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 タバコ
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「あ、ネイト」
タバコ、と指摘されて、俺はぐっとつまった。
「止めるんじゃなかったっけ」
「…これが最後の一本だから、いいんだよ」
「禁煙失敗者の常套句だな。止められないに20ドル」
「30ドル」
「俺は50」
「誰か止めるほうに賭けろよ、賭けにならないだろ」
「マット」
ぎろり、と睨んだら、大げさに両手を上げてから静かになった。
「さて、タバコでも買いに行くか」
「あ、俺も」
「…お前ら、俺への嫌がらせか?」
ジョニーとアヴェイロが出て行って、部屋にはマットと俺だけが取り残された。急に人のいなくなった部屋の中はがらんとして見えて、タバコの煙だけが周りに漂う。俺は最後のお楽しみとばかりに、煙を深々と吸い込んでは吐き出した。
「…タバコ、本当に止めんの?」
「止めるよ、喉にも悪いし」
「その割には意思が弱いな」
「口寂しいんだよ」
「へぇ」
俺は驚いて声が出せなかった。実際俺の口はマットの口にふさがれていて、音という音は出せなかったわけだが。
最初は唇をついばむだけだったキスが、次第に深くなってゆく。マットの舌が俺の舌に触れる、そのぬるりとした感触に息を呑んだ。俺の下肢には徐々に熱が集まってゆく。これは非常にまずい。否、いい。いいんだけどまずい。
そうこうしているうちにタバコの火が指まで届いて、俺は情けない悲鳴を上げた。
「うわ、あっつ!!」
俺から身を離したマットは、熱がる俺を見てクツクツと笑っている。
「なにすんだお前!」
ムキになって怒ったら、ぽんぽんと頭を叩かれた。
「まぁ、口寂しくなったら言ってくれよ。協力するぜ?」
−俺の禁煙は成功するに違いない。

おわり







2009/02/18
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