。
あの人を。



青眼



「はい。早素振りあと20本追加」

道場に響く深山先輩の少し高めの声。
内心、100本近くやってんだからもういいじゃん。
って思うけど、先輩曰く
『精神鍛えるには先ず身体から。だれてるのは見りゃ分かる。頭の中、真っ白になるまでやれ』
との事。
可愛い顔して言う事は体育会系だ。

「森高、腰が入ってねぇ!!」

素振り中に考え事なんてするもんじゃない。
竹刀で腰を思いっきり打たれた。
早素振りは腰にくるから、二重苦...

「あと、10本だから頑張れ。終わったら休憩だ」
「「はい!!」」

早素振りを終え、10分間の水分補給の為の休憩。
俺は風にあたりながら、足の裏のテーピングの巻き直しと同時進行だ。

「うわぁ、かなり捲れてるな」
「深山先輩!?」

後ろから声をかけられ振り向くと、覗き込むような形で先輩がいた。
端から見ても、俺はきょどっていたと思う。
だって、剣道着だから胸元が!
うっすら上気した桜色の胸元が目の前に!!
只でさえ早かった心音が早鐘のようだ。
この人が、剣道を始めた理由。

「悪い。足の裏平気?」
「足は...かなり痛いです。テーピングも直には無理なんで、ガーゼ使ってますし」

剣道の基本は摺り足。
慣れてない人間は、ベロベロに足の皮が捲れてくる。
コレが本当に痛いのなんの...
下手すりゃ普通に歩く事も儘ならない。

「俺も最初はこうなったんだよ。巻き方も工夫しないと、摺り足やってるうちに剥げてくるしな」

そう言い、俺の手からヒョイとテーピングを取り上げた。

「先輩?」
「足出せ。やってやる」

躊躇しながらも言われた通り、足を出す。
なんか、恥ずかしい。
俺の足に伸びる細い腕。
こんなに細いのに、この人はとても強い。
剣道も、内面的なものも。

思い返せば、俺が先輩に惚れたのは入学当初に行われた、強制部活見学の時だったと思う。

-見学なんてたるい。どうせ帰宅部だし-

なんて、出来たばかりの友達と喋ってたっけ。

んで、文化部から始まり野外運動部、室内運動部、最後に体育館から少し離れた格技棟に。
その頃には多すぎる部活に、すっかりだれていた。

んで、見学を締め括ったのが、剣道部の模擬試合。

一人は180cmはあろう、がっちりした筋肉質で、竹刀を振り上げた状態の上段構え。
もう一方は160cm強くらいで、相手の左目辺りに剣先を構える青眼の構え。

試合開始の号令と共に緊迫した空気が流れ、知らず知らずの内に、誰もが息を飲む。

上段構えはとても威圧的で、背が低い方は不利に見えた。
まるで、子供と大人。
実際に、上段構え相手の試合は怖く、無意識にへっぴり腰になる。
なのに、そうはなっていないあの人は凄い。

当時の俺は、上段構えが勝つと高を括っていた。
強そうだし。
でも、予想は外れ背の低い方が相手を瞬殺。
面が綺麗に2本決まり、あっさり試合終了。

言葉が出なかった。
痺れるってこういう事なんだろう。
そして、防具を全て外した勝者のあまりの可愛らしさに、更に驚愕。
例えるなら、綺麗に面を決められた時みたい。
これが、結構痛いのだ。

その時の勝者が、俺の足にテーピングを巻いてくれている深山先輩、その人。
最初は憧れに近かった気がする。
でも、何時しかそれは恋心へ...

「終わったぞ。この巻き方が俺がやった中で一番剥がれ難いから」
「ありがとうございます」

とりあえず先輩から紛れで良いから、1本とったら告白しようと論見中。
認めて貰う?みたいな。
ま、先輩の引退までには間に合わせてみせるさ。
何事も攻めの姿勢で頑張ります。

「休憩終わり。防具用意しろ」

それまで、先輩に恋人が出来ない事を祈っておこう。



END







2007/08/05
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