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 Perfume
© 緋ノ月 
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 R指定:無し
 キーワード:同級生/放課後の美術室/香水/キス
 あらすじ:……寂しいのはスケッチブックだけじゃない。
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放課後の美術室での密会が、最近では習慣になっている。
密会といっても、俺があいつの絵をせっせと描きためているだけなのだけど。

でも、陽の落ちる時間が早まってきた今の季節、なかなかそうはいかなくなってきた。
電気を点けようものなら、先生が目ざとく見つけて見回りにやってきては、早く帰れと小うるさい。

だけど、実はそんなことはさして問題ではなかった。
俺にとって最も問題なのは、目の前のこいつ。
コタカカケルがいつまで経っても美術室のニオイに慣れないこと。

椅子に座って漫画を読んでいるこいつは、あろうことかマスク着用なのだ。
俺のスケッチブックも、マスクマンだらけで寂しいことこの上ない。

「マスクとれよ」
「やだ。鼻曲がる」
「顔描けないじゃん」
「記憶で描けないの?メガネ君の愛ってそんなもの?」
「……………」

描けなくはない。
というか、目の前にいなくても描ける。
でも、問題はそうじゃない。

……寂しいのはスケッチブックだけじゃない。

「お前、香水とか好き?」
「ん?キライじゃないよ」

漫画から俺に視線を移したカケルを、手招きする。

「なになに?」

好奇心旺盛。素直。
カケルは目を輝かせてすぐに俺のところへやってきた。
俺は白衣のポケットから、小さいなりに意匠の凝らされた瓶を取り出す。

「こんな香りはどうだ」

蓋を取ってカケルの反応を見た。
俺は椅子に座ったままなので、カケルは身をかがめマスクを顎にずらして小瓶に顔を近づける。

「ふーん、結構いいかお――」

ちゅ。

「……!」
「だからマスク邪魔なの」
「ふ、不意打ちなんてずるい!」

真っ赤になって後退さろうとするカケルの首根っこをつかまえて、香水の小瓶をカケルの目の前に差し出した。

「これあげるから許して」
「モノで釣る気かよ……」

そんなつもりはないんだけど。

「ちょっと気の早いクリスマスプレゼント」
「気が早すぎなんじゃないの」

そうだな。
まだ二週間先だし。

「……でもありがとう」

そう言って、カケルは小瓶を受け取りながら俺にキスをした。

まずはマスク剥がし作戦成功、といっていいだろうか。
ただし俺も顔が赤くなっているはずだから、格好はついてない。

だろうな。



END







2007/01/18
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