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 やさしい手
© 蒼空 
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大学から帰る途中、見慣れない、スーパーの袋をさげた姿の佐藤を発見した

「おー、高橋ハロー」
「ハロー、じゃなくて、なに持ってんの?」
「ああ、これ?」

佐藤は今日大学に来とらん、昨日友達と麻雀やりにいってくるって出てったきりかえってこんかったからだ
俺も呼べよ麻雀
まぁ、家賃節約で一緒に住んでて、毎日顔を合わせる俺なんか呼んだって面白くないのかもしれないけど
俺だって麻雀やりたい

「コバちゃん送ってったらオバサンがくれたんだがん、すんげー大量」
「ネギと白菜?」
「そ、見てこの白菜さん、ばけもんみたいにでかいんだがん、美味そうじゃね?
コバちゃんのじーちゃんが送ってきたんだって、ダンボールぎゅんぎゅんに詰め込んで」
「食いきれるかなー」
「あれ買おうあれ、漬物の元、ぐにぐに揉むやつ、白菜のお漬物」
「お前やれよ?」
「え?高橋やってよ」

コバちゃんってのは佐藤の彼女の名前、ぶっちゃけ俺は本名は知らん、皆コバちゃんって呼ぶから多分『小林』か『小橋』何かだと思ってる
何回か一緒に遊んだ事あるけどちっちゃくてかわいい子だ
友達の延長線で付き合い始めた2人だから佐藤は未だにコバちゃんって呼ぶしコバちゃんも佐藤の事をサト君って呼ぶ
何だよ、麻雀ってコバちゃんも居ったんか、コバちゃん麻雀できんがん、なんで麻雀できんコバちゃん呼んで麻雀できる俺をよばんの

「今日は鍋だー!」
「肉は?」
「…あ」

ネギと白菜だけの鍋で俺等2人どうやって腹膨らますんか教えてくれ
いや、そら量食えば腹くらい膨れるだろうさ、人間そんなもんさ、だけどやっぱ肉だろ肉

「こんなに葉っぱばっか食ったらお肌ツルツルになるがん」
「お肌ツルツルいいがん」
「じゃ俺肉買いに行くけど、お前肉食うなよ?」
「いやんばかん、ごめんなさい俺にもお肉食べさせて」
「鳥?」
「牛?」
「じゃー、間を取って豚で」

ズッ、ズッと佐藤が歩くたびにサンダルを擦る音がする
靴下履いてサンダルって、なにそのコンビニルック
前からよく着てるシャツはちょっとよれてて余計休日のお父さんみたいになっとる佐藤

「お前煩い、サンダル引きずりすぎ」
「サンダルでどーやって足上げて歩くんだよ、サンダル飛んでくわ」

俺と佐藤、身長はあんまかわらんけど、佐藤は猫背だから俺より頭の位置が少し低い
少し前にブリーチしてた佐藤の髪は凄く痛んで可愛そうに見える

「努力しやあ、ズリズリズリズリと、うっさい」
「じゃ、靴かして」
「ヤダ俺今日5本指ソックス履いとるもん」
「うわ、オッサン臭っ!!」
「お前が無理やり押し付けたんだろが!履くもんなかったんだでしょうがないだろ!!」
「高橋が水虫になったらヤだなぁとかいう俺の心!!」
「いらんわ!」

文句を言い続ける佐藤は寒いのかポケットに手をつっこんで余計猫背になる
自分でブリーチして失敗して斑になっとる髪の毛が余計トラ猫みたいに見えて面白い

「も、いーがん、5本指があるのは皆さん同じなんだから、恥ずかしがんなってば
今誰も見てないんだで、靴とサンダルかえてー」
「じゃ次の信号までな?」
「おっけ」

俺が脱いだ靴を佐藤が履いて、佐藤が脱いだサンダルを俺が履いた
そしたら俺のかかとがちょっとだけサンダルからはみ出してた

「…佐藤、これさ」
「ゴメン何も言うな」

今度は佐藤が歩くたびにカポカポと音がする
馬鹿の大足、間抜けの小足、俺は馬鹿で佐藤は間抜けって事か

「どっちみち煩いわ」
「お前が足でかいんだわ」

カポカポ言わせながら歩く佐藤はどっかやっぱ可愛くて

「なあ、高橋」
「ん?」
「足デカイヤツって心広いんだって、お前いい奴だしな」

ニコッと笑って、また俺のコンバースをカッポカッポ言わせながら歩いてく後姿はどこかちょっと滑稽で
俺はその場で立ち止まって自分の足を見る
俺にはちょっとだけちっさい佐藤のサンダル、足のデカイ奴が心広い?
そんなん嘘じゃん、だってお前いい奴だがん

「佐藤」
「ん?」

俺は小走りで佐藤の隣までもどると、ポケットから手を引っ張り出してそれを握る

「手の温かい奴って心温かいいい奴なんだって」

そしたら佐藤の顔がボッと赤くなった

「餓鬼体温とか言いたいのか…?」
「そんな事言ってないがん、お前もいい奴って言いたかっただけ」

俺が笑ってやると、ちょっと眉間がひくっとした
だけどまだ、いや、寒いせいかも知れんのだけどさ、顔の赤いまんまの佐藤がやっぱり可愛くて思わずニヤニヤしとったら、サンダルすっぽぬけて飛んでったんだけど
離せって、いつ怒鳴るかなーって軽い気持ちで手握ったまんま歩いとったら結局靴とサンダルを元に戻す信号んトコまで手つないだまま歩いてた

「な、なぁ、高橋」
「ん?」
「お前手冷たいから、次の信号までもちょっと、手、つないでかん?
誰も見とらんし、いいがん?」

今度は俺が赤くなる番。

友達なのに、どんどん好きになってっちゃって
もうどうしたらいいか分からんのだけど、佐藤が思わせぶりなことするから悪いんであって
コバちゃんごめん、貴方の彼氏はたったいまコバちゃんじゃない人と手をつないで歩いています
おもいきり、ぎゅっと佐藤の温かい手を握り締めた








2007/08/05
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