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金色の世界
R指定:---
キーワード:双子 ほのぼの 秋
あらすじ:秋の夕暮れ、帰路の途中の小さな幸せ。
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【金色の世界】
黄昏迫る帰り道。低くなった太陽が、少し先を歩く美隼の影を長く伸ばす。
「なぁ、美隼ぁ。どこ行くんだよ?」
家に帰るはずの俺と美隼。なのに美隼は家とは違う方向へと歩いてく。
「いいから、来いって」
そう言って、美隼はずんずん歩いてく。馴染みのないその道は、何だか違う世界に繋がっているような錯覚を起こさせる。
……ホント、どこ行く気だよ?
前を行く美隼の先では一日の役目を終えた太陽が、最後の光を辺りに振りまいている。
金色の世界。
空も、木も、家も、道も。街の全てが金一色。
金色の光に向かって歩く美隼を追いながら、ふと、甘い香りに気がついた。
「…キンモクセイ?」
俺がそう呟くと、美隼は歩みを止めた。
金色の世界で振り向く美隼。その姿はこの世の者とは思えないくらいに美しく、幻想的で、俺は思わず息を呑んだ。
金色の世界に、美隼と俺と…金木犀。
ふいに美隼が笑顔を見せた。
「ほら、すごいだろ?」
そう言って、美隼が指差した先。そこには金木犀の大樹があった。堂々とそびえ立っているその木には、可愛らしい金色の小さな花が咲き誇っている。
「…金木犀って…こんなに大きく育つんだ」
俺の知ってる金木犀は庭先に植えてあるような小さなものだけ。こんなに大きな木になるなんて、俺は全然知らなかった。
「驚いた?」
美隼がクリクリの目で俺を見つめる。俺が素直に頷くと、美隼は心底嬉しそうな笑みを浮かべた。
「貴隼にも見せたかったんだ、コレ」
照れくさそうにそう言って、くるりと俺に背を向けた。きっと今、美隼の可愛いほっぺたは、淡いバラ色に染まってるに違いない。
…こんなの、反則だ。
俺の頬が熱を帯びていく。
そうやって可愛く照れちゃう仕草とか。
美隼が感じた『素敵なコト』を、俺にも教えたいって思ってくれる気持ちとか…。
その全てが狂おしいほど愛しいよ。
込み上げてくる愛しさに、頭クラクラ、心はメロメロ。ヤバイです。ここが家の近所の路上でなければ、今すぐ美隼を抱きしめたいとか思ってます。
「…なぁ、みぃちゃん」
背を向けている美隼を呼ぶと、美隼は顔だけ少しこちらに向けた。
「……なんだよ? 貴隼」
ぶっきらぼうにそう言う美隼。照れ隠しなのが丸見えで、これまた非常に愛らしい。
そんな美隼に俺は最上級の笑顔を向ける。心の底から湧き上がる愛しさも、喜びも、全部笑顔に詰め込んで。
それから、
気持ちを込めて言葉を紡ぐ。
伝えたい気持ちは山ほどあるけど、今はこの一言に想いを託す。
大好きな美隼にこの胸いっぱいの愛を込めて
「ありがとう」
金色に輝く世界の中で、
美隼の頬が真っ赤に染まった。
Fin...
2007/09/16
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